表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界極悪レスラー〜感謝されると即死するので、全力でヒール(悪役)を演じてたら世界最強の魔王としてバズっていた件〜  作者: 早野 茂
【第3章】聖女と勇者と極悪レスラー〜綺麗事を踏みにじる鉄槌〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/38

第22話:勇者(ヒーロー)、その「正義」は誰を殺す?

シュッ、と風を切る音がした。

轟田の視界が一瞬で天地逆転した。

いや、違う。

轟田自身が宙を舞っているのではない。

轟田の「右腕」が肩から切り離されて宙を舞っていたのだ。

「――は?」

痛みは遅れてやってきた。

ドサッ。

右腕が床に落ちる音と同時に断面から鮮血が噴き出す。

「ぐ、がああああああッ!?」

轟田はよろめき、膝をついた。

速い。

見えなかった。

目の前にいたはずのアーク・ライトニングがいつの間にか轟田の背後に立っている。

その手には青白く輝く聖剣。

刀身には脂一つついていない。

「……痛みはあるかい?」

アークが背中越しに問いかけた。

その声は氷点下のように冷たい。

「安心してくれ。聖剣の切れ味は鋭い。痛みを感じる間もなく、君を『無』に還してあげるから」

ゾクリ、と轟田の背筋が凍った。

慈悲ではない。

これは「処理」だ。

害獣を駆除する時に苦しまないように配慮するのと同じ。

そこには対等な敵への敬意も感情の揺らぎもない。

《敵対感情(正義の執行)を確認。防御力上昇……警告:ダメージ量が防御係数を上回っています》

(……バカな)

轟田は脂汗を流した。

俺は今、大聖堂中のヘイトを集めて最強状態のはずだ。

機神ゴリアテの攻撃すら耐え抜いたこの肉体が、たった一振りでバターのように切断された?

「君は危険だ」

アークがゆっくりと振り返る。

その瞳は深海のように暗く静かだった。

「マリエルを傷つけ、人々の心を弄び、信仰を踏みにじった。……君を生かしておけば、世界は不幸になる。だからここで消えてもらう」

正論。

反論の余地のない完璧な正義。

だからこそ轟田のスキル「ヒール・ヒート」がうまく噛み合わない。

アークの殺意は「個人的な感情」ではなく、「世界の意志」として出力されているからだ。

「……へっ。随分と偉くなったもんだな、勇者サマよォ」

轟田は残った左手で切断された右腕を拾い上げた。

そして無理やり断面に押し付ける。

「ぬ、んんんんんッ!!」

筋肉を収縮させ血管を締め無理やり傷口を塞ぐ。

常人ならショック死する激痛。

だが轟田は歯をむき出しにして笑った。

「世界のためだァ?……笑わせんじゃねぇぞ」

「……何がおかしい」

「テメェのその目は、世界なんて見てねぇよ」

轟田は立ち上がり血まみれの指をアークに突きつけた。

「テメェが見てるのは、『傷つけられた自分のプライド』だけだ!聖女オンナをボコられて、顔に泥を塗られて……悔しくてたまらねぇって顔してんだよ!」

「…………」

アークの眉がピクリと動く。

「『世界のため』なんて綺麗な包装紙で包んでんじゃねぇ!テメェの本音はただ一つ……『僕の気に入らない奴は死ね』だろッ!!」

図星だったのかそれとも冒涜への怒りか。

アークの顔から「無表情」が消え、激情が浮かび上がった。

「黙れ……ッ!!」

シュンッ!!

再び神速の斬撃。

轟田の首を狙った一撃。

だが今度は――

ガギィィィンッ!!!

金属音が響き渡った。

轟田は切断されたばかりの右腕で聖剣を鷲掴みにしていた。

掌から血が滴る。

骨が軋む。

だが刃は止まった。

「なッ……!?」

アークが驚愕に目を見開く。

「接合したばかりの腕で……!?」

「言っただろ、偽善者。……テメェの攻撃には『私怨』が混じったってなァ!」

轟田はニヤリと笑った。

《敵対感情(個人的憤怒)を確認。全ステータス、再上昇リブート!》

アークが「正義」という鎧を脱ぎ捨て個人的な「怒り」を露わにした瞬間。

その攻撃は「処理」から「暴力」へと格下げされ、轟田の土俵リングへと引きずり込まれたのだ。

「捕まえたぜ、チャンピオン」

轟田は聖剣を掴んだまま、アークを強引に引き寄せた。

「離せッ!」

「離すかよ!ここからは泥仕合デスマッチだ!」

轟田の頭突きが炸裂した。

ゴッ!!

アークの鼻が潰れ美貌が台無しになる。

「がっ……!?」

「痛ぇか?それが『痛み』だ!安全圏から正義を執行してるだけのテメェには、一生分からねぇ味だぜ!」

轟田は怯んだアークの聖鎧を掴みそのままバックドロップの体勢に入る。

「お前の『正義』なんざ、俺様の『筋肉』でへし折ってやる!サタン・バックドロップッ!!」

ズドォォンッ!!!

脳天から石畳に突き刺さる。

だが手応えが浅い。

アークは直撃の瞬間、魔力障壁を展開して衝撃を殺していた。

瓦礫の中からふらりとアークが立ち上がる。

鼻血を流し、髪は乱れ、聖鎧は泥にまみれている。

もはや「キラキラした勇者」の面影はない。

「……殺す」

アークが低く唸った。

「轟田猛……。僕は君を、絶対に許さない。勇者としてではなく……僕個人の意志として、君を八つ裂きにする!」

その瞳にはドス黒い殺意の炎が燃え盛っていた。

善意の化け物がついに「ただの人間」に堕ちた瞬間。

《最高純度の殺意キリング・ヒートを確認。HP、筋力、敏捷性、全て限界突破》

轟田の体がマグマのように赤熱する。

全身から噴き出すオーラが大聖堂の残骸を吹き飛ばす。

「カッカッカ!最高だ!最初からそうやって素直になりゃいいんだよ!」

轟田は両手を広げ殺意に狂った勇者を迎え撃つ構えを取った。

「さあ来い、アーク・ライトニング!正義も悪も関係ねぇ!どっちが強ぇか、命の削り合い(プロレス)で決めようぜェッ!!」

もはや言葉は不要。

聖なる場所で野獣と化した二つの魂が激突する。

空気が爆ぜ空間が歪む。

これぞ轟田猛が求めていた「生」の実感だった。


(第23話へ続く)

勇者とのデスマッチ。

轟田に力を!

評価ポイントという名のエネルギーを分けてください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