進まない、進めない≪ボク≫
うん。
今回も駄文なんだ。
話しが進みません。
美少女(笑)こと《N》は、彼女曰く神なのだそうだ。
……いや、もちろん《ボク》だって最初から信じたわけじゃない。
誰だって、いきなり自分は神なのだ〜とか言われても、(は、なに言ってんの?)、(頭が可哀想なんだね)とか思うだろう?
だから《ボク》がなにか証拠はあるのかと聞いたのは決して間違ってはいないだろう。
……まあその後「じゃあこれが証拠ね」とか言って、《ボク》が中学から大学(つまりは今現在)まで書き溜めてた黒歴史……厨二病的な《アレ》を分厚いノートで、わざわざ編纂して晒された辺りから、彼女を(ほぼ強制的に)神だと認めるに至ったわけだが。
「ああ、ちなみに神と言っても邪神の類だと思っている。いや、常識的に考えて」
「だから悪かったって言ってるじゃない! いい加減いじけるの止めなさいよ!」
「だが断わる」
勝手に他人の黒歴史を暴くような奴は邪神と呼ばれても仕方ないと思う。
と言うわけで、《ボク》は現在、絶賛いじけ中だ……が。
……ズンッ!
「…………は?」
鈍い音と衝撃と共に《ボク》を中心に周囲およそ三メートルほどが《消失》した。
……あー、なんだろう、このジンギスカン鍋的な状態?
「いい加減にしろよ? この駄目人間」
「Yes、ma’am!!」
………うん、神さまに逆らうのは良くないよね! てか無理だ。
まあ、その後はわりとさくさく話が進んでいった。
《ボク》が下手なことを言わなくなったからだろう。ほぼ彼女《N》による独走状態で話しが進む。
……………およそ一時間後。
彼女の説明は正直な話し、一般人――それもただの学生でしかなかった《ボク》には小難しくて全てを理解するのは難しかった。
が、とりあえず分かったこと……《ボク》がある程度理解出来たことだけ、あらためて一度整理してみよう。
まず一つ目。≪N≫自身が語る、彼女という存在と、そして≪神≫というものの定義。
先程から彼女――≪N≫を神と言っているが、正確には少し違うらしい。
まず彼女のような存在を、彼女自身は≪創作者・クリエイター≫と言うらしい。安直だが分かりやすい。そして≪創作者・クリエイター≫が定義するところの≪神≫とは、全智全能をも超越する存在、ひいてはそれに準ずる存在を指すらしい。
≪神≫の定義にも感じることはあったが、それ以上に驚くべきは、彼女のような存在≪創作者・クリエイター≫は無数に存在していて、それぞれが独自の世界を創り見守っているらしい。
……正直≪N≫のような存在が他にもいることには、ある意味戦慄した。もちろん黒歴史の一件のことだけど。
二つ目は、≪ボク≫についてだった。
まず、どうして≪ボク≫が此処にいるのか。これに関しては≪N≫はただ一言だけ「お願いしたいことがある」の一点張りで、細かいことは教えてくれなかった。
……ああ、この話しの過程でもう一つ分かったことがあったんだった。
それは、この楽園の一つ前。黒の世界についてだ。
どうもあの世界(と言うか、こっちの世界も含めてだが)は、≪ボク≫が心の中で思う一番安心できる空間を≪N≫が具現化したものだったらしい。だとすればあの安堵感も当然のこと……なんだろうけど、黒の世界が一番安心できるって……引きこもりの気はないと思ってたんだけどなあ……。
蛇足だけど、いきなりあの世界が砕け散った理由は≪N≫の「なんだか辛気臭くって」ということだったらしい……それだけで世界一つ砕きますか。やっぱ邪神だ。
三つ目は、わりと個人的なものだ。つまりは――最初と口調変わってね? あと、なんでご主人さま発言?ってことについて。
最初の一つは簡単だった。「最初に威厳をもって威圧感を与えておけば楽になるかと思って」だそうだ……ふざけろ。
なんでやめたのって聞くと「あんたみたいなヘタレには無駄な威厳とかいらないかなーと思って」だそうだ……ヘタレですかそうですか。
色々言いたいことはあるがやめておく。≪ボク≫だって命は惜しいんだ。笑うなら笑え。
ご主人さま発言については、これもよく分からなかったが、どうも≪ボク≫は彼女が創った世界の中から独自の基準で選びぬかれた人間だそうだ。
≪N≫たちは≪接続者・コントラクター≫と呼ぶらしいそれは、簡単に言えば生命体としてのランクを数段階すっ飛ばして≪N≫たち≪創作者・クリエイター≫の直接的な下僕にするものらしい。てか下僕ってなんだ下僕って。
「下僕は下僕だし、あたしがご主人さまだっていう事実はなんら変わらないからどうでもいいでしょ? それともなに。なんか文句でもあるわけ?」
「むしろ文句しか……」
「黒歴史ばらすわよ(ぽそ)」
「なんなりとお命じくださいご主人サマー」
まあ、こんなだろうよ。
「それじゃま、そろそろあんたにしてもらうことを教えてあげようと思うわけだけど?」
「……やっとか」
前振りがいやに長かった。
読者も飽き飽きしてくるだろうに……読者って誰だ?
「あんたにしてもらうこと、それは……」
「……(ごく)」
……何となく、わかってたんだ。
前振りが長かったのは、偶然じゃない。わざとだってこと。
理由は知らない。
緊張させたくなかったから?
≪ボク≫を? あるいは……彼女自身が?
そんな考えが頭をよぎる……はは、厨二病乙かな? 妄想が過ぎる?
けどそんな考え今はどうでもいい。
そして、≪N≫が言葉を紡いだ。
「それは……創作者によって選ばれた代行たちによって行われる、たった三名のみを選出するためのバトルロワイヤル――――≪神代戦争≫よ」