おお、勇者よ
「あー、ぼーる」
「危ない!」
「やべぇ! 轢いちまった!」
「あーん!」
「大丈夫か坊主! あんた! しっかりしろ!」
「…………」
「おお、勇者よ死んでしまうとは情けない」
「え!? ここは!?」
「さあ、行け勇者よ! 魔王を倒すのだ! そして姫を助けてくれ!」
「え? 勇者? 俺? 勇者?」
「兵士よ、勇者を城の外まで案内するのだ」
「はっ!」
「え? ちょっと待って! 訳が分からないー!」
「勇者様、世界をお願いします!」
「ちょっと待て、俺素手なんだけど? 何も装備してないんだけど!?」
「お願いします!」
「助けてください! この子の将来のためにも!」
「お願いします! 平和な世の中を!」
「くそっ! 行けばいいんだろ! 行けば!」
「うおー! さすが勇者だぜー!」
「「「勇者! 勇者! 勇者! 勇者!」」」
「うおー! スライムごとき素手で十分だ!」
「な、スライムの体がまとわりついて」
「うわー!」
「おお、勇者よ死んでしまうとは情けない」
「は! なんだ!?」
「さあ、行け勇者よ! 魔王を倒すのだ! そして姫を助けてくれ!」
「勇者? 俺が?」
「兵士よ、勇者を城の外まで案内するのだ」
「はっ!」
「スライムなんぞ素手で十分」
「ふんっ! たわいもない」
「ようよう、お前勇者だってなぁ、金だせや!」
「勇者がきさまらごろつきの集まりに屈するか!」
「ならば死ねー!」
「ぐふっ、素手ではナイフに勝てぬか、無念」
「おお、勇者よ死んでしまうとは情けない」
「む!?」
「さあ、行け勇者よ! 魔王を倒すのだ! そして姫を助けてくれ!」
「む?」
「兵士よ、勇者を城の外まで案内するのだ」
「はっ!」
「ははー、また勇者様のお通りだぜ!」
「む!!」
「がはっ! 悪かった! 俺たちが悪かった!」
「くくく、勇者よ。このドラゴンに勝てると思うてか?」
「む?!」
「ふはは、この鱗にそのような攻撃なぞ通じまい」
「わが火炎のブレスで燃え尽きるがいい!」
「むううううううううう」
「おお、勇者よ死んでしまうとは情けない」
「おうおうおう、なんだぁこれはよぅ!」
「さあ、行け勇者よ! 魔王を倒すのだ! そして姫を助けてくれ!」
「姫だぁ! かわいいんだろうなぁ!」
「兵士よ、勇者を城の外まで案内するのだ」
「はっ!」
「また来るとは愚かな」
「うぜぇぞトカゲが!」
「ばかな! われの鱗が! 鉄壁の防御が!」
「ふっふっふっ、よくぞ来た勇者よ」
「姫ってのはどこだ? あぁん!」
「姫と世界の半分を貴様にやるから我の軍門に下れ!」
「へっ! よく分かってんじゃねぇか」
「ふはは、だまされおって馬鹿め!」
「くそがぁ! ふざけやがって!」
「おお、勇者よ死んでしまうとは情けない」
「ふむ? ここはどこでしょうか?」
「さあ、行け勇者よ! 魔王を倒すのだ! そして姫を助けてくれ!」
「……状況は把握しました」
「兵士よ、勇者を城の外まで案内するのだ」
「はっ!」
「ふっふっふっ、よくぞ来た勇者よ」
「いやはや、下種な笑いですね」
「姫と世界の半分を貴様にやるから我の軍門に下れ!」
「ふっ、その程度とは乏しいですね」
「我は、我は魔王ぞ、このような、馬鹿な」
「愚かな魔王でした」
「にいちゃんかっけー!」
「おや、姫はいないのですか?」
「おいらがひめだよ」
「失礼ですが男では?」
「ああ、とうちゃん、おんなのほうがやるきでるとおもったんだろ?」
「なるほど、では帰りますか」
「ありがとなゆうしゃ!」
「ただいま、戻りました王様」
「おお、姫は? 姫はいずこへ?」
「こちらの少年で……」
「くくく、ばかなゆうしゃよ、ここまであんないごくろーであった」
「少年!?」
「われはだいまおう! きさまらのきぼーだったゆうしゃはうらぎったのだ!」
「なんと! 兵士よ! 勇者を殺すのだ!」
「お待ちなさい! 私は無実です!」
「裏切り者ー!」
「そんな、このような策に……」
「王様」
「大臣か」
「勇者を蘇生させるのです。そして大魔王を討ち、姫を取り戻しましょう!」
「しかし、勇者は裏切ったのだぞ!」
「王様、蘇生のたびに勇者の体、精神は変わります。ご存知でしょう?」
「確かにそのとおりだが、たまには民から集ってもよいのでは?」
「王様! 前にも述べたでしょう! 民の信頼を裏切ってはこちらの破滅のみですぞ!」
「むうう、確かに」
「ああ、民は怖い……」
「おお、勇者よ死んでしまうとは情けない」
「え? 俺勇者っすか?」
「さあ、行け勇者よ! 大魔王を倒すのだ! そして姫を助けてくれ!」
「じゃあ、さくっと行きますか」
「兵士よ、勇者を城の外まで案内するのだ」
「はっ!」
「お、にいちゃ……、じゃなかったゆうしゃよ、このだいまおうにかてると?」
「ガキに負けるかよ」
「あ、そんな、ごめんひめ」
「じゃあ姫救出いきますか」
「ああ、勇者様」
「姫、助けに……ぐふっ」
「もう! お父様ったら! せっかく逃避行して私の旦那様を見つけたのに!
ここまで追いかけてきて! 大臣もなによ! 協力しないと殺すっていったのに!
はぁ……、また新しい旦那様を探すしかないか」
「おお、勇者よ死んでしまうとは情けない」
「え? おいら?」
「さあ、行け勇者よ! 超魔王を倒すのだ! そして姫を助けてくれ!」
「ちょうまおうこわいよー!」
「兵士よ、勇者を城の外まで案内するのだ」
「よ、よろしいのですか?」
「ならばお前達が……」
「案内いたします!」
「幼き勇者よ、この超魔王に勝てると思っているのか」
「ひ、ひめをはなせよぅ」
「勇者様! この私の力をお使いください!」
「ありがとう、ひめ!」
「ぐわああ……!」
「ああ、勇者様」
「ひめ、ありがとう!」
「勇者様、私と一緒に静かに暮らしましょう」
「でも、おしろにもどらないと……」
「駄目です! 戻ったら私達離れ離れに……」
「ひめ、わかったよ!」
「ひめ、なげるよ!」
「はい、勇者様、それ!」
「あー、ぼーる」
「危ない!」
「やべぇ! 轢いちまった!」
「あーん!」
「大丈夫か坊主! あんた! しっかりしろ!」
「…………」
「うぅ、また蘇生なの?」
「おお、勇者《魔王》よ死んでしまうとは情けない」




