拠点完成!そして不安の≪ボク≫
仕事でなかなか執筆が……
今回はやっと拠点完成な話しです。やはり説明的な文が多い罠。
早く戦闘シーンとか入りたい。
「ふぅー満足満足――――、紅茶と羊羹の組み合わせはまた絶妙ねえ。あたしの好みを理解した良い仕事だわ」
「ウフフ、お褒めにあずかり光栄ですNさま」
Nがなんとも珍妙な組み合わせで「しあわせえ〜」な表情をしてまったりしている。
いや、たしかに悪くない組み合わせだと≪ボク≫も思うけど……そこまで幸せそうな表情をするほどかとも思う。
とは言え実際マーテルさんが用意したものはどこかの店に出しても可笑しくないレベル――――いや、≪ボク≫はそういった店には行ったことはないけれど――――だった。 特にあの甘さを抑えつつもしっかりと素材の旨さを引き出した羊羹は、今も≪ボク≫の舌にしっかりと記憶され――――
「――――ん?」
……あれ?
≪ボク≫……お茶飲んでるよな? いや飲んだはずだ。マーテルさんの淹れてくれた紅茶とお茶菓子を≪ボク≫は食べた――――はずだ。食べた、よな?
なんだろう。食べたということは覚えているのに、その味に関しての記憶だけが妙にぼんやりとしている。
なんとも釈然としない感覚に頭を捻りつつ――――
「それでは若さま。あらためて拠点作りの準備を致しましょう」
「あ……うん、ヨロシク」
……まあいいか。
なにか忘れているような……そんな気分は好きではないが、いまは他にやるべき事がある。
≪神代戦争≫を始めるための第一歩、本拠地の準備があるのだから。
「それでは若さま、≪S.Y.R≫を起動させてください」
「ああ」
言われて≪ボク≫は黒の立方体≪S.Y.R≫を起動する。
「ではご説明いたします。まずは先程ご覧になったイメージ――――ステータス画面とお呼びしますが、その下の項目に≪開発・生産≫とございますね? そちらを選択なさってください」
ふむ……≪ボク≫はマーテルさんの指示通りに≪開発・生産≫のコマンドを選択。
すると次にイメージとして現れたのは無数の数字。0と1の群れだ。それも視覚化された。
「……それで? 拠点作りってのはどうすればいいの? さっきもNに言ったけど、一から作るっていっても≪ボク≫にはその手の技術や知識なんてないんだけど」
と言うか、学生の身分でその手の知識を持っている奴はそうそういないと思う。
……いるところにはいるんだろうけどさ。
「フフ、ご安心を。これから若さまにしていただくのは、とても重要ですが簡単なことです。 端的に言えば――――イメージしてください」
イメージねえ……
「そう。ご自身が望まれる理想の形態。最高の守りと、最強の攻め。それらをイメージなさってください。それ以外のことは全て私が補佐いたしますから」
拠点は接続者の想像力で作られる……最初のNの説明にあったが、まさかそのまんまのことをするとは。とは言え――――
「イメージねえ……」
「いきなりでは難しいでしょうか? では一つアドバイスを。若さまがこれまでやってきたゲームや、見たことのある本やアニメなんかを頭の中で思い浮かべてみてください。その間に私が若さまの認識として最も深く記憶されているものを引き出しますので」
「うーん、良く分からないけど……」
最近見たのってなにがあったけな……ここ最近は正直レポートだ何だで自分の時間を有意義に使えてた記憶がない。これが中学時代はたまた高校時代なら、色々見た記憶がぱっと思い浮かぶんだろうが……あー、大丈夫かな?
「はい大丈夫ですよ。と言いますか、終わりました」
「はやっ!?」
早いよっ!
