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異世界極悪レスラー〜感謝されると即死するので、全力でヒール(悪役)を演じてたら世界最強の魔王としてバズっていた件〜  作者: 早野 茂
【第4章】黄金都市のデスマッチ〜カジノ王と潔癖聖女の終焉〜

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33/39

第33話:重篤潔癖症(クリーン・フリーク)の暴走

「消毒……消毒消毒消毒ゥゥッ!!」

キィィィィィン!!!

マリアの背中から生えた六枚の翼――その一枚、巨大な電動ポリッシャー型の翼が高速回転し、アリーナの床を削り取った。

岩盤がバターのように溶け、粉塵が舞う。

「うわっ、あっぶね!?」

レオが転がりながら回避する。

掠っただけで服の袖が消滅していた。

斬撃ではない。「研磨」による物理的な消失だ。

「おいおい、掃除機にしちゃあ吸引力が強すぎんだろ!」

轟田も頭上から迫る高圧洗浄ノズル(ウォーター・カッター)を紙一重でかわす。

シュバッ!

水圧の刃が轟田の背後の瓦礫を一刀両断にした。

「汚い……ここも、あそこも……!ああもう、菌が見えるわ!繁殖してる!」

マリアは空中に浮遊しながら血走った目で周囲を見回していた。

ワインで汚れた顔。

乱れた髪。

その姿は聖女というより「仕事に追い詰められて発狂した清掃員」そのものだ。

「セレン!あれどうなってんの!?」

アリスが悲鳴を上げる。

「分析完了。……あれは古代文明の『自律清掃ユニット』ですね。本来は都市の衛生管理用ですが出力リミッターが解除されています」

セレンが冷静に解説する。

「現在のマリアの精神状態は『超・潔癖モード』。視界に入るすべての有機物を『汚れ』として認識し、排除しようとしています。……私たちも例外ではありません」

「つまり!?」

「全員、生ゴミ扱いです」

ズガガガガッ!!

言葉の通りマリアの翼から洗剤入りの散弾ショットガンが乱射された。

「ひぃぃぃッ!やめてよ!ウチ、昨日お風呂入ったし!」

ミミが泣き叫んで逃げ回る。

「関係ありません!貴女のような露出狂は、存在自体が不健全エッチで不潔です!漂白剤に漬け込んで色を抜いてあげます!」

マリアがミミに狙いを定める。

高濃度の漂白魔法陣が展開される。

「させるかよ!」

轟田が割り込んだ。

漂白魔法の射線上に立ち塞がり、仁王立ちする。

「おっと、そいつは俺様の所有物だ。勝手に洗濯してんじゃねぇ!」

ジュワァァァッ!!

轟田の肉体に漂白魔法が直撃する。

肌が焼ける音。

だが轟田は一歩も引かない。

「ぐ、おォォッ……!……シミ抜きにしちゃあ、刺激が強ぇなァ!」

《敵対感情(病的な潔癖)を確認。……状態異常耐性、上昇(大)》

轟田の筋肉が赤黒く変色し、漂白の「白」を塗りつぶしていく。

汚れ(ヒール)の生命力は、洗剤ごときでは消せない。

「な……!?なぜ色が落ちないのですか!?この頑固な油汚れが!」

マリアが苛立ちを募らせる。

「カッカッカ!俺様は『落ちない汚れ』だ!テメェの人生にこびりついて、死ぬまで離れねぇぞォ!」

「い、嫌ァァァァッ!!気持ち悪いこと言わないで!!」

マリアが絶叫し、全兵装を展開した。

モップ、ブラシ、ノズル、吸引機。

すべての清掃用具が轟田に殺到する。

「死ね!消えろ!滅菌!殺菌!除菌ーーッ!!」

嵐のような猛攻。

轟田は笑いながら、そのすべてを真正面から受け止めた。

回転するブラシを胸板で受け止め、高圧水流を筋肉で弾く。

「そうだ!もっと必死になれ!澄ました顔して『お掃除』してんじゃねぇ!」

轟田が一歩踏み出す。

マリアの顔が引きつる。

「なんで……なんで近づいてくるのよ!汚い!来るな!」

「嫌がれば嫌がるほど、触りたくなるのが悪役ヒールサガでなァ!」

轟田は、マリアの放つ高圧洗浄の激流の中を、強引に突破した。皮膚が裂け、血が舞う。

だがその血さえも轟田は利用する。

「ほらよ、プレゼントだ!」

轟田は自分の血を手に溜め、マリアに向けて振り撒いた。

バシャッ!

