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≪神代戦争≫そして決意の≪ボク≫

今回はちょっと長くしてみました。


ちょっとだけ戦闘描写が。


まあ主人公関係ないけどね。



追伸。十二時には間に合わせたかった……

 《神代戦争》


 神の代理で戦争をするから、略してそのネーミングらしい。

 ……正直どうかと思うが。 


「つっこむべきところがまずそこからなの?」


「……いや、つい」


「ま、いいわ。続きを説明するわよ」


「よろです」


「≪神代戦争≫の起こりの起源がいつなのかは不明。けど、その存在意義はあたしたち≪創作者≫にとっては非常に重要度が高いものなの。それはこの戦争の勝利者が新しい世界の創作の優先権を得るから」



 優先権?



「≪創作者≫は自らの力でどんな世界でも創作することが出来る。けど創作できる世界の数には限りがあるの。大世界と小世界……あたしたちが創作する世界って言うのは、認識としては大きな一つの泡の中に、新しく小さな泡を作ることと同義なのよ」


 ……先生、例えが分かりにくいです。


「新しい世界が増えるたびに既存の世界が圧迫され軋み……最悪の場合は崩壊する。それも崩壊は一つの世界に止まらずに、より近い範囲の世界も巻き込むの。そしてその連鎖が続けば、いずれは大世界そのものを破壊しかねない」


 シカトですかそうですか。けど……


「それって結構やばいんじゃないのか? ≪創作者≫ってのはNの説明通りなら結構な数がいるんだろ? その大世界とやらの容量は知らないけど、仮に十の≪創作者≫が十ずつ世界を作り出すと仮定して百の世界。その十倍なら千の世界。倍々ゲームじゃないけど、なかなかに相当な数になるぞ?」


「実際には≪創作者≫の総数は軽く億は超えるわ。創作される世界の数も、あんたの仮定した数の数千倍以上」


 マジですか。


「大マジよ。事実は小説より奇なりってやつ。今のところは大世界の容量もまだまだ持つって予想だけど、それが何時まで持つかは分からない。だからこそ≪神代戦争≫が始められるようになったわけ」


「世界の創作の優先権って奴か。世界を創れる奴の数を限定して容量を超えないようにする……って、それでも何回も繰り返したら何時かは容量がいっぱいになるだろ? 数を限定しても増えることに変わりはないんだから」



 ≪ボク≫が言った言葉に対してNは何だか意外そうな顔をしている。

 どうせ≪ボク≫が言った意見に対して、「良く分ったわねこの凡人」とか言いたいんだろう? ……自分で凡人って言うのも意外と堪えるね。



「違う違う! 素直に驚いただけよ。意外と理解力あるんじゃない。だてに黒歴史を背負ってきてるわけじゃないのね」 


「褒められるのはいいけど黒歴史のことは余計だよ!」


「はいはい。で、さっきの疑問だけど。≪神代戦争≫があたしたちにとって重要な意味を持つもう一つの答えがそこ。 この戦争で勝った≪創作者≫には優先的に世界の創作権利を得る、そして負けた≪創作者≫も数は相当数限定されるけど、実際には創作するのは許可されてるの」



 え? でもそれだと……



「黙って最後まで聞く。 確かに敗者にも世界を創作する権利は残る……ただし、これまで創ってきた世界を全て――――破棄するっていう条件でね」


「破棄……ってそれまさか」


「……文字通りの意味よ」



 大世界の容量が超えないために、既存の世界を消す。

 敗者が創った世界が全て破棄されるってことは、当然、≪ボク≫の居た世界も消えるってことで……それはつまり≪ボク≫の家族や友達もみんな……



「だからこそ負けられないのよ。あんただって嫌でしょ?自分の大切なものが消えて無くなるなんて。あたしだってそう。世界はあたしの子供そのもの。慈しみ愛する存在。あたしのこれまでの歴史そのもの……とても大切なものだから」



 ……なんだよそれ。ふざけんなっ……!



