あちらはこちら
あちらはこちら。
こちらはあちら。
あなたはわたし。
わたしはあなた。
溶け合いながら、揺らぎながら、形を変えてゆきながら。
生まれたことの意味を知る。
だからもっと上品な冗談をくださいな。
ナイフで裂いていく。
あまねく沁みて揮発していく。
何もないを残して。
わかった。
降伏。
リーエンバルドは敗戦した。
海に漏れ出た重油のような雨雲から、紅椿に大きな雫が落ちて、ぽたりと斬首した、それが最後だった。
積み上げたもの、折り重ねたもの、織り込んだもの、練り混ぜたもの。
施した意図を、工夫を、時間を、想いを、彼らは奪っていった。
ぼくらの子供たちは花のない世界を生きる。
ぼくらの子供たちは花のない世界を生きる。
誰か教えて。
手にしていくのに最適なもの。
気になるあの子に好きだと言うとき。
丸腰なんて無茶な話。
彼女はおきゃんな女の子。
甲斐性なしって平手打ちさ。
そうしてミタセコイガの幼虫は青い体液をぶち撒けて果てた。
飛べないから無数の足で地を這う。
会えないから無数の文で字を吐く。
征け、征け、征け、征け、征け。
脆弱が造る堅固な行き止まりを前にして怯むことなく、必ずって口にしたのを一歩踏み出すたび無かったことにして、無抵抗な粘土に歯形をつけたところでいつか消えてしまうのに、崩れた対称性を取り繕うための人生と今も付き合い続けて、捨てられた仔猫の無力さだけで、真っ白なあなたを救えると本気で信じていたんだ。
ありえない色の空をいつか見せよう。
二人乗りの脱出ポッドの中から。
やがて辿り着く。
どこでもない、どこでもある、どこか。
いつでもない、いつでもある、いつか。
わたしでない、わたしである、だれか。
正しさは弱さ。
弱さは正しさ。
罪の重さだけが羅針。
さあ、踊ろう。
どれだけ腕が捩れても。
触れ合うことは原始の罪。
正しさの計れない世界で。
わたしがあなたを見失うことはない。
わたしがあなたを見紛うことはない。
わたしがあなたを見逃すことはない。
今も覚えている。
熱を帯びている。
溶け合いながら、揺らぎながら、形を変えてゆきながら。
生まれたことの意味を知る。




