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異世界極悪レスラー〜感謝されると即死するので、全力でヒール(悪役)を演じてたら世界最強の魔王としてバズっていた件〜  作者: 早野 茂
【第2章】学園都市の論破王〜筋肉でブチ壊す魔導理論〜

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第17話:理屈(ロジック)の敗北、野蛮の凱旋

「オラァッ!!」

轟田の拳がゴリアテの装甲を殴りつけた。

ガギィッ!

鋼鉄がひしゃげ青い火花が散る。

『警告。対象ノ行動パターン、データベースト不一致。予測不能。予測不能』

ゴリアテが後退する。

その人工知能は混乱していた。

轟田の動きには合理的根拠が一切ない。

避けるべき攻撃を受け、引くべき場面で踏み込み、関節の可動域を無視して腕を振り回す。

それは戦闘ではない。

ただの「暴れ」だ。

「どうした計算機!俺様の動きが読めねぇか!」

轟田は笑いながら飛んできた瓦礫を頭突きで粉砕した。

血が流れる。

だがその痛みこそが彼のエンジンだ。

「テメェの計算式には、『意地』って変数が抜けてんだよォッ!!」

轟田が懐に潜り込む。

ゴリアテは迎撃プログラムを実行――できない。

轟田が放つ「プレッシャー(殺気)」がセンサーに過剰な負荷をかけ処理落ちを引き起こしているのだ。

「いけぇッ!おっさん!」

「その数値を……その可能性を見せてみなさい!」

レオとセレンの叫びが背中を押す。

轟田はゴリアテの巨体を正面から抱え上げた。

『警告。機体重量超過。持ち上げ不可能――』

「不可能だァ?うるせぇ!」


ブチブチブチッ!!


轟田の全身から筋肉繊維が断裂する音が響く。

だが轟田は止まらない。

セレンの「期待」とレオの「檄」。

そしてエリートたちの「困惑」。

それら全ての感情を物理的なパワーへと変換する。

「重力なんざ……気合でねじ伏せろォォォォッ!!」

三十メートルの巨体が宙に浮いた。

完全に持ち上がった。

見守る群衆が息を飲む。

「嘘だろ……」

「機神を……持ち上げた……?」

轟田は歯を食いしばり全身全霊で跳躍した。

ゴリアテを抱えたまま空高くへ。

「これが俺様の、新しい理論ロジックだ!!」

上空で体勢を反転させる。

ゴリアテの頭部を股に挟み脳天から地面へ叩きつける体勢。

伝説のフィニッシャー。

「サタン・ドライバー・カスタムッ!!!!」


ズドォォォォォォォォォォンッ!!!!!


魔法都市の中央広場に巨大な隕石が落ちたような衝撃が走った。

石畳が波のようにめくれ上がり衝撃波がビル風となって吹き荒れる。

ゴリアテの頭部が粉砕され、魔力回路が断末魔のようなスパークを放つ。

『シ、システム……ダゥ……ン……』

赤い光が消えた。

最強の機神はただの鉄屑となって沈黙した。

静寂。

圧倒的な沈黙が広場を支配する。

やがて、瓦礫の山から轟田がよろりと立ち上がった。

満身創痍。

だがその拳は天に向かって突き上げられている。

「…………」

エリート魔導師たちが呆然とそれを見つめる。

理論が敗北し野蛮が勝利した瞬間。

だがその光景は彼らの心に「理屈を超えた感動」を刻み込んでいた。

「す、すごい……」

「やったのか……?」

「俺たちを、守ってくれたのか……?」

一人が拍手をした。

それが伝播し、パラパラとやがて万雷の拍手へと変わっていく。

歓声が上がる。

「ありがとう!」「救世主だ!」

――ドクンッ!!

轟田の心臓が早鐘を打った。

視界が歪む。

(チッ……!やっぱ最後はこうなるか!)

HPバーが急速に減少していく。

純粋な感謝。尊敬。憧れ。

この街のエリートたちは頭がいい分、一度「認める」とその敬意も純度が高い。

このままでは数秒で死ぬ。

「……セレン!!」

轟田が叫ぶ。

だが今回はアリスではない。

この場の空気を変えられるのはこの街のルール(理屈)を支配する者だけだ。

「……心得ました」

セレンが瓦礫の上に立った。

彼女は眼鏡を押し上げ、冷徹な声で群衆を一喝した。

「静粛になさい!愚かな猿ども!」

魔法で拡声された声が歓声をかき消す。

「勘違いしないでください。この男は、あなた方を助けたのではありません」

「え……?」

「委員長、どういうことですか?」

セレンは破壊されたゴリアテを指差し淡々と告げた。

「これは『実験』です。

私の作成したゴリアテと未知のサンプル(轟田)……どちらが生物として優れているかを検証するための公開実験でした」

「じ、実験……?」

「ええ。結果は轟田の勝利。ゴリアテは敗北し廃棄処分となりました。……つまり、あなた方はただの『実験の巻き添え』になりかけただけです」

ざわめきが広がる。

救出劇じゃなかったのか?

俺たちはモルモットだったのか?

そこに轟田が畳み掛ける。

吐血を飲み込み凶悪な笑みを作って吠えた。

「カッカッカ!その通りだ!」

轟田はゴリアテの残骸を蹴り飛ばした。

「見ろよこのザマを!テメェらが税金つぎ込んで作った最高傑作は俺様の準備運動にもならなかったぜ!」

そして青ざめるエリートたちを指差す。

「おい、そこの眼鏡!この鉄屑の処分費、誰が払うんだ?あァ?」

「ひっ……!」

「俺様が壊してやったんだ。……『産業廃棄物の処理代』として、研究予算の五割を俺様に寄越しな!でなきゃこの街の魔導書、片っ端から焚き火にくべるぞコラァ!」

一瞬で空気が凍りついた。

研究予算の五割。魔導書の焼却。

知識を愛する彼らにとってそれは死刑宣告にも等しい暴言だ。

「ふ、ふざけるな!」

「野蛮人が!知識を何だと思っている!」

「出ていけ!二度と来るな!」

感謝の拍手が怒号と罵声に変わる。

石ではなく書きかけの論文や羽ペンが飛んでくるのがこの街らしい。

《敵対感情(知的憤怒)を確認。HP急速回復》

「……ふぅ」

轟田は心の中で安堵の息をついた。

胸の痛みが引き力が戻ってくる。

隣でレオが「うわぁ、最低」と苦笑いしアリスが「ま、生きてるならいいけど」と肩をすくめる。

轟田はセレンを見た。

彼女は満足げに頷きそして小声で囁いた。

「……ナイス・ヒール(悪役)でしたよ」

「へっ。テメェの台本アシストのおかげだ」

轟田はニヤリと笑い踵を返した。

「行くぞ野郎共!こんな頭の固い街、居心地が悪くて反吐が出るぜ!」

背中に浴びる「帰れ!」コール。

それは轟田にとって最高の勝利のファンファーレだった。

轟田一座は、魔法都市を後にする。

新たな仲間セレン・アルカディアを加えて。

彼らの旅路に平穏な日は訪れない。


(第2章・完/第3章へ続く)

第2章完結!

機神粉砕!

この勝利を祝して、ブックマークという名の「観戦チケット」をぜひ!

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