第1話 ルーティーン
初投稿の為、読みにくさ等あると思いますがご容赦下さい。
散り始めた桜を眺めながら自転車を押す俺の横を春風が過ぎたその日、
俺は彼女に恋をした。
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08時02分 まだ誰もいない教室につくなり、自分の机にドカッと座る。
鞄はいつも通り左にかけるとすぐさま机に突っ伏した。
両腕はクワガタみたいに顔の両横に、肝心の顔は廊下側に向けて左耳は机にびったりと貼り付ける。
準備はできた。後は待つだけ。
ぬるい湿気と落ち着かない心音を机越しに感じながら目を閉じ待つ。
何って風を。
開けっ放しにした教室の後ろの扉から梅雨前にしては、いや、梅雨前だからかさわやかな風が吹いてる。 違うこれじゃない。
前から二番目のこの席は窓を開ければ風通しがよく気持ちがいい。
だがそんなことはどうでもいいし、開ける時間も余裕も考えもない。
耳を押し付けられた机が教えてくれる。
来た。
ソレはおそらく下駄箱に着いた。
息も気持ちも整える時間はない。もう階段だろう。机の震えが増している。
廊下を風が満たし始めた。俺の足腰に震えはない。
やはり扉は閉めるべきだったか。なんて後悔し始めたころには教室に突風が吹く。
間に合う。
即座に体を跳ね起こし振り向く。
「おはよう」
ソレに繰り出したはずの渾身の一撃は俺だけの教室で風に薙ぎ倒された。
3つ後ろの机の上には筆箱と数学の教科書が整えられていた。
1時間目は数学らしい。
「またか、、、」
俺はまだ追いつかないらしい。
ソレが残した風に荒らされた冴えない髪をなだめてから、ため息とともに席に着く。
「まだかぁ~」
悔しさでいっぱいの独り言は閑散とした教室にはよく響く。
いつも通り負けたのでいつも通り突っ伏した。
今度は戦闘態勢ではなく、情けない両腕をまくらにして目を閉じる。
那田翔16才いつものルーティーン。俺の朝は敗北から始まる。
このいつもをいつか覆すためのルーティーンにももう慣れた。
まあいい明日だ。俺は挫けん。なめるなよ。
ソレの名は早瀬誌音。
速すぎる彼女にはまだ追いつかない。