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突き立てろ五線譜
突き立てろ五線譜。薔薇に抜け殻。人肌のミルクティー。
憂えた横顔。外された腕時計。濃密な針のリズム。
無口なあなたの舌が這う。濁った瞳。ゆらぐキャンドル。
声を押し殺して、吐息。いつかのリストカットのよう。
冷たい首筋を撫ぜて、鼓動。このチョコレートは苦く甘い。
小さな星を飾りつけて、肺を押し上げて、瞼の裏を光で満たして、
少しずつ少しずつ絡み合う溶け合う混ざり合うだって時間はいくらでもあるから。
わからないことはわからないままでいい。お喋りな月も見惚れる夜。
従いたくて、従わせたくて、従わなくて、従わせられない。旋律は気紛れ。
また拒否反応。どうして私たちはどんな時も悲しいことを思い出せるの?
好きにしていいのに。欲しいだけあげるのに。どんな咎でも赦せるのに。
気づくとあなたは真冬の星座。凍てついて、果てなくて、触れられない。
そして絹糸はなんの重みも痛みもなく私の身動きを封じてしまう。
睦言はスタッカート。水溜りのように飛びはねて、明日の夜にはどこにもない。




