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異世界極悪レスラー〜感謝されると即死するので、全力でヒール(悪役)を演じてたら世界最強の魔王としてバズっていた件〜  作者: 早野 茂
【第1章】異世界リングイン!〜姫騎士とドラゴンの洗礼〜

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第6話:前座(ジョバー)は引っ込んでな

空が燃えていた。

夕暮れの赤ではない。

粘り着くような魔力の炎が、王都の空をどす黒く塗り替えているのだ。

ヒュオオオオオオオッ――ドォォォォンッ!!

上空から降り注ぐ火球が、石造りの時計塔を粉砕した。

破片が降り注ぎ、逃げ惑う人々の悲鳴が木霊する。

「な、なんだアレは……!」

古龍エンシェント・ドラゴンだ!伝説級の化け物がなんで王都に!?」

ギルドから飛び出した冒険者たちが、空を見上げて絶望の声を上げた。

その視線の先。

王都の上空に、悪夢のような巨体が浮かんでいた。

翼長五十メートル。

全身を覆う漆黒の鱗。

その口からは絶え間なく灼熱のブレスが漏れ出している。

先日轟田が倒した竜とは格が違う。

あれが「小兵」に見えるほどの、圧倒的な質量と威圧感。

「……なるほど。前回の奴は、ただの斥候スカウトだったってわけか」

轟田は腕組みをして崩れ落ちる街並みを眺めた。

冷静だ。

プロレス興行において、メインイベントの前に前座試合が組まれるのは定石。

ボスが登場するなら、相応の演出ハカイが必要だということだ。

「轟田!悠長なこと言ってる場合じゃないわ!」

アリスが血相を変えて叫んだ。

彼女の視線は、炎上する大通りに向けられている。

「あそこ!騎士団が展開しているわ!でも……」

大通りでは、銀色の鎧を纏った王立騎士団が陣形を組んでいた。

数百人の魔導師と弓兵が一斉に攻撃を放つ。

だが古龍は羽虫でも払うように翼を一振りしただけで、その全てを無効化した。

『――脆弱ぜいじゃく

脳に直接響くような、重厚な念話。

古龍が口を開いた。

『我が眷属を屠った報いだ。人間共よ、灰となって償うがいい』

ゴオオオオオオッ!!!

極大のブレスが騎士団を襲った。

結界魔法が一瞬で破られ、最前列にいた騎士たちが鎧ごと溶解する。

「ぐああああああ!!」

「ひ、退けッ!勝てる相手じゃない!」

戦線崩壊。

誇り高き王立騎士団が蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う。

その光景を見たアリスが唇を噛み締めて一歩踏み出した。

「……行かなきゃ」

「おい。死にに行くのか?」

「かつての部下たちが死んでいるのよ!私だけ見ているなんてできない!」

アリスの手が震えている。

武器もない。

魔力も枯渇気味だ。

行けば確実に死ぬ。

だが轟田は彼女を止めなかった。

代わりにつまらなそうに鼻を鳴らした。

「行っても無駄だ。あいつらはもう『負けジョバー』の顔をしてる。お前が加わったところで、死体の数が増えるだけだぜ」

「っ……!じゃあどうすればいいのよ!貴方は……貴方の力なら!」

アリスが轟田の胸倉を掴み涙目で訴える。

「お願い……助けて……!」

その言葉が出た瞬間轟田の表情がスッと冷えた。

「『助けて』だァ?聞き捨てならねぇな、マネージャー」

轟田はアリスの手を乱暴に振り払った。

「俺は正義の味方じゃねぇ。他人のために命を張る趣味もねぇ。……勘違いすんなよ?」

「ご、轟田……?」

突き放されたアリスが絶望しかけたその時だ。

轟田はニヤリと、凶悪な笑みを浮かべて古龍を指差した。

「だがな……『俺様の会場シマ』で、デカい顔をしてる新入りは気に入らねぇ」

「え……?」

「あのトカゲ、俺より目立ってやがるだろ?それがムカつくんだよ。主役トップは俺様だ」

轟田はボキボキと首を鳴らした。

理屈などない。

ただの自己顕示欲。

ヒールのプライド。

だがアリスはその言葉の裏にある「意図」を瞬時に理解した。

(……そうか。正義のためじゃ、戦えないから!)

