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異世界極悪レスラー〜感謝されると即死するので、全力でヒール(悪役)を演じてたら世界最強の魔王としてバズっていた件〜  作者: 早野 茂
【第1章】異世界リングイン!〜姫騎士とドラゴンの洗礼〜

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第9話:最近の若者は「痛み(リスク)」を知らねぇ

「教育的指導だ、小僧ォ!!」

轟田の丸太のような腕が唸りを上げた。

ラリアット。

直撃すれば大木をもへし折る一撃がレオの小さな頭を狙う。

だが。

「……遅い」

レオは欠伸混じりに呟くと最小限の動きで首を傾けた。

ブンッ!!

剛腕が空を切り、突風だけがレオの髪を揺らす。

「大振りすぎんだよ。予備動作テイクバックがデカすぎて、攻撃が来るのが三秒前からバレバレだぜ?」

レオは轟田の腕を足場にして、ヒョイと宙に舞った。

身軽だ。

まるで猫のような体捌きで、轟田の背後に着地する。

「お返し」

ドスッ。

レオの短剣だがの柄が、轟田の膝裏を叩いた。

関節の隙間を突く、的確な一撃。

「むっ……!?」

「はい、バランス崩れた。――じゃあね」

轟田がたたらを踏む隙にレオは路地裏の奥へと駆け出した。

その速さは尋常ではない。

壁を蹴り、障害物を飛び越え、またたく間に距離を開けていく。

「オイオイ、待てよクソガキ!鬼ごっこはこれからだろ!」「

付き合ってらんねーよ。時間の無駄(タイパ最悪)だ」

レオは振り返りもせずに中指を立てた。

轟田は舌打ちしそれを追う。

「轟田!深追いしちゃダメよ!」

アリスが背後から叫ぶが轟田の耳には届かない。

彼のプライドが刺激されていたからだ。

(……チッ。なんだ今の動きは)

轟田は走りながら分析した。

パワーはない。

殺気もない。

だが徹底的に「無駄」がない。

俺の攻撃を「避ける」のではなく「当たらない場所に移動している」だけ。

熱さのカケラもない、氷のように醒めた動きだ。

《侮蔑(冷笑)を確認。敏捷性上昇(中)》

「面白ぇ……。そのすかしたツラ、恐怖で歪ませてやるぜ!」

轟田の脚力が上がる。

路地裏の木箱を粉砕しながら、猛スピードでレオを追跡する。



路地裏の奥、行き止まりの広場。

レオはそこで足を止めていた。

「しつけぇな、おっさん。心肺機能どうなってんだよ」

追いついた轟田が、肩で息をすることもなく仁王立ちする。

「ハッ!逃げ場はねぇぞ。観念して俺様の説教を聞きやがれ」

「逃げ場?……バーカ。ここは俺の『狩りホーム』だよ」

レオがニヤリと笑い、指をパチンと鳴らした。

瞬間。

轟田の足元の石畳が光った。

「あ?」

ボォォォォォンッ!!!

爆発魔法陣トラップ

閃光と煙が轟田を飲み込む。

さらにレオは左右の壁に仕掛けていたロープを切断した。

ガラガラガラッ!

