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異世界極悪レスラー〜感謝されると即死するので、全力でヒール(悪役)を演じてたら世界最強の魔王としてバズっていた件〜  作者: 早野 茂
【第4章】黄金都市のデスマッチ〜カジノ王と潔癖聖女の終焉〜

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34/35

第34話:悪役(ヒール)だらけの狂宴

カジノ・タワー崩壊から一夜が明けた。

瓦礫と化した地下闘技場跡地には、朝からヒステリックな機械音が響き渡っていた。

キュイィィィィィィン!!!

ゴアァァァァァァッ!!!

「汚い汚い汚い!ここも!あそこも!塵一つ残さず滅却します!」

マリアが背中の翼(清掃兵装)をフル稼働させ、瓦礫の山を猛スピードで「分別」している。

燃えるゴミ(木材)は焼却。

燃えないゴミ(鉄骨)は圧縮。

そして有機物(敵の死体や生ゴミ)は、高濃度の聖水で消滅させる。

その手際は、職人芸を通り越して「災害」に近かった。

「……なぁ、アリス」

轟田は瓦礫の上に座り、ワイン(昨夜の残り)を飲みながら呟いた。

「あいつ、放っといて大丈夫か?街ごと更地にしそうな勢いだぞ」

「……止められるなら止めてみなさいよ。今のあの子、ランナーズハイに入ってるわ」

アリスが遠い目で答える。

彼女の手には、大量の胃薬が握られていた。

「おっさんおっさん!見てこれ!」

そこへ、ミミが金貨の詰まった袋を引きずって戻ってきた。

顔も服も煤だらけだが目は¥マークになっている。

「瓦礫の下から金庫見つけた!これだけあれば、タピオカ一生分飲めるし!」

「お、でかしたぞ泥棒猫!半分は俺様の『ショバ代』として徴収するがな」

「はぁ!?意味わかんないし!キモい!死ね!」

《侮蔑(守銭奴への嫌悪)を確認。……金運上昇(小)》

「……分析終了」

セレンが瓦礫の陰から現れ、分厚い手帳を閉じた。

「マリアの清掃兵装、およびミミの探索能力。……非常に合理的です。このメンバーなら、魔王城への侵入ルート確保も容易でしょう」

「おいおい天才サマ。俺様を『移動手段』の一部として計算してんじゃねぇよ」

「事実です。あなたの筋肉は、最高の『ミートシールド』ですから」

《侮蔑(道具扱い)を確認。……防御力上昇(中)》

「……はぁ」

アリスが深いため息をついた。

「泥棒に、マッドサイエンティストに、潔癖症の狂人……。まともなのが私とレオしかいないじゃない」

「俺を一緒にすんなよ」

レオが短剣の手入れをしながら口を挟む。

「俺はあくまで、こいつ(轟田)がくたばる瞬間を見届けるために居るだけだ。仲間じゃねぇよ。……まあ、介護くらいはしてやるけど」

《侮蔑(老人扱い)を確認。……敏捷性上昇(小)》

轟田はニカっと笑い、全員を見回した。

姫騎士、弟子、魔導師、盗賊、聖女。

職種も性格もバラバラ。

共通点はただ一つ――全員が轟田猛に対して「強烈な文句(感情)」を持っていることだ。

(……最高の環境じゃねぇか)

