表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/50

「生け贄に?」

「生け贄に? 私が?」


 何を見ているのだろう、と思う。静かになると、まつぐさの香りがした。


 あなたはさっきから何度も首を回す。ぐるぐるルぐる。やめて。じ切れそう。腸詰めみたいに。


 こんなときでも汗一滴流れないのは、蝋人形だからだ。


「そうやって何回も言ってきたんだな、君は」


 蛇たちが落ちてくる。鱗を奪われた蛇たち。奪ったのは雨雲。不吉の兆候。


 聞かないふりをする。できるわけがないのに。


 どうしたって彼女はもう降りられないところにいるのに。


 こんなことならちゃんと伝えておけばよかった。クローバーは三つ葉でもいい。扉はひらかれなくてもいい。砂は真っ白でなくてもいい。


 けれど、もう、届かない。


 なら、せめて比喩を探そう。この上なく適切な比喩を。それは明日のように遠くて、すぐそばにある。


に続く階段の三段目の、石の補修はもう終わったのかしら。いざというとき、あんなところでつまずいていられない。もちろんあなたはどんなときでもつまずいていられないのでしょうけれど。つまり、一般的な話よ」


 振り返ると、何もない。空白。


 あなたたちは硝石しょうせきを重ね過ぎた。あなたたちは有限なんて目には見えないと思っている。とてもんでいるのだ。


 でも、それは、灯火ともしび


 降りられない。降りられない。どうしてそれがわからないのだ。


「涙が出ない。違うな。あった〝こと〟もない。わかるかね、梨を選ぶお嬢さん(リクゴ・ヌ・マルツァ)?」


吐き気がするわ(スプゥーグ・イジ・オ)鉄屑に頬擦り(ア・ム・ツァ・)してなさい(ル・フォッテ)


「もっと上品な言葉遣いをしたほうがいい、遺女(ミ・ル・ゾレ)


灰の次に(ルートゥン・フ・)甘い蜜は(クィーセ・マグ・)いかが(レグーシェ)?」


よろしい(セ・ラッテ)


 が回る。塔が傾いて、大地が沼と化す。


「時間だ」


 瞬きをする。どうしてか。長く見つめることは侵されることだから。鎖のように断ち切らねばならない。


「希望はある」


「こんなときに暗唱(ハー・シ)……?」


「まだ証明はされていないけれど」


 世界の口癖くちぐせ


 そうやって全てを未知のせいにして、あなたたちは目を背けてきた。


 私はただそれが嫌いだった。


 無いのだ。海の藻屑もくずのように。立ちのぼる煙のように。いた血のように。


「ああ、すず


 少しずつ、


なんじはなぜ待たないのか?」


 しかし着実に、


なんじはなぜ知らないのか?」


 歯車は回っていく。


「罪なら我が背中に」


 さよなら(ハー・シ)


 でも、またすぐに会うことになるわ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