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プロローグ

 黒だ……


 どこまでも続く黒。それが《ボク》が最初に認識したことだ。


 黒。黒。黒。

 本当になにもない……黒以外の色が(後から思ったことだが、色どころか、物質もこの時はなかったのかもしれない)なにもない世界。



「ああ……」



 そんな世界に《ボク》は不安を覚えるどころか、どこか懐かしい気分になってしまった。


 何故かは判らないけど、この感覚は……そう、幼い頃に母や父に抱かれた時のような、そんな《安堵感》だ。






「なんで…」


 なんでこんな所にいるんだろう?

 そんな当たり前のことに気がついたのは、ついこの黒い世界に浸ってから数分後のことだった。


 まず《ボク》がしたのは、《ボク》以外の人間が他にいないかだった。

 怖くはないとはいえ、流石に一人でずっとぽつんといるのは、思ったよりも心細い。


 まず《ボク》の視覚内に人がいないのはほぼ確定だろう。

 黒しか見えない……と言うか、視覚がきちんと機能しているかも怪しい。つい不安になって自分の手を見てみる……あった。自分の成人男性とは思えないか細い手のひらが普通に見えた。



「視覚は大丈夫、と……」


 となれば次は視覚外。

 自分の声はしっかり聴こえる以上、なにかしら声を張り上げれば他の人間が気づくかもしれない……もちろん、いることが前提になるわけだけど。



「………っ!」



 息を、これでもかと言うくらい吸って声を……



「……!?」



 ……張れなかった。いや、張ろうとして、それが出来なかった。

 まるで発声と言う機能を寸前で止められたかのように。



「なんで……」


(それは、あたしが望んだからよ)



 答えを期待してつぶやいたわけじゃない。

 が、《ボク》の疑問に答える、《ボク》以外の《誰か》の声。



「誰か……いるのか?」



 今度は、声は聞こえなかった。代わりに起こったのは……世界の《崩壊》

 ひび割れ砕けていく黒の世界だった。



「んな…っ!?」










 一体どれだけの時間がたっただろう。

 もの凄く長かった気もするし、はたまた一瞬の出来事のようにも感じたが。



「あ……」



 くらくらする頭を押さえながら見えたのは、先ほどまでの黒の世界とはまるで別物に変わった、新しい世界の姿だった。


 どこまでも広がる青空と思わず寝転びたくなるほどに咲き乱れる花々の絨毯……それはまるで《楽園》とでも呼べば良いのだろうか。

 およそ十人中十人が美しいと思うであろう光景がそこには広がっていた。



「君は……」



 だがそんな楽園の世界も、いま《ボク》が目にしているものに比べれば矮小なものだ。



 《ボク》の意識の総てを根こそぎ持っていったのは、花畑の中心……そこに佇む一人の少女だ。

 いや、訂正しよう。ただの少女じゃない。美少女だ。なんだか《ボク》が見ているのも申し訳なくなるほどの美少女がそこにいた。


 少女は、そんなボケッとした《ボク》の様子を気にする素振りも見せず、その可憐な唇を震わせる。









「よくぞ来たな我が代行! 我こそは汝が創造主にして唯一無二たる、貴様の《ご主人さま》である!!」







 ……訂正しよう。

 そこに居たのは美少女ではなく、美少女(笑)だった。


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