轟田は震えた。

ツンデレ、反抗期、論理的否定、生理的嫌悪、潔癖症。

四方八方から飛んでくる罵倒のシャワー。

これらが全て、轟田のステータスを底上げする「燃料」になる。

「カッカッカ!揃いも揃って口の悪ぃ連中だ!」

轟田は立ち上がり、両手を広げた。

「いいだろう!今日からテメェらは『チーム・サタン』だ!俺様という最強の悪役ヒールを輝かせるための、選りすぐりの脇役バイプレイヤー共だ!」

「「「「「お断りよ(だ・です・し・ます)!!!!!」」」」」

五人の声が見事にハモった。

拒絶の合唱。

その音圧だけで、轟田の筋肉がパンプアップする。

「そこの筋肉!邪魔です!どいてください!」

清掃を終えたマリアが、モップを構えて突っ込んできた。

「貴方の足元!汗と脂で床が汚染されています!今すぐ消毒させてください!」

「あァ?俺様の聖域リングを掃除しようなんて百年早ぇよ!」

轟田はマリアのモップを片手で受け止め、ニヤリと笑う。

「テメェは俺の『回復メンテナンス』担当だ。……俺が暴れて汚れたら、その都度ピカピカに磨き上げろ。それがテメェの新しい仕事だ」

「……ッ!」

マリアの顔が屈辱で歪む。

だがその瞳には奇妙な熱が宿っていた。

「……いいでしょう。受けて立ちます」

マリアは轟田の手を振り払い、不敵に微笑んだ。

「貴方がどれだけ汚そうと、私がその上から完璧に綺麗にして差し上げます。……どちらが先に根を上げるか、勝負ですね」

「望むところだ!」

バチバチと火花が散る。殺し合いではない。「汚す者」と「清める者」の、終わらない追いかけっこ(プロレス)の開幕だ。



その夜。

轟田たちは、半壊したカジノホテルの最上階で、ささやかな宴を開いていた。

ミミが見つけた高級食材と酒。

マリアが完璧にテーブルセッティングをし、アリスが料理を切り分ける。

「乾杯だ、野郎共!」

轟田が樽ジョッキを掲げる。

「悪徳カジノと腐った教会。二つの巨悪を潰して、街は更地になっちまったが……ま、風通しは良くなっただろ!」

「街の人たちは大迷惑だけどね」

アリスが苦笑いする。

「でも……不思議と、みんな清々しい顔をしてたわ。お金も秩序もなくなったけど、『自由』にはなったみたい」

「秩序なら、私が明日から再構築します」

マリアが優雅に紅茶を啜る。

「この街の衛生管理ルールは、今後すべて私が決めます。まずは『路上へのツバ吐き』を死刑にするところから……」

「重すぎるわよ!」

レオがツッコむ。

「てかおっさん、次はどうすんの?ここのボス倒したし、金もあるし、もうゴールでよくね?」

ミミが肉を頬張りながら聞く。

轟田はジョッキを置き、北の空――窓の外に広がる、漆黒の闇を指差した。

「バカ言え。……前座は終わりだ」

全員の視線が集まる。

轟田の表情から、酔いが消えていた。

「王都の竜。魔法都市の機神。そしてここのカジノと教会……。どれもデカい山だったが、所詮は『人間界』の話だ」

轟田は拳を握りしめる。

「この先に待ってるのは、本物の『地獄』だ。……魔王軍の本拠地。人類の敵の総本山だ」

空気の温度が下がる。

魔王。

それは、この世界における絶対的な「悪」の象徴。

あるいは――轟田にとっての「同業者ライバル」か。

「セレン。魔王ってのはどんな奴だ?」

轟田が問うと、セレンは端末を操作し、立体映像を投影した。

「……データ不足ですが、既存の文献によると『究極の理想主義者』とされています」

「理想主義者?」

「はい。争いを憎み、差別をなくし、全ての種族を統合しようとしている。……方法は不明ですが、彼に出会った者は皆、戦意を喪失し、恍惚とした表情で『彼こそが真の王だ』と口にするそうです」

「……洗脳か?」

アリスが眉をひそめる。

「いえ、洗脳のような強制力は確認されていません。ただ純粋に……『心酔』させられるようです」

セレンの言葉に、轟田は鼻を鳴らした。

「……ケッ。一番タチの悪ぃタイプだな」

轟田は直感した。

そいつは、かつての勇者アーク以上に厄介な「善意の怪物」だ。

暴力を振るわず、言葉とカリスマだけで世界を支配する、究極のベビーフェイス(善玉)。

「全人類を愛し、思考停止させる……か」

轟田はニヤリと笑った。

「気に入らねぇな。……人間ってのはな、悩んで、苦しんで、誰かを憎んで、それでも足掻くから面白ぇんだよ」

轟田は立ち上がり、マント(アリスから奪ったもの)を翻した。

「決まりだ。次の興行ターゲットは魔王城!……その『完璧な平和』とやらを、俺様のプロレスで粉々にブチ壊しに行くぞ!」

「「「「「…………」」」」」

全員が沈黙する。

呆れているのではない。

その無謀すぎる宣言に、武者震いしているのだ。

「……仕方ないわね。最後まで付き合うわよ、このバカ」

アリスが剣を腰に差す。

「面白ぇ。世界のラスボス相手に、俺のスピードがどこまで通じるか試してやる」レオが不敵に笑う。

「データ収集の絶好の機会です」セレンが眼鏡を光らせる。

「ウチも行くー!魔王城のお宝、根こそぎ頂くし!」

ミミが立ち上がる。

「……魔王城は不衛生そうですからね。私が徹底的に除菌して差し上げます」

マリアが殺意(掃除用具)を構える。

轟田は満足げに頷いた。

「よし!出発は明日だ!それまで飲め!食え!……テメェらの命、俺様が預かってやる!」

「預けないわよ!」

「自分の命は自分で守るし!」

「勝手に仕切るな!」

罵声が飛び交う宴。

だがその騒がしさは、かつての孤独な旅とは違う「熱」を帯びていた。

最強の悪役と、彼を支える(罵倒する)最凶の仲間たち。

欲望と信仰が渦巻く街を更地にし、チーム・サタンは魔王城へ向けて進軍を開始した。

これにて、第4章「カジノ&教会編」――閉幕。世界の命運を賭けた最終決戦のゴングまで、あとわずか。


(第4章完)(第5章へ続く)

第4章完結。

全員集合!

最終決戦への期待を込めて、ブックマークをポチッと!

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