表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界極悪レスラー〜感謝されると即死するので、全力でヒール(悪役)を演じてたら世界最強の魔王としてバズっていた件〜  作者: 早野 茂
【第1章】異世界リングイン!〜姫騎士とドラゴンの洗礼〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/34

第7話:メインイベント:王都粉砕(サタン・メテオ)

大気が悲鳴を上げている。

轟田猛と古龍。

二つの規格外の存在が対峙した空間は重力さえ歪んだかのようなプレッシャーに満ちていた。

『……人間ごときが。我と同等の覇気を放つだと?』

古龍の黄金の瞳が僅かに細められた。

目の前の小男からは先程までの矮小な気配が消え失せている。

代わりに渦巻いているのは数万人分の「怒り」と「殺意」を煮詰めた、どす黒い灼熱のエネルギーだ。

「カッカッカ!ビビってんのか、トカゲ野郎」

轟田は真っ赤に発光する胸板を叩いた。

「今の俺様には、王都中の『死んでしまえ』という熱い声援カースが詰まってる。テメェ一匹の殺意なんぞ、そよ風みてぇなもんだぜ!」

さえずるなッ!!』

古龍が激昂した。

巨大な前脚が振り下ろされる。

音速を超え衝撃波だけで石造りの建物を粉砕する一撃。

轟田は避けない。

ニヤリと笑い一歩踏み込んで――右腕を振り上げた。

「ラリアットォッ!!」

ドッッッゴォォォォォンッ!!!

肉と肉の衝突音が爆発音のように響き渡る。

轟田の腕が古龍の前脚と激突した。

一瞬の拮抗。

だが弾かれたのは――古龍の方だった。

『ヌ、グゥッ……!?』

数千トンの巨体がたった一人の人間の腕力で後方へよろめく。

あり得ない光景に罵声を浴びせていた市民たちの喉が引きつった。

「う、嘘だろ……」

「あの化け物を押し返した……?」

轟田は追撃の手を緩めない。

よろめく古龍の懐に潜り込みその鋼鉄のような鱗に覆われた腹部に拳の連打を叩き込む。

「オラオラオラオラァッ!!ボディがガラ空きだぜェ!!」

ドガガガガガガッ!!

拳が当たるたびに衝撃波が突き抜け、古龍の巨体が風船のように弾む。

鱗が砕け、黒い血が飛び散る。

『お、のれェェッ……虫ケラがあああッ!!』

古龍が咆哮し翼を広げて空へ舞い上がった。

地上戦では不利と悟ったのだ。

遥か上空雲を見下ろす高度まで一気に上昇する。

「あ、逃げた!」

「卑怯だぞ!」

市民たちが空を指差して叫ぶ。

『愚かな。地を這う蟻が天空の覇者に届くと思うか』

古龍の口元に太陽のような光が収束していく。

極大ブレス。

王都全域を焦土に変えるつもりだ。

誰もが絶望した。

だが轟田だけは楽しそうに笑っていた。

「高い高い(ハイフライ)か。……悪くねぇ演出だ」

轟田は深く腰を落とした。

全身の筋肉が軋みを上げ、石畳が蜘蛛の巣状に砕けていく。

「アリス!」

「な、何!?」

轟田は瓦礫の影にいたマネージャーへ叫んだ。

「よく見ておけ!これが『一番高い席』にいる客へのファンサービスだ!」

ドォォォォォォォォンッ!!!

轟田の姿が消えた。

いや、違う。

ロケットのように垂直に跳躍したのだ。

衝撃で周囲の建物が倒壊するほどの脚力。

轟田の体は音速を突破し、一直線に古龍へと迫る。

『なッ!?飛ん――!?』

古龍がブレスを放つ暇もなかった。

空中で轟田が古龍の顎をカチ上げ、その長い首をガッチリとホールドした。

「捕まえたぜ」

轟田は空中で体勢を入れ替える。

古龍の巨体を逆さまにし、その首を自分の脇に抱え込む。

垂直落下式ブレーンバスター(バーティカル・スープレックス)の体勢。

「おいトカゲ。知ってるか?」

『は、離せ……!貴様、正気か!?』

「重力ってのはな、重い奴ほど愛してくれるんだよォッ!!」

轟田は全身の筋肉を逆噴射させ、回転を加えながら急降下を開始した。

標的は、王都の中央広場。

『や、やめろオオオオオオッ!!!』

古龍の悲鳴が風にかき消される。

隕石と化した一人と一匹が、大気圏突入のような摩擦熱を纏って落下していく。

「砕け散れェッ!サタン・メテオ・バスターッ!!!!」

ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!!!