イメージしろって言葉からほんの数秒で作業は終わったらしい。
「記憶の検索作業は、条件さえ満たせば難しくはありませんから。特に私のように補助作業に特化している生体人形なら、この手のことはお茶の子さいさいなのですよ」
えへん――――とその大きな胸を揺らしてどこか誇らしげなマーテルさん。
ああ可愛いなあ。てか胸が……揺れますね。眼福眼福。
「それでは若さまのイメージも採取しましたし、次は拠点の基礎と外装に関してですわ」
説明しますね、とマーテルさんが言う。
曰く、この基礎と外装の作業とは、つまりは拠点の骨組みと表面を覆う基本的な装甲を、どのような素材で作るのかと言うことだった。
「素材?」
「そうですねえ……基本骨子および≪拠点≫の表面装甲の素材候補としては、軽量かつ強度・柔軟性に優れ精神感応金属でもある≪オリハルコン≫、そのオリハルコンを特殊錬成して軽度の修復機能を備えた≪日緋色金≫、単純な物理的硬度・強度では最高値を持つ≪アダマース≫――――」
結構あるな……どれも元の世界では一度ぐらいは聞いたことのあるような有名どころばかり――――まあ、小説やゲームに登場するような架空のものだけど。
いまさら架空金属の一つや二つ出てきたところで驚きはしない。
「他にも≪神珍鉄≫や要求Ptは高いですが≪トゥルーメタル≫、≪ラフメタル≫と言う特殊素材もありますけど……」
うーむ難しい。
こうも種類があると悩むな……と言っても方向性だけは、実はもう≪ボク≫は決めていた。
「マーテルさん。こうなんて言うんですかね、それその物の強度や硬度は控えめでいいんですけど、秘匿性っていうか隠密性っていうか、拠点その物の存在感を薄くするような素材? そう言うのってないですか?」
あー……、説明下手だな≪ボク≫
「つまりステルス性を備えた素材をと言う事ですね」
「あ、そうです」
簡潔ですねマーテルさん。まあそう言う事ですけど。
≪ボク≫の考えはこうだ。
この≪神代戦争≫では単純な物質的防御力はまるであてにならない。
あの記録映像の光景でも思ったことだが、あの巨樹は自身の装甲ではなく再生能力を優先した設計をしており単純な装甲強度では猛禽を下回るだろう。にも拘らず、最終的にはその再生能力によって圧倒的火力を有した猛禽を打ち破った。
猛禽にしてもあの威容を見るに相当分厚い装甲を有していただろうに、最後にはそれを破られて爆散している。
単純な装甲の厚さが戦闘の勝敗を決めるわけではない――――と言うのが≪ボク≫の結論だった。
ましてや≪空間破砕兵器≫や≪情報抹消兵器≫なんてものの存在がある以上、どれだけ装甲を分厚くしようが意味はない。
「……ちょっと待ちなさい。なんであんたが、そんな殲滅兵器クラスの名前を知ってるのよ!?」
「え? それは――――」
――――わからない。
おかしいな……≪ボク≫はそんな兵器の名前を誰から聞いたんだ? Nの反応を見る限り彼女ではありえないし、マーテルさんでもないだろう。
記憶の中にぽつんと孤立して存在する出処不明の知識――――っつ、なんだ? 頭が痛い……
「あ、大丈夫ですか若さま?」
「(………まさか別の創作者からの干渉が?) ……いいわ。今はそのことは忘れて。続き、しましょ?」
「あ、ああ……」
頭痛は治まったが、気持ち悪い。吐き気がする類の気持ち悪さではなく、思い出そうとして思い出せない――――そんな気持ち悪さ。
さっきも同じことがあったな――――とにかく、今はNの言う通り作業の方を進めよう。
「それで、どうなんです? そう言う素材ってあります?」
「そうですねえ……これなどは如何でしょうか? 黒色金属≪ブラック・ラピュラス≫ 名前の通りその金属色は純粋な黒に近く宇宙空間での視認を難しくし、さらに素材そのものの特性といたしましてレーダー波などを吸収してしまうという特徴を備えております」
ピンポイントですありがとうございます!
なんともご都合主義だが、あるのなら問題ないってことで。
とは言え、流石に骨組みまで全部同じ素材で作るってのは抵抗があるので――――
「それじゃあ土台の重要な部分にだけ≪アダマース≫を使用して、残りの部分――――表面装甲全面に≪ブラック・ラピュラス≫を使用する形で」
「かしこまりました」
一部分にだけ使用するなら必要Ptが高かろうと大して変わりはしないってことで。
「けち臭いわね〜」
「せめて節約してると言え」
まあ実際けちけちしてもいられないんだろうが……≪ボク≫にもそれなりに考えがあるんだ。
「では次に内装に関してですが、若さまのご要望は?」
あ、それなんですけど、マーテルさんちょっと……ゴニョゴニョ――――
「――――はあ……確かに可能ですわ。ですがそれだけだと効率が悪くなりますねえ」
「そこは技能でどうにか――――」
「でしたら拠点だけでなく、戦力群にも最初から――――」
「なるほど、となると……」
ひそひそと、マーテルさんと秘密の会話。
「……なんでそんなこそこそしてんのよ?」
そりゃまあ――――Nに聞こえないように?
