「痛むの?」
「痛むの?」
サリガはまた聞いた。素っ気ないけど、ぼくのことを心配しているのがあなたでもわかる。
「大丈夫、平気」
強がるぼく。サリガは強がるぼくの強がりに気付いたけれど、何も言わずに頷いた。
あなたはここで初めて世界を見る。ここは刃。刃なんだ。刃の森。
ぼくはできるだけ刃のことを無視しようとする。でもサリガは気になるみたい。あなたはわからない。
白銀色は青く、赤い。刃に霜が降りている。冷たいのだ。少なくともぼくたちよりは。
サリガは痛みを感じない。サリガに実体はない。あるのは名前と約束だけ。本来、サリガとはもっと無口なサリガなのだ。
でもサリガはよく喋る。
「やっと半分」
「もう半分」
「あと半分」
「まだ半分」
ぼくとサリガはお互いの顔を見て(顔なんてないのに)、笑い合う。
それは必要なこと。あなたより、ずっと。
そしてサリガは消えてしまう。
ぼくの目の前から、頭の中から、どこでもないところへ。
あなたはそうやって生まれた。
「痛むの?」
サリガはまた聞いた。あなたは知らない。ぼくは刃を踏みしめる。
「全然、平気」
ここでは痛みは痛みじゃない。空気みたいに目に見えないし、手に取れない。ただ吸い込んで、吐き出して、その過程で生じる痛みでサリガが聞こえるのだ。だから痛まない。痛むこともない。
サリガはぼくだ。そしてサリガはあなたでもある。もちろんサリガはサリガであって、サリガ以外の何者でもない。
もっとも、サリガは痛みを感じないから、痛みなのだけれど。
「ねえ、サリガ」
「どうしたの?」
「痛むの?」
サリガはまた聞いた。素っ気ないけど、あなたのことを心配しているのがぼくでもわかる。
「痛むよ」
ぼくは言った。サリガは言った。そしてあなたはどこでもないところへ消えてしまう。
「まだ半分」
「やっと半分」
「もう半分」
「あと半分」
あなたは笑った。
サリガの刃は赤かった。
ぼくはそうやって生まれた。




