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拠点作りとメイドと≪ボク≫

新キャラ登場です。


結局まだ拠点作りには至ってません。代わりにメイドが出ます。



月~火あたり投稿できそうな感じではないので早めに投稿です。



「本拠地作り?」


「そ。あんたがさっきまで見てた映像にも映ってたでしょ? 無駄にでかい木と鳥もどき。あれがそうよ」


 ああ、あれか……って、あれを作るのか!?


「≪接続者≫なら誰もが最初に行う作業よ。まあ戦争中は本拠地を≪拠点≫って言葉で統一して呼んでるわね。意味は同じだから言いかえる必要性はあんまりないけど」



 ……ん? 

 拠点を作る……


「あのさ、拠点って最初からある程度用意されてるものじゃなのか?」


「違うわ。文字通り一から作り上げるのよ。基本的な骨組みから拠点として必要な内装・外装の全てをね」


 え、なにそのマゾゲー? 

 いくらなんでも初心者には無理だろそんなの。拠点どころか家の造り方だって知らないよ。

 なにかヒント的なものはないの? と、≪ボク≫がそう聞くと、


「ヒントじゃないけど、ジャンルとしてなら幾つもの形態が存在してるわよ。例えばさっきの樹木型なら≪有機生体装甲型自律成長要塞タイプ≫だし、猛禽のほうは正統派の≪全域砲撃型機動要塞戦艦タイプ≫って感じにね。ま、どっちも馬鹿みたいに独自のアレンジを入れてたけど」


 なるほど……でもそれなら、前回の勝利者の拠点を参考にすれば――悪い言い方をすればパクってしまえば――そう考える≪ボク≫に、「でもね」と釘を刺す。


「拠点はある程度のジャンル的類似はあっても一つとして同じものは存在しないの。それは、それぞれの≪接続者≫個人の想像力が関わってくるからよ。これは拠点作りだけじゃなく、その他の戦闘用機構……艦船だったり戦闘生物だったりね、それらにも適用される」

 

 なるほど……仮に≪ボク≫があの樹木や猛禽を参考にして拠点を作ったとしても、外見は同じでも内容がまるで別のものになると。確かに他人の想像で拠点が作られるんなら、何を考えてそれを作ったのかってのまでは真似しきれないもんな。


 それだけじゃないわ、とNは説明を続ける。


「拠点の製造を≪接続者≫の想像力に任せる理由は、これがある意味一番大事なんだけどね、≪接続者≫が考える最高の守りを具現化するっていうのがあるの」


 最高の、守り?


「≪神代戦争≫での勝利条件の一つが敵拠点の陥落。つまり言いかえればこちらの拠点が落とされればあたしたちの敗北ってこと。拠点を作るにあたって≪接続者≫がどんな考えで、どのような守りを選択したかによって難易度は大きく違ってくる。……ほら、本拠地作りの重要さが、これで理解できるでしょ?」


 ……なるほど。


「さて、作業するにあたってあんたには三つ大事なことを教えるわ」


「大事なこと?」


「大事なものって言ってもいいわね。まずはこれよ」


 そう言ってNは手の平に乗るほどの大きさの黒い立方体を出現させる。

 黒い立方体――見た目は≪ボク≫の持っている知識の中で一番近い表現では、ルービックキューブに近いだろう。その表面は非常に滑らかでまるで鏡のようだが、よくよく見れば表面上には幾つもの幾何学的なラインが走っている。

 その黒い物体は光を反射することなく逆に吸い込むかのような印象を≪ボク≫に与える。


「これは?」


「真説・第一永久機関≪スフェーン・イリアステイル≫――――通称≪S.Y.R(スィール)≫、これから行う作業のほとんどがこれを通して実行されるわ」




 N曰く、真説・第一永久機関≪S.Y.R≫とは、文字通りの永久機関らしい。

 ここで永久機関の定義について説明するとしよう。


 永久機関とは外部からエネルギーを受け取ることなく、仕事を行い続ける装置の総称だ。

 そして永久機関には大きく分けて二つの種類がある。


 一つは、≪第一種永久機関≫ 

 第一種永久機関とは、外部から何も受け取ることなく、仕事|(運動エネルギーとも言う)を外部に取り出すことができる機関のことだ。永久機関という定義そのものを表すものでもあるだろう。しかしこれは、熱力学第一法則――――つまりはエネルギー保存の法則だ――――によって否定されている。