「ああ――――って何でよ!?」
ひーみーつ――――、いや決してけち臭いとか、厨二病がどうのとか言われた腹いせではなく――――少しはあるが――――純粋にいまは秘密だ。
「意味わかんないわよ? あたしにだって関係あるんだから教えなさいよ!」
「だが断わる!」
「フフ――――Nさま、男の子の見栄ってやつですよきっと」
や、違いますけど。
「……後でちゃんと教えなさいよね」
納得するんだ、それで。
「ま、こうご期待ってことでな」
まだ出来るとも分からんし。
「では若さま、続き、しましょうか?」
はい……あれなんだろう、然り気無くエロいセリフに聞こえ――――「はい?」なんでもないです。
天然?
そんなこんなでおおよそ三時間後――――長いと見るか短いと見るかは自由だが――――
やっと……≪拠点≫が完成しました!
とりあえず今使えるPtを――――技能取得で使用する予定の分だけ残し――――あるだけ注ぎ込んだ。まあおかげでPtはすっからかんで懐が寒いが、現時点で≪ボク≫が考えうる最高を設計したつもりだ。
ではさっそく紹介しよう。 これが≪ボク≫の――――≪ボク≫たちのホーム。
それは、真黒き神座す月か――――
それの拠点名は、≪グラズヘイム≫にした。
名前は某神話から。意味は≪喜びの世界≫だ。 形状としてはシンプルな球体型。
表面装甲は全面を黒色金属≪ブラック・ラピュラス≫で構成している。光学的手段およびレーダー波等による索敵を極限まで軽減するように設計している。
単純な装甲防御力は紙も同然だが、それは≪エネルギー偏向フィールド≫による防御力場で補っている。
全高はおよそ3000キロメートルほどだ。防御力の薄さは大きさでカバー――――、とは言わないが、このくらいの大きさなら少しのダメージくらいなら耐えられる……はず。
デザインに関しては、某銀河戦争の某最終兵器や某怪獣王に出てきた某星人の母艦、はたまた某銀河天使に登場する各種〇の月を参考にしている。
その姿はまさに黒い禍星と言ったところか――――自分で言っててちょっと恥ずかしくなった。
武装は近接防御用のものを除いては一切装備していない。≪拠点≫そのものが戦闘に直接介入するようになったら終わりだろうと思ったからだが――――正直に言えば、内装や下記で語る戦力の設計・開発にこだわり過ぎて武装まで回すPtが無くなったからだ……はは、笑えよ。
「あっはっは! ばーかばーか!」
「そこっ! マジ笑いするかよ!?」
「あらあら、お二人とも……」
マーテルさんに呆れられた……ショックだ。
「あはは…! ごめんごめん! にしても……随分と面白みのないものになったわねえ。マーテルとこそこそ話しあってたわりには本当に平凡。≪拠点≫自体の秘匿能力は高い方だけどそれだって絶対ってわけじゃないし、火力も防御力も無いも同然じゃない?」
「ふふふ……まあ、まだ内緒ってことで」
ちょっとした隠し球……と言うほどではないが、≪グラズヘイム≫の最大の特徴とでも言うべきものを、≪ボク≫はまだNに話すつもりはない。
……まあ、まだ全部構築が終わってないからってのもあるが。こういうのは、一番おいしいシーンで公開するのが一番!
