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「痛むの?」

「痛むの?」


 サリガはまた聞いた。素っ気ないけど、ぼくのことを心配しているのがあなたでもわかる。


「大丈夫、平気」


 強がるぼく。サリガは強がるぼくの強がりに気付いたけれど、何も言わずに頷いた。


 あなたはここで初めて世界を見る。ここはやいばやいばなんだ。やいばもり


 ぼくはできるだけやいばのことを無視しようとする。でもサリガは気になるみたい。あなたはわからない。


 白銀色しろがねいろは青く、赤い。やいばに霜が降りている。冷たいのだ。少なくともぼくたちよりは。


 サリガは痛みを感じない。サリガに実体はない。あるのは名前と約束だけ。本来、サリガとはもっと無口なサリガなのだ。


 でもサリガはよく喋る。


「やっと半分」


「もう半分」


「あと半分」


「まだ半分」


 ぼくとサリガはお互いの顔を見て(顔なんてないのに)、笑い合う。


 それは必要なこと。あなたより、ずっと。


 そしてサリガは消えてしまう。


 ぼくの目の前から、頭の中から、どこでもないところへ。


 あなたはそうやって生まれた。


「痛むの?」


 サリガはまた聞いた。あなたは知らない。ぼくはやいばを踏みしめる。


「全然、平気」


 ここでは痛みは痛みじゃない。空気みたいに目に見えないし、手に取れない。ただ吸い込んで、吐き出して、その過程で生じる痛みでサリガが聞こえるのだ。だから痛まない。痛むこともない。


 サリガはぼくだ。そしてサリガはあなたでもある。もちろんサリガはサリガであって、サリガ以外の何者でもない。


 もっとも、サリガは痛みを感じないから、痛みなのだけれど。


「ねえ、サリガ」


「どうしたの?」


「痛むの?」


 サリガはまた聞いた。素っ気ないけど、あなたのことを心配しているのがぼくでもわかる。


「痛むよ」


 ぼくは言った。サリガは言った。そしてあなたはどこでもないところへ消えてしまう。


「まだ半分」


「やっと半分」


「もう半分」


「あと半分」


 あなたは笑った。


 サリガのやいばは赤かった。


 ぼくはそうやって生まれた。

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