屋根の上から大量のレンガや廃材が崩落し轟田の上に降り注ぐ。

「よし、完璧」

レオは満足げに頷いた。

真正面から戦うなんて馬鹿のすることだ。

地形を利用し、罠を張り、相手を誘導して指一本触れずに勝つ。

これが「スマート」な戦い方だ。

「アンタの負けだ、過去の遺物さん。……ま、頑丈そうだし死にはしないだろ」

レオが踵を返そうとした、その時。

「……おいおい」

土煙の中から、低く、ドスの効いた声が響いた。

「これがテメェの『スマート』か?……笑わせんじゃねぇぞ」

「え?」

レオが振り返る。

煙が晴れると、そこには瓦礫の山に埋もれた轟田……ではなく、瓦礫を弾き飛ばして無傷で立つ轟田の姿があった。

いや、無傷ではない。

服(というか肌)は煤で汚れ、額からは血が流れている。

だがその表情は――最高に「不機嫌」だった。

「罠?爆発?……そんなチマチマした仕掛けで、客が沸くとでも思ってんのか?」

「は、はあ!?勝てばいいだろ!効率の問題だよ!」

「効率だァ?バカ野郎!」

轟田が一歩踏み出す。

そのプレッシャーにレオの本能が警鐘を鳴らした。

逃げろ。

こいつはヤバい。

「プロレスってのはなァ……あえて技を受けて!耐えて!その上で勝つからカッコいいんだろうがァッ!!」

轟田が吠えた。

理屈ではない。

「避ける」「罠にかける」という効率主義への、根源的な否定。

レオの「小賢しさ」に対するイラつきが、轟田のヒール・ヒートを爆発させる。

《侮蔑(価値観の相違)を確認。全ステータス上昇(大)!》

「来るなっ!」

レオは短剣を投げた。

轟田は避けない。

額で受け止めた。

カィンッ!と乾いた音がして、短剣が弾かれる。

「なっ……!?」

「痛み(リスク)を恐れる奴に、俺様は倒せねぇ!」

轟田の姿が消えた。

圧倒的な加速。

レオが反応する間もなく、轟田の巨大な掌がレオの顔面を鷲掴みにした。

「捕まえたぜ、クソガキ」

「ぐっ、放せ……!」

レオが手足をバタつかせるが、轟田の腕は万力のように動かない。

轟田はレオを持ち上げ、ニヤリと笑った。

「教育的時間だ。……テメェのその腐った性根、俺様の筋肉で叩き直してやる」

「や、やめろ!暴力反対!コンプライアンス的に……!」

「ここは異世界だ。コンプラなんざ知ったことかァ!」

轟田はレオの首を小脇に抱え込んだ。

プロレスの基本技、ヘッドロック。

だが轟田の剛腕で締め上げれば、それは万力地獄アイアン・メイデンと化す。

「ギブアップしろ!『参りました、時代遅れ(ロートル)最高です』って言え!」

「い、言えるか!ぐぐぐ……く、苦じい……!」

レオの顔が真っ赤になる。

そこに、遅れて到着したアリスが息を切らして現れた。

「はぁ、はぁ……轟田!子供相手に何やってるのよ!」

「おうアリス、見てみろ!こいつの根性を矯正してるところだ!」

「矯正って……完全に虐待じゃない!」

アリスが止めに入ろうとするが轟田は手を緩めない。

だが殺すつもりもない。

レオの「効率主義」は気に入らないが、そのスピードと躊躇なく罠を使う度胸。

そして何より自分を全く恐れないその「生意気さ」は――

(……悪くねぇ素質ソウルだ)

轟田はヘッドロックをかけたままもがくレオに囁いた。

「おい小僧。テメェ、いい目をしてやがるな」

「……は?」

「俺様の動きが見えていたな?それにあの罠のタイミングも悪くなかった。……パワー不足だがセンスはある」

予想外の言葉に、レオの動きが止まった。

轟田はニカっと笑い、腕の力を少しだけ緩めた。

「どうだ?俺様の弟子(付き人)にならねぇか?」

「……はあ!?」

レオが裏返った声を上げる。

アリスも目を丸くした。

「弟子って……轟田、本気なの?」

「おうよ。こいつのスピードと小賢しさは俺様のパワーと相性がいい。それに――」

轟田はレオの顔を覗き込んだ。

「俺様をここまでコケにした奴は久しぶりだ。その生意気な減らず口、俺の側で毎日聞かせろ。最高のBGM(燃料)になる」

「ふ、ふざけんな!誰があんたみたいな脳筋の……!」

レオが反論しようとした時。

路地裏の入り口からゾロゾロと男たちが現れた。

手には武器。目つきの悪いどう見てもカタギではない連中だ。

「おいおい、随分と派手にやってくれたな」

リーダー格の男が壊された罠や木箱を見て舌打ちした。

「ここらがウチのシマだって知ってて暴れたのか?……落とし前、つけてもらおうか」

街のゴロツキか、あるいは裏組織の人間か。

レオの顔色が変わる。

「チッ、野次馬ハイエナが来たか……。おいおっさん、放せ。俺一人で逃げるならまだ間に合う」

「逃げる?」

轟田はヘッドロックを解きレオを地面に下ろした。

そして男たちの前に立ちはだかるように一歩踏み出した。

「カッカッカ!効率厨のガキはこれだから困る」

「な……?」

「ヒールってのはな、売られた喧嘩は『利子をつけて』買うもんなんだよ!」

轟田は男たちに向かって中指を立てた。

レオが呆然と見上げる中、轟田の背中が大きく、熱く見えた。

「さあ、課外授業だクソガキ!俺様の背中を見て勉強しな!」


(第10話へ続く)

効率vsロマン。

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