王都が揺れた。

比喩ではない。

直下型地震のような衝撃が全土を襲った。

中央広場を中心に巨大なクレーターが生まれ、土煙がキノコ雲のように舞い上がる。

静寂。

瓦礫の山となった広場で、砂埃が晴れていく。

そこには――首があらぬ方向に折れ、白目を剥いてピクリとも動かない古龍と、その上に片足で立ち、両手を広げる轟田の姿があった。

「…………」

生き残った市民たち、騎士たちが、恐る恐る顔を出す。

圧倒的な光景に、言葉が出ない。

だが次第に理解が追いついてくる。

助かったのだ。

あの化け物が倒されたのだ。

「す、すげぇ……」

「勝った……勝ったぞぉぉぉッ!!」

「英雄だ!救世主様だ!」

ワァァァァァァァァッ!!!

歓声が爆発した。

先ほどまでの罵声はどこへやら。

人々は涙を流し、轟田を称え始めた。

騎士たちが敬礼し、子供たちが駆け寄ろうとする。

――ドクンッ!!

轟田の心臓が、早鐘を打った。

視界が明滅する。

(チッ……!やっぱこうなるか!)

HPバーが一気に減少を始める。

数万人規模の「感謝」。これは劇薬だ。

一秒でも長く浴びれば、間違いなく死ぬ。

だが轟田は焦らなかった。

この展開あやまちは、最初の竜退治で経験済みだ。

「……アリス!!」

轟田が叫ぶより早く銀髪の少女が瓦礫の上に飛び出した。

「お待ちなさい!愚民ども!」

アリス・ミストラルだ。

彼女は王家の紋章が入ったマントを翻し、歓喜に沸く市民たちを一喝した。

「喜ぶのは早いわ!この男が何のために戦ったと思っているの!?」

「え……?そりゃあ、俺たちを助けるために……」

「違うわ!」

アリスは、倒れた古龍と、半壊した王都を指差した。

「この男はね、この王都を『自分の所有物』だと宣言したのよ!だから自分の所有物を壊した竜を排除しただけ!助けたわけじゃないわ!」

市民たちがざわめく。

そこに、轟田が畳み掛ける。

彼は血の気を失いかけた顔を隠し、精一杯の悪役面を作って吠えた。

「カッカッカ!その通りだ!勘違いすんなよ家畜共!」

轟田は倒した古龍の頭を踏みつけ、さらに広場の惨状を見渡した。

「見ろ、この瓦礫の山を!俺様のリング(王都)がボロボロじゃねぇか!おい、そこの騎士団長代理!」

「は、はい!?」

名指しされた騎士が直立不動になる。

「テメェらが弱っちいせいで、俺様が骨を折る羽目になったんだ。……修理代と、慰謝料。そして俺様への『興行出演料』。きっちり払ってもらうぞ?」

「え、ええと……おいくらでしょうか……?」

「そうだな。……王都の国家予算、三年分ってとこか?」

「さ、三年分ッ!?」

空気が凍りついた。

国家予算三年分。

それはつまり国が破綻することを意味する。

市民たちの顔から血の気が引く。

「は、払えるわけがない!」

「あんた、国を潰す気か!」

「知ったことか!払えねぇなら、テメェら全員、俺様の奴隷として死ぬまでタダ働きさせてやるよ!」

轟田はニヤリと笑いアリスに目配せした。

アリスが頷く。

「聞いたでしょう!?この男は本気よ!この国の人間を全員奴隷にして、魔王軍に売り飛ばすつもりなんだわ!」

「な、なんて奴だ……!」

「古龍よりタチが悪いぞ!」

「悪魔め!出ていけ!」

石が飛んできた。

歓声は一瞬で罵声に変わり感謝の涙は憎悪の眼差しへと変貌した。

轟田の胸の痛みが引き力が戻ってくる。

(ふぅ……。危ねぇところだった)

轟田は内心で冷や汗を拭いながら表面上は不快そうに鼻を鳴らした。

「チッ。貧乏人共が。金がねぇなら用はねぇ。……アリス、行くぞ。こんなシケた国、居るだけで価値が下がる」

「ええ、そうね。行きましょう、ご主人様オーナー

二人は石と罵声を背中に浴びながら悠然と王都の門へと歩き出した。

背後では「二度と来るな!」「疫病神!」というシュプレヒコールが起きている。

門を出て人目がなくなった瞬間。

轟田はその場にドカッと座り込んだ。

「……ハァーッ!死ぬかと思った……」

「もう、無茶苦茶よ貴方は!」

アリスが呆れたように、しかし安堵の表情で駆け寄ってくる。

「国家予算三年分なんて、よく思いついたわね。本気にされたらどうするつもりだったの?」

「ハッ、その時は貰えるもんだけ貰ってトンズラよ」

轟田は笑い飛ばしたがその瞳は満足げだった。

王都は守られた。

古龍は倒された。

そして轟田猛は誰からも感謝されず最強のヒールとして名を上げた。

完璧な結末フィニッシュだ。

「さて……次はどこのどいつを煽りに行くかな」

轟田は立ち上がりニカっと笑った。

その背中をアリスは少しだけ眩しそうに見つめていた。


(第8話へ続く)

サタン・メテオ炸裂!王都を救った(?)彼への報酬として、評価やブクマを頂けると轟田が吠えます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