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たくさんの顔
たくさんの顔々。知ったの。知らないの。覚えなくちゃいけないの。忘れてもいいの。
たくさんの声々。気安いの。遠慮ないの。ずかずか入ってくるの。やめてほしいの。
たくさんの手々。触れるの。触れないの。触らないでほしいの。触りたくないの。
機械になってやり過ごしても声のうまく出てこなくて目を合ってしまったときに頭の後ろの扉が開けられないように注意して慎重に微笑み大丈夫この距離はいつでも逃げ出せるから。
上が上に、下は左に、左は右に、右は上に、だから転んだ、でも浮けなくて、悲しくなる。
置き換えられない、写し取れない、見たことのない拡張子、きっと中身は白い綿。
それじゃないどれは、それとこれとあれしていて、これのほうがずっとそれらしい。
逆撫でして、裏を読んで、表面をなぞって、いつも殻だと気付かれない。
入口を作らなかったから出口がない。怖いから窓も埋めた。残るは星空、空気孔。
まるで誰もいないみたい。何も無いみたい。本当に何も。
無重力、それは、永遠の落下。




