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査問とサモン。
俺の状態はまさにそれであった。査問会議・サモン会議。
[呼び出されての尋問]、言葉の意味合いとしては的を得ているのである。
あの咬ませ犬との交戦の後、歪な環境は消え、元の環境を取り戻した。
そして、入学式も無事に終了し済んだのであった。それでもってめでたしめでたし・・・とは、そうは問屋は卸さなかった。
具体的には入学式終了後、生徒会役員全員生徒会室に呼び出されて俺の尋問が始まった。
どのようなことが聞かれたかは勿論俺の能力の事である。
「どのような能力なのか」、「そんな能力持っているのに何故シフト4なのか」という事を今、聞かれているのであった。
「ねぇ、無月君。お姉さんに聞かせてほしいな、あなたの能力」
と、会長さんは語尾にハートマークが付きそうなほど甘えた感じで聞いてくる。
俺はと言うと
「ええっと・・・」
と、ただ口ごもっていた。
しかし、あまり能力の云々については、語りたくなかった。
理由は俺はシフト4だからだ。下手に俺が能力持ちということがばれて周囲の目というものが嫌だからだ。前までは、一切気にしなかったことが気になるという、どうやら俺は知らず知らずの内に臆病者に成り下がったらしい。
でも、だ。ここでこのまま口ごもっていても仕方がないし、臆病に「嫌々」と我儘も言えないという事は分かっていた。だから俺は打開策を講じた。
「・・・ふぅ・・・。・・・分かりました、言います。でもこのことは外部に漏らさないでくださいね」
まぁ、漏らしたら俺が鉄拳制裁を男女の括り無く喰らわすだけですけどね、とも言い加えた。そう、打開策とはお願いである。まぁ効く・効かないは本人たち次第であるが・・・
すると、全員頭を縦に振った。・・・ほっ、と息の吐くの前 にもう一度首を縦に振ったメンバーを見た。・・・前言撤回。ただ一人を除いての全員が首を縦に振った。そのただ一人とは俺と同じ性別「男」のもう一人の副会長であった。そいつの名前は「京都 慧」。
こいつの容姿は質が悪い。具体的に表すなら性別が「男」なのに女の容姿をしている。しかもブスではなく超級レベルの美少女なのだ。しかも何故か俺はそいつに懐かれている。嫌いではないのだが・・・「男」とは理解してるんだがな・・・はぁ~。
するとそいつから質問が来た。
「無月さん、何故能力の口外を禁ずるのでしょう?」
そいつは制服着用ではなくゴシックロリータ又の名をゴスロリと呼ばれる服を纏い、身長140台の小柄な体に相まった小さなお顔の顎に手を当てて首を傾げていた。
すると、程なく会長が
「かわいい~~~」
と、身悶えして京都ににじり寄って行った。その姿はさながら不審者に近いものがある。
そして京都はにじり寄る会長から逃れるために周りに援護を求めるが俺たちは視線を合せなかった。それには巻き込まれたくない_
これは皆の気持ちであった。すると、今度は俺に熱烈な視線を送ってきた。残念ながら見た目が女でもそこまで野郎に手を貸すことはしない・・・と思う。
そして京都は部屋の隅っこまで追いやられ、会長に抱きかかえられた。
「んきゅ」
と、小動物が鳴くような声を上げ見事にお姫様抱っこをさせられていた。
会長はそのまま自分の席に座り、その上に京都を乗せて言った。
「それじゃ、会議の続きをしましょう」
この人は自分が会議を中断していたという自覚があったらしい。
そして俺は止まっていた会議を再び動かした。
「それじゃ、京都。疑問を解決すればお前は同意するか?」
俺は京都に大事な論点をまず確認した。すると半眼で睨んでいた京都はびっくりしたような顔で俺を見た。
「う、うんっ!!」
了解の声も貰えたしそれじゃ話しましょうかね。