「クスクス、若さまはなかなか面白い発想力の持ち主でございますよNさま」
「ふーん……ま、マーテルがそう言うんならちょっとは期待してあげるわ」
≪ボク≫のは信じなくて、マーテルさんのは信じるか! ――――そりゃそうだよな。
ま、まあとにもかくにも、≪拠点≫の概要は以上だ。だが、≪ボク≫が設計したのはそれだけじゃない。
≪拠点≫と同時にそれを防衛する戦力も開発を進めていた。
まずは戦力の要となる艦船から紹介しよう。
ステルス攻撃空母・≪フリースト≫
まあ名前の通り空母だ。何を艦載するのかは下で説明しよう。
見た目とにかく縦長な艦だ。全長はおおよそ10000メートル――――10キロなわけだが――――ほど。 ≪グラズヘイム≫同様に装甲素材として≪ブラック・ラピュラス≫を使用しているため艦自体の秘匿性能は比較的高い。
空母にゃ火力なんていらんだろう――――という≪ボク≫の自論で武装は一切施していない。
が、その代わりとして母艦としての機能はもとより、中継基地的役割まで担うことが可能なほど内装には手を施している。
次に≪フリースト≫に足りない火力を補うためのものをと考えて出来たのがこれだ。
突撃駆逐艦・≪ゲイレルル≫
槍のような形状をした駆逐艦という種別の戦闘艦だ。
全長は約300メートル前後。
駆逐艦――――ま、簡単に言えば速力を重視した小型軽量の艦なわけだが、この≪ゲイレルル≫もまた速力を最大限重視した設計だ。
とにかく最前線で持てるだけの火力をばら撒いて速力で翻弄する――――という目論見なのだが、実際上手くいくかどうかは別だ。
武装は艦上部に二基、下部に一基装備した≪二連装凝集激光砲≫――――まあ要はレーザーだ――――のみだ。
速力を最大のうりとしているため、火力自体は低くて構わない。ま、数で勝負ってところかな。
そしてこっちが≪フリースト≫に艦載する予定の機動兵器群だ。
汎空間戦闘用亜人型哨戒攻撃機・機体名は≪ヘルヴォル≫
哨戒攻撃機と称しているように機動性と索敵能力、攻撃性能に偏重した設計をしており、装甲はぶっちゃけ皆無と言っていい――――まあ、≪グラズヘイム≫同様、それ自体の耐久力は≪神代戦争≫では重要視していないからそうなったわけだが。
外見は亜人型と表記している通りに人型に近いが人型ではない――――と言った趣だ。具体的には人で言えば両腕・両脚、加えて肩部のある部分は大型の加速・推進器になっており爆発的な加速力が引き出せるようになっている。あ、ちなみに尻尾な感じの部分も付けている。一応姿勢制御用と言っているが、ぶっちゃけ≪ボク≫の趣味だ。
武装として近接戦闘用の≪アダマース製大型対艦ブレード≫を両腕・脚部にそれぞれ四つ。そして長距離砲撃用として胸部に一門の≪凝集激光砲≫、機体各部にも小型だが同じものを装備させてある。
基本は流線形を基調としたデザインであり――――見ようによっては結構トゲトゲしい部分もあるが――――その装甲色は白を基本としている。
ちなみに全高は――――結構抑えたつもりだが――――80メートルほどだ。意外と大きい感じだが、とにかく≪グラズヘイム≫も≪フリースト≫もキロ単位なだけに、比べると豆粒同然という事実。
こっちも当然数で勝負になる。≪フリースト≫には最低五百機前後を乗せることが可能だ。
――――え? 見た目が明らかに悪役ちっく? 主人公が使用する感じがしない? はっはっは――――いやあ、≪ボク≫こう言うデザインの好きだしさ。
「あんたの趣味はどうでもいいけど、あたしは割りと好きよこういうの」
「……デレ期ですか?」
「そんなわけあるか! ただデザインを褒めただけよ!」
……そんな全力否定しなくても……
「とは言え、何となくあんたのやりたい戦い方は予想出来たわ」
ほほう? 自信満々ですねNさま?
「秘匿優先の拠点に空母。量産前提の艦載機……予想出来なきゃそれこそ馬鹿でしょ?」
なにを当たり前のことを、と言い放つN。
いやいや……その発言は何人かの人を敵に回しそうで怖いんだが……
「でも――――実際やれるの?」
「……正直言って、やってみないと分からないってのが本音、かな」
「ふん……なんとも不安にさせるセリフねえ」
そう……やってみなきゃ分からない。≪ボク≫がやろうとしていることが、実際どこまで通用するかいまいち自信が持てない。
はっきり言ってしまえば、不安を通り越して――――怖い。
逆に言えば、≪ボク≫がやりたいことを実現する、その為の≪グラズヘイム≫であり、各戦力群なわけだが……それを考えても怖いものは怖い。
「――――でしたら」
そんな時だ。
マーテルさんがその提案をしたのは。
「私に良い案がございます」
「良い案?」
「はい。Nさまは若さまの戦術が本当に通用するか不安……若さまはご自身の考える戦術が正しいのかが不安……そう思っておいでなのでしょう?」
であるなら――――、と真面目かつ、どこか悪戯っ子じみた声色でこう彼女は言った。
――――模擬戦をいたしましょう。
ちなみに、艦載機こと≪ヘルヴォル≫は某ゲーム的なステータスだと、運動性140、装甲800くらい……まあサイズはLだからなんとも。