「……拒否権はあんたに無いって言ったけど、一応聞いておくわ。どうする?」


「どうするもなにも……拒否できないだろそんなの!」



 世界の人類全てなんて言わない。けど、父さんや母さんたちが消えて無くなるなんてそんなの、認められない……!!


 Nは≪ボク≫の言葉を聞いて「ふふ」と小さく笑った。



「上出来よ。その言葉、信じるわ」


「戦争には参加する。けど、参加って言っても具体的にどうするんだ? 言っとくけどボクは見たとおりの文学系で、喧嘩だってまともにしたことないんだからな?」



 自慢じゃないが≪ボク≫はこれまでの学校生活で体育はほぼ見学しているほどの運動音痴かつ病弱、当然ながら部活動は文化系。高校にいたっては帰宅部というありさまだ。

 貧弱ここに極まれりと言っても過言ではない。



「……ほんとに自慢できないし、普通自分で文学系なんて言う? まあ、言葉で言っても分からないでしょうね。だからここからは手っ取り早い方法を取らせてもらうわよ」


 そう言うとNは右手に水晶玉のようなものを出現させ、それを上に掲げた。


「これからあんたが参加する戦争の――――その一端を見せてあげる」


 水晶玉から白い閃光が溢れだし、瞬間、弾けた。

 そして世界が反転する。







 其処はもう先程までの楽園のような世界じゃなかった。

 まるで夢遊病のような感覚で、≪ボク≫はその光景を見ていた。



 其処は銀河。

 無数に瞬く星々が煌く静寂の虚空。


 対峙するのは二つの巨影。

 銀河を戦場とするに相応しい超滅の権化。



 一つは燃え盛る恒星を背にした巨大な戦艦あるいは要塞。

 その外観は翼を広げた巨大な猛禽のようだ。頭部はなく代わりに胴体部分には巨大な球体が埋まっている。逆に翼や脚に当たるべき部分からは高層ビルも真っ青になるほどの大きさの柱状の物体が幾十数本もそそり立っており、そこからさらに別の柱が針山の如く生えている。



 そしてもう一つは、対峙する猛禽と同様……いやそれ以上の巨躯を誇る常識を超えた樹木だった。

 ただし通常の樹木とは違い、その表皮からは水晶状の物質が無数に突き出ており、枝葉は常に蠢いている。根の部分に至っては光る球状の何かを守るように無数に束ね絡まっている。

 


 その巨大な威容を誇る両者は、互いの手を読み合うように、微動だにせず……しかしその巨躯に纏わりつくかのように次々と新しい影が出現する。

 それは己の手足であり、牙であり爪であり、己を守る守護者たちだ。自らの主とよく似た姿の無機物と有機物の兵たち。破壊の権化たる超兵器。



 語らずとも分かりやすい敵対の布陣。

 お互いを確たる敵と見なし、撃滅するための戦の形。



 どれほどの時間が経過しただろうか。

 ≪ボク≫の感覚では数十分、しかし実際の時間はそれよりも短いのだろう。

 互いの軍勢が京の位に達した時、まるで打ち合わせたかのように同時に動き出し、それは始まった。







 …………………………………………………………………………ッ!!!!!!!!







 無音の閃光と共に、宇宙に新しい太陽が誕生した。


 猛禽と巨樹が互いに持ちうる全ての爪牙が、幾億の閃光となって相手を穿ち、抉り、削り、破砕し四散させる。

 それは勿論のこと、今や京の軍勢も己の役割を果たすべくその威力を発揮する。

 もはや弾幕などと言うレベルを超越し、破壊の津波と化して周囲の星諸共に喰い散らかしていく。 


 

 この一瞬で発揮し消費された総エネルギー量は既に小銀河十数個分にも至っただろう。

 未だ互いに致命傷はない。だが、砲撃の苛烈さ放射の数では猛禽の方が僅かばかりか上だろうか。明らかに巨樹の軍勢の方が被害が多い。

 主と同じ仕様なのだろう猛禽の守護者も、巨樹の僕に比べ砲撃の威力は大きく射線も過密だ。幾つもの光線に貫かれて、次々と戦線を脱落していく巨樹の兵たち。 

 