「俺が口外してほしくない理由は俺はシフト4で、今まで能力が皆無に等しいと思っていた奴がいきなり明確な能力を持ってるってなると、生徒会に何かしら能力昇華になるものがってなって騒ぎになるのが自明の理だからだ」
すると、京都は
「ほぇ~~」
と納得がいったのだろう、そんな声を発していた。この理由は戯言だ。俺は俺のプライドを守るため嘘をついた。まぁ、でも即興で語った理由でも頭で半濁してみても中々上等な理由になった。
そして俺はさらに語る。
「そして次は能力についてだが・・・まずは見てもらおうかな」
右腕に力を込める。するとついさっきまで纏っていたオーラが再び出てきた。
黒と白の混合。混ざり合わず、綺麗な姿を成していた。
俺は今度はブレザーを脱ぎ、中のシャツの右袖のボタンをとり外し袖を捲くって腕を見せた。
すると、右腕全体に魔法陣のような幾何学模様の黒い筋が延々と腕の中で模様を描き続けていた。前に書かれた模様は徐々に肌色に戻っている。そして黒い筋から白色と黒色のオーラが噴出していた。
「ま、こんな感じかな」
そして能力を切り、俺はシャツを元に戻した。
すると九十九さんから今度は質問が上がった。
「・・・外見は分かった。・・・能力は?」
まぁ、そこが一番知りたい所だろうからもったいぶらずに告げた。
「俺の技能力の能力は「能力情報の構築とそれの流出」だ」
案の定、皆はチンプンカンプンな顔をしていた。
「簡単にいえば「多才な能力を使える」だ」
すると、チンプンカンプンな顔を一転して皆は真剣な顔をして俺に告げた。
「・・・すごい」
と、九十九さんが
「ふむ、君はすばらしいな。無月」
と、八雲さんが
「ふにゅ、す、すごい」
と、京都が
「ずるい能力ね。お姉さん嫉妬しちゃうよ」
と、会長さんが。
然し、だ。
この能力はあくまで情報の構築であって現実に干渉させる訳ではないので、「能力の行使」は不可能なのだ。
つまりは皆が想像する凄い能力というわけではなかった。だから、俺はシフト4なのである。
正しレアな効果ではあるが。
其処も含めて言うとさっきの盛り上がりは3割減ぐらいとなった。
案外ガッカリされたらしい。
「くっくっく。すいませんね、利便性に欠けて」
そう言うと、皆はフォローしてきた。
「そ、そ、それでも便利だとお姉さんは思うなぁ~!!」
「(コクコク)・・・すごく便利!!」
「そそそそんな悲観しないでください!!」
「ああ、便利だから君は「能力の相殺ができた」と僕は思うがね」
皆の優しさが心に滲みるな・・・なんてことは無かった。
滲みることは無くとも感じれたことは確かだが。
ところで、と八雲さん。
「何かあるか?」
そう聞くと彼女は言った。
「ああ。君はどうやって能力を消したんだい?」
それも説明しないとな、と思っていたのでこれはいい機会であった。
「そうだな、あれはアイツのあの能力情報とは対となる能力情報・・・つまりは反能力情報を能力に流し込んで相殺したんだ」
そう説明すると聞いていた皆はまたまた茫然とした顔となった。
「ふむ。では君の能力は「能力相殺」の方が正しいような気もするんだが」
ひどく綺麗なその顔で八雲さんは言った。
うーむ、でもそうではないと彼女に説明した。
「そうだな・・・あの打ち消したのは相手の能力情報の数値と逆の数値を・・・相手の能力情報の数値を100としたときに俺の流し込む能力情報の数値を-100として0にして起こす応用技術だから「能力相殺」は主の能力としては語れないんだ」
そういう事である。語るにはメインであるからにして語れない。
そして皆に言う。
「他に質問は?」
すると、満場一致で質問はなかった。
そして俺は言った。
「んじゃ、これで終わりかな」
すると会長さんは言った。
「それでは無月 大和 くんに関する会議はこれで終わります」
そう言って会議は終了した。
はたまた俺は言う。
「それでは八雲さん。アンタが見せた水の能力について教えてくれ」
そう言った。




