砂浜に、打ち寄せた棒っきれで、まっすぐ引いた
砂浜に、打ち寄せた棒っきれで、まっすぐ引いた。
明日、その線を、越えていくとして。
今から言うのは、そんなこと。
ああ、突然だけれど。
君は覚えているだろうか?
僕たちがまだ月の裏側で楽しくやっていた頃のことを。
何も考えなくてよかった。
何も憚ることはなかった。
だって誰にも見られていないんだから。
大好きだった。
遊び終わった七並べみたいに何もかも揃っていた。
とても嬉しい場所で、時間だったのさ、だって、その二つは切り離すことができないから。
それから、僕たちは、ちょっとばかし重力の強い、そしてとんでもなく他人が多い、薄汚れた、あるいは小綺麗な、ばかみたいに広い場所に立ったんだ。
広かった。見渡すほどに。
だからかな、時間の流れは驚くほど早くて。
僕たちは数え切れないほどの脱皮と冬眠を繰り返した。
そうして大きくなって気付いた。
空の青さ、つまり、ここには空気がたくさんあるってこと。
あの頃みたいに、二人で貴重な酸素をやり取りしなくたって、生きていける。
四六時中口付けをしなくても。
手を繋いでいなくても。
離れていても。
大丈夫。
でも。
それは、やっぱり、思ったんだけど、まるっきり、嘘なんだよ。
嘘なんだ。
無理なんだ。
大丈夫なんかじゃないよ。
少なくとも、僕は。
全然、大丈夫なんかじゃ、ないって、でも、そんなこと、君に言えるわけないじゃないか。
ああ。
そう。
一つ。
わざと言い忘れてたことがあった。
なんでかって、本当のとこ、これっぽっちも、ほんの砂粒ほども、思ってないから。
でも。
砂浜に、打ち寄せた棒っきれで、まっすぐ引いた。
明日、その線を、越えていくとして。
そんなことを、今から言う。
「ありがとう」




