-THE BEGINNING- 分身のハーモニカ楽団
始まりは、いつもほんの些細のことで幕を開ける。
学校に遅刻しそうになったり、強さを求めたいと不意に思ったり。
少し心残りがあって、転生したいと思ったり。
「あ〜今日期末テストだぁ⋯どうしよ。何も勉強してなぁいっ!」
「中学の時もそうやって嘆いてたじゃん!なんで勉強してこないのさ!」
「面倒くさいから」
「即答だね!そんなんだからいつも成績下がってるんだよ!」
「乙部ちゃんだってこの間の提出物出してなかったじゃん!」
「あ、あれは⋯」
「ほら言葉濁した!」
「卑怯なんじゃないのそれ!!」
テストが迫ってて、何も勉強してなくて意気消沈したり。
「よう!赤西と乙部!何の話ししてんだよ〜!」
「あ、宗谷くんおはよう!」
「おっは〜!」
「せ、成績の話⋯あんたは論外でしょ!あと、おはよ⋯!」
「論外とか言うな!成績なんて低かろうが高かろうがどうでもいいんだよ!留年は嫌だけど」
「んじゃそれ避けるために頑張れよっ!」
「まぁまぁ乙部ちゃん、落ち着いて」
「あんたが始めたんでしょうがっ!」
「わぁっ!乙部ちゃんいつにもまして機嫌悪い⋯」
「いや、多分俺がいるからだと思うぜ。ほら、」
「⋯」
「あっ、そう言えばそうだったね笑」
「うるさいなぁもう!早く学校行くよ!」
「遅刻しそうなわけじゃないのにね」
「言ってやんなって。」
不意に恋が始まったり。
「⋯?なんか、飛んでる。」
「え?⋯⋯あ、ホントだ。」
「⋯あ、やばい。課題言えに起きっぱだ!!」
「乙部ちゃん、流石にそれはやばいよ。」
「寝るの遅かったとか?」
「ち、違う!取り敢えず、取ってくる!そこで待ってて!」
「⋯はぁ!?遅刻するぞ!!」「⋯えぇ!?遅刻しちゃうよ!!」
―そんな些細な物語の始まりが貴方に訪れたとしたら、どんな物語を紡ぐだろうか。
「自信あるか?今回のテスト。」
「ない。宗谷くんは?」
「勿論ない。」
「だろうね〜」
「どれもこれもむずくてさ、勉強しても全然頭の中に入ってこないんだよな〜」
「え、わかる!無意味だよね!」
「そうなんだよ、やっても出来なきゃやる意味ない!そう思って俺はいつも勉強を放棄してんだよ。」
「私は少しはやろうと思ってるんだけど、めんどくさってなって別のこと始めちゃう。」
「だよなぁ〜」
―空―
「こんなところに可愛い年頃の娘発見!折角だから、僕の手持ちの杖で魔法でもかけよっと♪
最近、分身の魔法を作って完成したばかりだから、試しに使ってみるか。
分裂しろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」
―再度地上―
「ん?なんか、空から星が降ってきてるぞ?」
「星?ここ現実世界だよ?降ってきてるわけないって笑」
「本当なんだって!上見ろ、上!」
「上⋯?ほ、ホントじゃん。飛んでるやつも近くに来てるし⋯もしかして魔法使い?」
「⋯ゆっくり落ちるな。」
「そういうもんだよ。」
「なんかめっちゃ触れたそうにしてるな⋯こういうのって結構やべぇやつじゃねぇのか?」
「触れてみなくちゃわかんないじゃんそんなの、私は触れるよ」
「勝手にしろ⋯」
魔法の光が少女の掌に触れ、その反動なのか、パチパチとした痛みが体中を走る。
掌の光は火花を散らすように光っている。
赤に青に黄に橙、色彩鮮やかに光っている。
そして、光り終えたらすっと消える、その儚さが実に美しい。
その光景に、少女と少年はすっかり見惚れていた。
「綺麗⋯体中は痛いけど。」
「そうだな⋯痛いのはダメだけど。」
しばらくすると光も痛みも止み、街の光景に戻った。
少女は光の余韻に浸り、笑みを浮かべている。
だが、少年は愕然とした表情を見せた。
「どうしたの?宗谷くん。そんなギャグ漫画でよくあるような目して。」
「あ、いや⋯え、あぁ!?気づかねぇの⋯!?横見ろよ横!!」
「また?もう何も起きないって」
少女の目線の先に映っていたのは、鏡の中に映る自分。
ではなく、物理的な本当のもう一人の自分だった。
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?!?!?」
つづく




