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おお、勇者よ

作者: kouto
掲載日:2014/10/13

「あー、ぼーる」

「危ない!」

「やべぇ! 轢いちまった!」

「あーん!」

「大丈夫か坊主! あんた! しっかりしろ!」

「…………」



「おお、勇者よ死んでしまうとは情けない」

「え!? ここは!?」

「さあ、行け勇者よ! 魔王を倒すのだ! そして姫を助けてくれ!」

「え? 勇者? 俺? 勇者?」

「兵士よ、勇者を城の外まで案内するのだ」

「はっ!」

「え? ちょっと待って! 訳が分からないー!」


「勇者様、世界をお願いします!」

「ちょっと待て、俺素手なんだけど? 何も装備してないんだけど!?」

「お願いします!」

「助けてください! この子の将来のためにも!」

「お願いします! 平和な世の中を!」

「くそっ! 行けばいいんだろ! 行けば!」

「うおー! さすが勇者だぜー!」

「「「勇者! 勇者! 勇者! 勇者!」」」


「うおー! スライムごとき素手で十分だ!」

「な、スライムの体がまとわりついて」

「うわー!」


「おお、勇者よ死んでしまうとは情けない」

「は! なんだ!?」

「さあ、行け勇者よ! 魔王を倒すのだ! そして姫を助けてくれ!」

「勇者? 俺が?」

「兵士よ、勇者を城の外まで案内するのだ」

「はっ!」


「スライムなんぞ素手で十分」

「ふんっ! たわいもない」


「ようよう、お前勇者だってなぁ、金だせや!」

「勇者がきさまらごろつきの集まりに屈するか!」

「ならば死ねー!」

「ぐふっ、素手ではナイフに勝てぬか、無念」


「おお、勇者よ死んでしまうとは情けない」

「む!?」

「さあ、行け勇者よ! 魔王を倒すのだ! そして姫を助けてくれ!」

「む?」

「兵士よ、勇者を城の外まで案内するのだ」

「はっ!」


「ははー、また勇者様のお通りだぜ!」

「む!!」

「がはっ! 悪かった! 俺たちが悪かった!」


「くくく、勇者よ。このドラゴンに勝てると思うてか?」

「む?!」

「ふはは、この鱗にそのような攻撃なぞ通じまい」

「わが火炎のブレスで燃え尽きるがいい!」

「むううううううううう」


「おお、勇者よ死んでしまうとは情けない」

「おうおうおう、なんだぁこれはよぅ!」

「さあ、行け勇者よ! 魔王を倒すのだ! そして姫を助けてくれ!」

「姫だぁ! かわいいんだろうなぁ!」

「兵士よ、勇者を城の外まで案内するのだ」

「はっ!」


「また来るとは愚かな」

「うぜぇぞトカゲが!」

「ばかな! われの鱗が! 鉄壁の防御が!」


「ふっふっふっ、よくぞ来た勇者よ」

「姫ってのはどこだ? あぁん!」

「姫と世界の半分を貴様にやるから我の軍門に下れ!」

「へっ! よく分かってんじゃねぇか」

「ふはは、だまされおって馬鹿め!」

「くそがぁ! ふざけやがって!」


「おお、勇者よ死んでしまうとは情けない」

「ふむ? ここはどこでしょうか?」

「さあ、行け勇者よ! 魔王を倒すのだ! そして姫を助けてくれ!」

「……状況は把握しました」

「兵士よ、勇者を城の外まで案内するのだ」

「はっ!」


「ふっふっふっ、よくぞ来た勇者よ」

「いやはや、下種な笑いですね」

「姫と世界の半分を貴様にやるから我の軍門に下れ!」

「ふっ、その程度とは乏しいですね」

「我は、我は魔王ぞ、このような、馬鹿な」

「愚かな魔王でした」


「にいちゃんかっけー!」

「おや、姫はいないのですか?」

「おいらがひめだよ」

「失礼ですが男では?」

「ああ、とうちゃん、おんなのほうがやるきでるとおもったんだろ?」

「なるほど、では帰りますか」

「ありがとなゆうしゃ!」


「ただいま、戻りました王様」

「おお、姫は? 姫はいずこへ?」

「こちらの少年で……」

「くくく、ばかなゆうしゃよ、ここまであんないごくろーであった」

「少年!?」

「われはだいまおう! きさまらのきぼーだったゆうしゃはうらぎったのだ!」

「なんと! 兵士よ! 勇者を殺すのだ!」

「お待ちなさい! 私は無実です!」

「裏切り者ー!」

「そんな、このような策に……」



「王様」

「大臣か」

「勇者を蘇生させるのです。そして大魔王を討ち、姫を取り戻しましょう!」

「しかし、勇者は裏切ったのだぞ!」

「王様、蘇生のたびに勇者の体、精神は変わります。ご存知でしょう?」

「確かにそのとおりだが、たまには民から集ってもよいのでは?」

「王様! 前にも述べたでしょう! 民の信頼を裏切ってはこちらの破滅のみですぞ!」

「むうう、確かに」

「ああ、民は怖い……」


「おお、勇者よ死んでしまうとは情けない」

「え? 俺勇者っすか?」

「さあ、行け勇者よ! 大魔王を倒すのだ! そして姫を助けてくれ!」

「じゃあ、さくっと行きますか」

「兵士よ、勇者を城の外まで案内するのだ」

「はっ!」


「お、にいちゃ……、じゃなかったゆうしゃよ、このだいまおうにかてると?」

「ガキに負けるかよ」

「あ、そんな、ごめんひめ」

「じゃあ姫救出いきますか」


「ああ、勇者様」

「姫、助けに……ぐふっ」

「もう! お父様ったら! せっかく逃避行して私の旦那様を見つけたのに!

 ここまで追いかけてきて! 大臣もなによ! 協力しないと殺すっていったのに!

 はぁ……、また新しい旦那様を探すしかないか」


「おお、勇者よ死んでしまうとは情けない」

「え? おいら?」

「さあ、行け勇者よ! 超魔王を倒すのだ! そして姫を助けてくれ!」

「ちょうまおうこわいよー!」

「兵士よ、勇者を城の外まで案内するのだ」

「よ、よろしいのですか?」

「ならばお前達が……」

「案内いたします!」


「幼き勇者よ、この超魔王に勝てると思っているのか」

「ひ、ひめをはなせよぅ」

「勇者様! この私の力をお使いください!」

「ありがとう、ひめ!」

「ぐわああ……!」


「ああ、勇者様」

「ひめ、ありがとう!」

「勇者様、私と一緒に静かに暮らしましょう」

「でも、おしろにもどらないと……」

「駄目です! 戻ったら私達離れ離れに……」

「ひめ、わかったよ!」


「ひめ、なげるよ!」

「はい、勇者様、それ!」

「あー、ぼーる」

「危ない!」

「やべぇ! 轢いちまった!」

「あーん!」

「大丈夫か坊主! あんた! しっかりしろ!」

「…………」

「うぅ、また蘇生なの?」


「おお、勇者《魔王》よ死んでしまうとは情けない」


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