表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

異世界恋愛系 作品いろいろ

私は私の好きを貫いて生きていくつもりです!〜ハッピーエンドに出会うまで〜

作者: 四季
掲載日:2026/05/20

 子ども時代から女でありながら薬草が好きだった私は、周囲からあれこれ言われることもあったがあまり気にせず育ち、やがて薬草の研究に打ち込むようになっていった。

 そんな私を人は変わり者だとか変だとか言っていたけれど、それでも私は自分が愛する道を手放したくはなかったので、ただひたすらに自分の好きを貫いた。


 学園を卒業する頃、そんな私にも婚約者ができる。

 彼の名はアンバーダー。

 同じ学園に通っていた同学年の男子生徒であった彼から「前から好きでした、結婚してください」と言われ、二人の関係はそこから始まったのだ。


「あの娘、まだ薬草の研究とかしてるのね……」

「変わってるわ」

「女の子なら興味を持つべきはおしゃれでしょ。なのに薬草とか、あり得ないわね」

「髪は綺麗なのに惜しいですわよね……」


 ひそひそ言われることもあるけれど、そんなことはどうでもいい。

 それより今は好きなものをより深く知りたくて。だから研究の道を歩んでゆくと決めている。それが私の選んだ道、私の決断だ。


 ……そんなある日。


「アリサ、急に呼び出してごめんな」

「いえ」

「実は、話があるんだ」

「そうなの? 何かしら」


 婚約者アンバーダーに呼び出されたと思ったら。


「君との婚約だけど、破棄とさせてもらうよ」


 そんなことを告げられて。


「え……」

「急でごめん、でもこれは絶対的な決定だから」


 ただ戸惑うことしかできない。


『前から好きでした、結婚してください』


 あの時の彼の言葉が蘇る。


 あれは一体何だったのか?

 まさか一時の気の迷いだったのか?


 ……私にはよく分からない。


 ただ、今の彼はもう私を想ってはいない、それだけは確かな事実だということなのだろう。


「やっぱりさ……年頃になっても研究とかしてる女性はちょっとね」

「今さらそれを言うの?」

「うん。……ごめん、でも、本当に無理なんだ。女性なら女性らしくないと。……そういうことだから、さよなら」


 アンバーダーは、控えめな調子で、しかしながらはっきりと別れを告げてきたのだった。


 こうして私たちの関係は終わった。



 ◆



 アンバーダーとの婚約が思わぬ形で破棄となってしまったために自分の時間が増加した。だが、だからといって何か新しいことを始めるわけでもない。なのでその空いた時間は必然的に研究に費やすこととなる。婚約破棄によって、より一層研究に没頭するようになっていったのである。


「書類、お持ちしました!」

「ありがとう」

「あと、先日仰っていた件なのですが……」

「草の調達の件ね」

「はい! 明日には届きそうです!」

「分かった、ありがとう」


 近頃は共に研究している青年ラズールと仲良くなっている。

 彼は私より二つ年下。

 真っ直ぐで、誠実で、真面目だけれど堅物なわけではない、そんなところが魅力的な人だ。


「そういえばアリサさん、ここのデータについて確認させていただきたいのですが」

「はいはい」

「これってこういう感じで良いのでしょうか?」

「いいんじゃないかしら」

「そうですか! 分かりました、ありがとうございます!」


 ラズールもまた大の薬草好き。

 知識も豊富だ。

 なので、彼と薬草についての話をする時間は純粋に楽しい。


「アリサさん、飲み物どうぞ」

「あっ、これは……!」

「この前教えていただいた淹れ方で淹れたハーブティーです」

「もうマスターしたの? 器用ね」

「美味しいかどうかは分かりませんが、よければぜひ一度飲んでみてください」

「ありがとう、いただくわ」


 彼の前では私は変わり者ではない。

 好きなものを好きと言っても、語りたいことを語っても、すべて自由だ。


「美味しい!」

「本当ですか!?」

「ええ、とっても。苦みがしっかり出ているところも素敵だわ、香りもいいし、最高の出来よ」

「良かった! すごく嬉しいです!」



 ◆



 最高の研究仲間だった私たちは、十年ほどの研究期間を経て、結婚した。


 それでも研究の道が終わったわけではない。

 結婚とそれとはまた別の話だから。

 私はこれからも薬草についての研究を続けるつもりでいるし、ラズールや周囲の人たちも理解を示してくれている。


 行けるところまで行こう。

 そんな決意で、これからもこの道を行く。


「ラズール、これ運んでもらっていい?」

「もちろん!」

「じゃあよろしくね、私はこっちを運ぶから」

「重かったらそこに置いておいてください!」

「はーい」


 私たちの日々は続いていく。


「薬草、良い状態で届いてるわね」

「本当ですか!」

「この前みたいに変にしなしなになってるかと思ったけど、今回は成功ね」

「良かったです!」

「じゃ、葉を切り分けましょ」

「はい!」


 変わったような、変わっていないような、そんな日常。

 でもそれはとても幸せなもの。

 穏やかな温もり、という言葉が似合うような毎日は、とても尊いものだ。


 ……ちなみにアンバーダーはというと、私との婚約を破棄してから半年ほどで別の女性と婚約したそうだが気の迷いからか浮気してしまい、婚約破棄されたうえ高額な慰謝料を支払わされたそうだ。


 加えて、これまでの悪しき行動を言いふらされてしまったそうで。

 それによって彼は社会的にかなり厳しい状況に追い込まれてしまったようである。



◆終わり◆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
自分の好きなことを好きと言って、語りたいことを自由に語れる関係、素敵ですね。 ラズールの前では、アリサは変わり者ではなく、アリサとして自然にいられて。素敵な作品を読ませていただき、ありがとうございま…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