「ひッ!?」

マリアの真っ白な翼に、べっとりと赤い血が付着した。

「あ……あぁ……」

マリアの動きが止まる。

完璧だった清掃用具が汚された。

その精神的ショック(フリーズ)を、轟田は見逃さない。

「隙ありィッ!!」

轟田が跳んだ。

空中に浮くマリアの足を、ガッチリと掴む。

「捕まえたぜ、潔癖症!」

「い、嫌ッ!触らないで!脂がつく!細菌が移る!」

マリアが半狂乱で暴れるが、轟田の握力は万力以上だ。

轟田はニヤリと笑い、マリアを引き寄せた。

「教えてやるよ、聖女サマ。……この世に『無菌室』なんて場所はねぇんだ」

「……え?」

「人間ってのはな、泥食って、垢まみれになって、それでもしぶとく生きていくもんなんだよ!テメェみたいにガラスケースの中で生きてる奴には、一生分からねぇ『味』だ!」

轟田はマリアの体をリフトアップした。

行き先は、先ほどの戦闘で崩壊し、汚水と瓦礫が溜まったアリーナの地面だ。

「一緒に泥遊びしようぜェッ!!」

「や、やめ……!!」

「パワーボムッ!!!!」

ズドォォォォォォンッ!!!!!

轟田はマリアを、汚れた地面に思い切り叩きつけた。

背中から泥水の中に沈む聖女。

純白のシスター服が、茶色く、黒く、汚れていく。

「あ……が、は……ッ」

マリアが呻く。

ダメージもある。だがそれ以上に、精神的な崩壊が彼女を襲っていた。

全身が汚れた。

髪も、肌も、服も。

もう、どこをどう洗っても手遅れだ。

「……汚れた……」

マリアは泥の中で呆然と呟いた。

目から涙が溢れる。

「もう……お嫁に行けない……。神様に見捨てられる……。汚い……私が、一番汚い……」

絶望。

彼女のアイデンティティだった「清潔さ」が失われた今、彼女はただの無力な少女に戻っていた。

轟田は泥まみれのマリアを見下ろし、フンと鼻を鳴らした。

「……へっ。やっと年相応のツラになりやがったな」

轟田は、ポケットからくしゃくしゃになった手ぬぐいを取り出し、マリアの顔に放り投げた。

バサッ。

汗と泥がついた、汚い手ぬぐいだ。

「ひっ……!?」マリアがビクッとする。

「それで顔拭いて、出直してきな。……テメェの『掃除』は、まだ終わってねぇだろ?」

「……は?」

マリアが手ぬぐい越しに轟田を見る。轟田はニカっと笑い、周囲を指差した。

「見ろよ。アリーナは瓦礫の山だ。街もカジノの残骸で散らかってる。……この大量の『ゴミ』を片付けられるのは、テメェしかいねぇんじゃねぇのか?」

マリアが周囲を見る。

確かに、そこは彼女にとって地獄のような「汚部屋」状態だった。

プロの清掃員としての本能が、ピクリと反応する。

「……私が、やるんですか?こんな……汚い場所を?」

「当たり前だ。壊したのは俺だが片付けるのはテメェの仕事だろ?……それとも、汚れに負けて逃げ出すか?三流清掃員さんよォ」

挑発。

その言葉に、マリアの瞳に微かな光――狂気とは違う、職人としての「意地」が宿った。

「……誰が、三流ですか」

マリアは轟田の汚い手ぬぐいを握りしめ、泥の中からゆらりと立ち上がった。

服は泥だらけ。顔もぐしゃぐしゃ。

だがその表情は憑き物が落ちたように、ふてぶてしかった。

「言われなくてもやりますよ。……こんな不衛生な環境、私が管理しないと、すぐに疫病が蔓延しますからね」

マリアは背中の清掃用具(翼)を構え直した。

今度は、轟田を殺すためではない。

このクソみたいな世界を、少しでもマシにするために。

「ただし!貴方のことは絶対に許しませんから!一生かけて、その汚い性根を漂白してやります!覚悟しなさい!」

「カッカッカ!望むところだ!俺様がテメェの生きがい(仕事)になってやるよ!」

泥仕合の決着。

聖女は地に落ち、泥にまみれた。

だがその姿は以前の「作り物の綺麗さ」よりも、遥かに人間らしく、美しく見えた。

こうして、カジノと教会、二つの権力を粉砕した轟田一座に、史上最高に口の悪い「清掃係ヒーラー」が加わることになったのである。


(第34話へ続く)

泥だらけのパワーボム。

マリアが陥落!

お祝いの罵倒(評価)を星に込めてください!

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