 もう一つは、≪第二種永久機関≫

 これは上記の熱力学第一法則を破らずに永久機関を実現しようとしたものを指す。 これは仕事を行う部分を装置内に組み込み、ある熱源から熱エネルギーを取り出しこれを仕事に変換し、仕事によって発生した熱を熱源に回収するという仕組みなのだが、こちらは熱力学第二法則によって夢破れた。



 ……さらりとうんちくと垂れ流してみたけど、まさか某大規模情報サイトで得た知識がここで役に立つとは……うん、W〇k〇先生ありがとうございますってところだね。

 

 どちらの永久機関も≪ボク≫が居た世界では理論こそ幾つも唱えられ、何人もの科学者・技術者が挑み、そして未だに完成する見込みのない、まさしく夢の装置と言っていい代物だ。



 ではNの言う真説・第一永久機関≪S.Y.R≫はどうかと言うと、どうも≪ボク≫が語った永久機関どちらとも似ていて全く別物のようだ。

 

 ≪S.Y.R≫はそれを構築する素材そのものがある種の超高密度エネルギー結晶体で造られており、常に一定のエネルギー量が維持・保持されているらしい。しかもそのエネルギー量は下手な恒星なんかよりも純粋なエネルギー体としては比較にならないほど――――桁にすると0が後ろに数個ほど――――高いそうな。

 だが真に驚くべきはそこじゃない。この≪S.Y.R≫は仕事に必要なエネルギーを消費しても、その消費したエネルギーが初期の数値から減らないのだそうだ。

 意味が分からないかな? つまりはこうだ。



 100(初期数値)-100(消費数値)=100(現在数値)



 ……自分で言っててもわけが分からない。

 完全に矛盾している。確実に減ったはずなのに、実際には減っていない。

 まさしく矛盾だ。

 そして、そのことをNに質問して返ってきた答えがこれだ。



「あたしたち――≪創作者≫――が、そういう法則を新しく創ったから」だと。



 ここまで非常識かつ規格外な光景を目にしていた≪ボク≫だったが、まだ理解が甘かったらしい。

 相手は世界すら創造する≪創作者≫、既存の法則や理論を無視した新しいルールを生み出すことすらも、Nたちにとっては難しいことではないようだ。


「……このチートめ」


「一応、神さまですから」



 ふふん!と無駄に自慢げに胸を張るN。



「で、これをどうしろと?」


「手、出して」


 こうか? Nの言うまま手を差し出すと≪S.Y.R≫を≪ボク≫に握らせた。


「持ったわね? じゃあ目を閉じて。≪S.Y.R≫に意識を集中して……その中に自分が入り込むイメージを持つのよ?」


 また無理難題を、と思いつつも≪ボク≫はNの言うがままに実行する。


「えーと……目を閉じて……意識を集中……中に入り込むイメージで……集中、集中……っ!?」


 言われた通りに≪S.Y.R≫を握って念じていると不思議な浮遊感が現れた。頭の中がくらくらするような……そんな陶酔感。

 そして――――


「どう? なにが見える?」


「えーと……なんて言えばいいかな? ゲームのステータス画面? ……みたいな?」


 目を閉じているはずなのに≪ボク≫の目はその光景をしっかりと認識していた。

 それはいま≪ボク≫が言った通りの、まるでなにかのゲームのステータス画面のようだった。

 ちなみにイメージ化するとこんなのだ。




 ≪接続者≫総合情報 

 ≪接続者名≫   :≪ボク≫

 ≪接続者オーナー≫:≪可能性のN≫:≪閲覧不能≫

 

 ≪接続者≫総合Lv:1

 ≪拠点≫Lv   :0

 ≪内政技能≫Lv :0

 ≪軍事技能≫Lv :0

 ≪開発・生産≫Lv:0


 ≪現在保有戦力≫ :0

 ≪現在所持pt≫ :200,000pt



 ≪各種技能≫コマンド

 

 ≪内政技能≫:取得数0:取得可能数5

 ≪軍事技能≫:取得数0:取得可能数5

 ≪固有技能≫:取得数1 


 ≪開発・生産≫コマンド 

 ≪開発≫Lv:1

 ≪生産≫Lv:1




 てかまんま何かのゲームのステータス画面みたいだ。

 ……ん? 

 ……おい、ちょっと待て。


「なあ、N? 接続者名ってところなんだが……」


「なによ」


「なんで≪ボク≫の名前が≪ボク≫なんだよ!? 名前じゃないよこれ! むしろ一人称だよ!!」


 これが名前だとしたらそれはそれは恥ずかしいだろう。

 友人や知り合いからは≪ボク≫君とか≪ボク≫さんとか言われるのだろうか?