 この激しい戦争は猛禽の勝利で終わると、≪ボク≫は思っていた。

 ……この時ばかりはだが。


「おいおい……」


 驚きとかそういうのを通り越して呆れの言葉。

 ≪ボク≫が見たのは破壊され四散爆散し、虚空の塵となる運命だと思っていた巨樹の新たな行動。それは、相手の爪牙によって破壊されたはずの樹皮が内側から蠢き湧き立つ真新しい樹皮によって塞がっていく姿。

 即ち……≪再生≫

 そしてそれは巨樹のみならず、破壊されたはずの巨樹の僕たちも同様だった。


「反則だろう……あんなの……!」


 

 繰り返し、繰り返す。

 双方、最初の砲撃から一向に衰える様子のない砲撃の応酬。

 猛禽が穿いて、抉って、貫いて破壊する。

 巨樹は穿たれ、抉られ、貫かれ再生する。

 繰り返し、繰り返す。

 終わらない破壊の舞踏だ。




 破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。再生。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。再生。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。再生。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。再生。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。破壊。再生。再生。再生。再生。再生………………!!!!!!




 だが、その応酬も少しずつ傾きを見せ始める。

 猛禽の砲撃回数が減っている。少しずつ、本当に少しずつだが確実に減ってきている。

 


 当然だろう。

 確かに猛禽側の砲撃の威力、射線の数、一度の殲滅能力は巨樹を上回っている。だが巨樹は破壊された分だけ再生を繰り返し、逆に猛禽の数をわずかずつ削っていく。

 猛禽側に再生という機能がない以上は、もうどうにもしようがない。いずれ来る破滅をゆっくりと、じわじわ味わいながら嬲られ続けるだけだ。


 

 そこからの展開は早かった。

 幾度もの破壊と再生を繰り返し、遂に戦線を維持できなくなった猛禽側の戦陣。その穴に巨樹の僕たちが浸透し逆襲と言う名の侵食が始まる。

 そこからの猛禽の奮戦は健気ではあったが侵食を止めるには遠く及ばず……最後は猛禽本体の装甲表面に取り付き根を植え付け内部へ侵入。

 僕たちは本来の機能である敵対行動体への寄生と略奪・凌辱を開始する。

 猛禽は己の体内へ入り込み次々と発芽するそれらに対抗する術はなく、結局、内側で発生した膨大な圧力と暴力に耐え切れず爆散した。



 


 猛禽の破滅とともに、目の前の光景が消え始めていく。

 瞬きした次の瞬間には、もう元の楽園の光景が広がっている。


「しっかり見たでしょうね? あれが≪神代戦争≫よ。ちなみに前回の最終戦の記録映像」


「あれが……」


 あんな規格外なのに参加するって言うのか≪ボク≫が……


「本当にやれるのか? ボクなんかが……」


「ふん! あんたはこのあたしが選んだ、あたしの≪接続者≫なのよ? なら出来ないとは言わせない……てゆーか言ったらどうなるかわかってるんでしょうね?」



 大した自信だよ。勝手に選んで呼びつけて、こんな面倒で怖そうなことをさせようとする張本人が。

 ……でも、その台詞には≪ボク≫もそして自分さえも偽り疑うような響きはまるでない。本当に、≪ボク≫に出来ると信じているように。



「……勝ち進める保証なんて、ないからな?」


「安心なさい。絶対に勝たせてみせる。なんたってあんたのご主人さまですから! 下僕のフォローくらいはちゃんとするわよ」



 下僕ってところは決定済みなんだなぁ……

 でもまあ、不安は消えた……かな?



「それで? まずボクはなにをすればいいんだ?」


「戦争を始める前に色々準備することはあるけんだけど、まず真っ先にやるべきことがあるわ」


「やるべきこと?」


「戦争してる間のあたし達のホームになるべき所。つまり―――――本拠地作りよ!!」

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