アリスは涙を拭い即座に「マネージャー」の顔に戻った。

「……そうね。あんな田舎トカゲにでかい顔をされて、黙っているなんて三流悪役のすることだわ!」

「そうだ。俺様は一流だ」

「行ってきなさい、轟田!あの観客のーなしたちに、誰が本当のキングか教えてやるのよ!」

「イエス・マイ・ボス(御意、女主人)!」

轟田が地面を蹴った。

砲弾のように飛び出し戦場へと雪崩れ込む。



大通りは地獄絵図だった。

瓦礫に埋もれる騎士。

逃げ遅れた市民。

古龍がゆっくりと降下しトドメの一撃を放とうとしている。

「お、終わりだ……」

「神よ……」

騎士の一人が剣を取り落とし膝をついて祈り始めた。

絶望。

諦め。

その空気が最高潮に達した瞬間――

ドッッゴォォォォォンッ!!!

横合いから飛んできた「何か」が祈っていた騎士を真横に吹き飛ばした。

「ぐべぇっ!?」

騎士が壁に激突して気絶する。

彼が元いた場所――そこには、黒パンツ一丁の巨漢が着地していた。

「あーあ。神頼みなんざしてるから、罰が当たったんじゃねぇのか?」

轟田猛は、砂埃を払いながら立ち上がった。

戦場に似つかわしくない、あまりに場違いな軽装。

騎士たちも、市民も、そして古龍さえもが動きを止めた。

「な、なんだ貴様は!?」

「我らが騎士団長(代理)を蹴り飛ばしただと!?」

騎士たちが怒りの声を上げる。

轟田は(助けてやったのに)文句を言う彼らを見下ろし鼻で笑った。

「うるせぇよ雑魚ども。テメェらのダンスは退屈なんだよ。さっさと舞台袖に引っ込んでな」

轟田は騎士たちに背を向け悠然と古龍の方へ歩き出した。

圧倒的な無視。

その態度は古龍のプライドを逆撫でするに十分だった。

『……人間風情が。我を無視するか』

古龍の眼光が轟田に向けられる。

並の人間ならそのプレッシャーだけでショック死するほどの殺気。

だが轟田は楽しそうに笑っていた。

「よォ、トカゲ。デカい図体して、弱いものいじめか?随分と安いプライドだな」

『……死ね』

古龍が鋭い爪を振り上げた。

音速を超える一撃。

誰もが轟田の死を確信した。

――ガギィィィンッ!!

金属音が響き、火花が散った。

轟田は、頭上に掲げた左腕一本で、その爪を受け止めていた。

「なッ……!?」

『……ほう?』

轟田の腕から血が流れる。

だが轟田の口元は笑っていた。

「へっ……。痛ぇな。流石に『素の状態』じゃ、ちっとは食らうか」

轟田はチラリと背後を見た。

そこには、わけがわからず呆然としている騎士や市民たちがいる。

彼らの感情はまだ「混乱」だ。

これじゃあ足りない。

このバカげたスペックの怪物を倒すには、もっと強烈な、純度100%の「燃料」が必要だ。

轟田は古龍の爪を弾き返し大きく息を吸い込んだ。

そして戦場全体に響き渡る大音声で叫んだ。

「おい、王都のゴミ共ォッ!!いつまで寝ボケてんだァ!!」

ビクリと数千人の肩が震えた。

「テメェらの国が燃えてんだぞ?騎士様が負けて、トカゲにビビって、それで終わりか?ええ!?」

轟田は瓦礫の下敷きになって泣いている子供を指差した。

「おいガキ!泣けば助かると思ってんのか?甘えんじゃねぇ!悔しかったら石の一つでも投げてみろ!」

さらにへたり込んでいる騎士たちを睨みつける。

「税金泥棒の騎士様もだ!剣が折れたら戦えねぇのか?鎧が壊れたら終わりか?だったらその鎧、俺様に寄越せ!鉄屑として売ってやるからよォ!」

沈黙。

そして――爆発。

「ふ、ふざけるなよ貴様ァ!!」

「誰が税金泥棒だ!」

「この状況で何を言っているんだ!」

絶望が怒りに変わる。

恐怖で動けなくなっていた人々の心、猛烈な「反骨心」が宿る。

罵声が飛ぶ。

殺気が集まる。

轟田の体が熱くなる。

《王都規模の敵対感情を確認。全ステータス上昇(極大)》

轟田の全身が赤く発光し筋肉が鎧のように膨れ上がった。

傷が瞬時に塞がり溢れ出るオーラが陽炎のように揺らめく。

「カッカッカ!そうだ、それでいい!俺を睨め!俺を憎め!その『熱』こそが、この冷え切った戦場には必要なんだよォッ!!」

轟田は古龍に向き直り、バチバチと音を立てる拳を構えた。

「待たせたな、メインイベントだ。……さあ、ダンス(殺し合い)といこうぜ?」


(第7話へ続く)

前座の古龍戦。

メインイベントへの期待を込めて、下の【☆☆☆☆☆】を叩き込んでやってください!

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