 ああ、いやこれが中華の人だったら違和感はないが、あいに≪ボク≫はれっきとした日本人である。

 

「ああ……バグかしらね? いいんじゃない別に。≪あああああ≫とか適当な名前つくよりはマシだと思いなさいよ」


「ざけんな!」


 人の名前をなんだと思ってる!

 ≪ボク≫の名前は――――!!


「いいから先説明させてよね」


 名前すら言わせないつもりかよ!?

 本当に可愛いのは見た目だけだなこの邪神は!


「はいはい……じゃあ説明するわよ」


「………もうどうとでもすれ」



 この先もこんな扱いなんだろうか?

 そうなんだろうなあ……



「まず≪接続者≫総合Lvってやつね。これは下の項目にもある≪内政技能≫や≪軍事技能≫を合わせた文字通りの総合でのLvよ。この総合Lvが高いだけさらに下にある項目≪固有技能≫ってのが開示されていくの」


「固有技能って?」


「≪接続者≫が個人個人で持ってる技能のこと。ま、言っちゃえば当人が得意としていること――趣味とか特技とか――がこれに反映されてくるわね」


 ほうほう。


「≪内政技能≫や≪軍事技能≫って言うのは、拠点や戦力の≪開発・生産≫に関わってくるわ。例えば≪内政技能≫の中には≪生産能力上昇≫っていう戦力開発関係または≪思考速度上昇≫なんてあんた自身の能力を上げるものもある。≪軍事技能≫は戦闘関連のものばっかりだけど……ま、今は内政のほうに集中したほうがいいでしょうね」


 いきなり面倒くさそうだな……で、この≪所持Pt≫ってのは?


「これは内政から軍事の技能取得、新しい施設や戦力の開発・生産にかかわる非常に重要なものよ。技能も開発も全部消費Ptが設定されていて、自分や戦力の能力増強は今持ってるPt以内に収めないと駄目なの。Pt自体は後から取得する方法はある。でも……無駄遣いは出来ないのは理解できるでしょ?」


 持ってるPtで自分や戦力の強化の仕方が限定されてくるってわけか。これもやり繰りを間違えたら難易度が大幅に変わってくる、と。


「本当はもっと詳しく説明する必要があるんだけど、いまのあんたにはあまり関係ないわね。最初に必要になってくるのは≪内政技能≫と≪開発・生産≫だけだし」


「だけっては言うけど……その内政技能とやらは大体いくつぐらいあるんだ? それによってやり方を色々考えなきゃいけないんだけど?」


 今あるPtは200,000。だけど技能の取得や開発にPtを幾ら消費するのかによって、≪ボク≫の≪神代戦争≫での戦い方は大きく変わってくる。


「そうねえ……技能だけでも、ざっと五千種類ぐらい? 派生を含めたら一万は軽く超えるんじゃないかしら?」


 …………へえ、五千種類ねえ。


「…………死ねと?」


 いやいや無理だろ!?

 今時のやり込み派ゲームでもそんな数の技能なんてないよ!

 ≪ボク≫に廃人になれと!?



 そんな≪ボク≫の嘆きを予想していたかのようにNは不敵に笑う。


「安心しなさい! そんな一から十まで全部あんた一人にやらせないから! そこで大事なもの最後の一つの登場よ! さ、出番よ。来なさい」


 そこには一人の女性が立っていた。

 歳は18~20位だろうか? 黒い髪を白の紐で簡素に結び、古式ゆかしいメイド服に身を包んでいる。背は≪ボク≫ほどではないが女性にして高くNよりも頭一つ分ほど大きい。が、なにより特徴的なのは、その胸だろう。

 巨乳だ。巨乳である。大事なことなので二回言ってみた。

 彼女の隣に立つNが可哀想になるくらいにスタイルが良い。

 うん、巨乳万歳!と言っておこう。Nは……ハハ、残念賞?


「アッハハ~~――――ぶっ殺すわよ?」


「申し訳ありません」


 土下座ですよ、ええ。

 下手なことを言えばヤラれる――――そうでなくとも黒歴史を握られているのだ――――平謝り。完全なる平伏のポーズであり土下座のスタイルだ。


 そんな≪ボク≫の情けない姿を見て、黒髪のメイドは「クスクス」と楽しそうに笑う。

 くっ……情けない。Nはともかく、よりによって巨乳美人にこんな姿を見せるなんて……!!


