還らぬ海の呼び声
掲載日:2026/08/05
罪悪感が引き寄せる、終わらない悪夢へようこそ。
過去の過ちをやり直す機会なのか、それとも死者からの招待状なのか――。静かな波音の裏に潜む、戦慄の怪談をお楽しみください。
夜の海岸。寄せては返す波の谷間から、不気味な声が響いていた。
「こっちに来い……こっちに来い……」
それは、あの日見殺しにした友人の声だった。助けることができたのに、私は恐怖に足がすくみ、ただ波に飲まれていく姿を眺めていたのだ。罪悪感に押しつぶされそうになったその時、足元の砂が崩れ、私は暗い海へと引きずり込まれた。
もがきながら目を開けると、眩しい太陽の光が目に飛び込んできた。目の前には、あの日と同じ、溺れかけて必死に手を伸ばす友人の姿があった。
波の谷間から、あの声が再び響く。
「こっちに来い」
【了】
本編をお読みいただき、ありがとうございました。
忘れられない過去の過ちや、胸の奥に燻る罪悪感。誰しもが抱えるかもしれない「もしもあの時……」という思いをテーマに、波音と怪談を掛け合わせた物語をお届けしました。
人は許しを求めて過去を振り返りますが、一度解き放たれた悪夢は、二度と手を離してくれないのかもしれません。
潮風の冷たさと耳から離れない波の音を、少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。どうか今夜は、穏やかな夢が見られますように。