「まだ言うか!」


 ――――失敬。本題に戻るとしよう。


「それで……彼女は?」


「はじめまして若さま。私はNさまにお仕えする作業全般サポート用生体人形、個体識別名を≪マーテル≫と申します」


 そう言って彼女はその挙動に一切の無駄のない、それでいて瀟洒な動作でおじぎをする。≪ボク≫もそれにつられてぺこりと頭を下げる。

 それで、えっと……作業全般サポート用生体人形って?


「はい。作業全般――――拠点作りを始めとして、開発・生産・建築・運搬・兵力増強なんでも。全ての分野において若さまの助けとなるべく≪創作者≫の方々に生み出され使役される存在――――それが私でございます」


 おお! それは助かる!!

 でも人形って……全然そんな風には見えない。

 どこからどう見ても人間そのものだ。

 

 特に胸が。


「まだ言うか…!」


「ウフフ、ありがとうございます。ですが、まがりなりにもNさまの創りだした存在ですから、外見は人そのものであっても中身は別物なんですよ?」


 そうなんだ……ところでさ。


「はい?」


「その……若さまって、なに?」


 さっきからいつ突っ込みを入れるべきか迷っていたが、切り出してみた。

 若さまって……恥ずかしいんですが。しかも見た目美人なお姉さんに言われると、その、なんだ……照れる。


「お嫌でしたか?」


 涙目&上目遣いのコンボがキター!?

 無理だ。ああ無理だ。これは耐え切れない。

 心が痛い……!

 でもなんだろう……その表情をもっと見ていたくなる≪ボク≫がいる……って違う違う!!


「ああいや! そうじゃなくって、その……もっと別の呼び方とか、えっと……!」


 ≪ボク≫が慌てて弁解しようとするとマーテルさんは、


「フフ、冗談ですよ?」


 と悪戯が成功した子供のような顔をする。


「そうですねえ……若さま、とお呼びする理由ですが――私の本当の意味での主は、結局のところNさまですので。ですが、新しくお仕えするお方に失礼のないよう、それでいて敬意を持った呼び方をと考えまして、若さまと」


 ウフフ、と笑うマーテルさん。


「本当は最初、ご主人さまって言う呼び方も考慮していたのですけど、Nさまに「ご主人さまはあたし! あいつは下僕なの!」と言われてしまいまして……フフフ」


 ご主人さま!

 全国津々浦々の紳士諸兄らが渇望してやまない響き! 漢たるもの一度は呼ばれたい呼び方ぶっちぎりの一位!!

 そんな漢の夢が、可能性が……潰されていたなんて!

 畜生っ! Nはやっぱり邪神だ! ド畜生ぉ……!!


 ダンッ! と、≪ボク≫はへたりこんで、万感の思いをこめてこの行き場のない怒りを地面に叩きつけた。


「なにやってんだか」


「ウフフ、でも面白い方です。それでこそ私がお仕えする甲斐があるというもの。駄目な主に仕えるほどに従者の質はより映えるというものですから」


 先ほどとは違う意味で地面にへたり込む。

 美人に駄目とか言われた……死のう。


「あらあら……申し訳ありません若さま。ですがお仕えする甲斐があると言うのは私の素直な気持ちですよ。やはり従者としては主さまはつまらないよりも面白い方のほうが楽しいものですから」


「マーテルさん……」


「ですから、これからよろしくお願いいたします。若さまがこの戦争を勝ち進めるよう、このマーテル、最大限のサポートをお約束いたしますわ」


 なんだろうな……他人に激励されるとこんなに嬉しいものなのか。

 さっきのあのうんざりするような絶望感が何処かにいったみたいに心が軽い。

 これが……メイド力って奴なのか。


「はあ? なに言ってんだか」


「るっさい」


 テンションが上がる。

 メイドの力は偉大なり! 今の≪ボク≫なら拠点作りだろうが、技能の網羅作業だろうが、やれる気がする!! 

 それじゃあ……早速作業に取り掛かりますかっ!





 ――――と言おうとした辺りで、ぐー……、となんとも気の抜ける音がした。

 発生源は、≪ボク≫の腹だった。


「アッハハハハハ~!!」


「クスクス――では作業の前に、まずはお茶にいたしましょうか?」


「……はい」


 なんだかとっても穴に潜りたくなった今日この頃だった。

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