表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

メリー時空のメリーさん

作者: 干奥左海

 帰宅中だったときの話です。


 帰り道で突然、携帯が鳴った。

電話主の番号は…ん? メリーさん?

怪しげな宛名に電話するかを躊躇(ちゅうちょ)する。

メリーさん。電話を受け取ったら最後、あなたのうしろにいるという有名な怪談話がある。

十中八九、いたずら電話だ。

無視するのが、得策だが、帰り道というせいなのか、好奇心と暇潰しのために電話を受けてしまった。


「はい」


「あたしメリーさん。今メリーランド州にいるの」


「え? 」ッツゥーッツゥー。


 疑問を解決する前に切られた。少女らしい声だった。

メリーランド州って、ワシントンのちょい上のアメリカじゃん。

日本ですらない。

えらく遠いスタートだな。そもそも出落ちかもしれない。すごいいたずらだったな。


 そう落着させないように、また電話が鳴った。また奴か。どうやらいたずらは続いているようだ。


「はいはい今度はどこですか? 」


「あたし、メリーさん。今メリーゴーランドにいるの」

ッツゥーッツゥー。


遊園地? どこだよ?

というか、これもしかして。

メリーさん、メリー縛りでやり取りしてる!?

なんとも気合いの入ったいたずらだな。

メリーさんだけにメリー縛りって、小もないな。

寒いのは夏にやってくれ。今は冬なのに。

北国に及びはせずとも、関東圏だって立派に寒い。

今ので、北国レベルに羽上がった。


 三度目の電話が鳴る。


「はい」


「あたし、メリーさん。今メモリーにいるの」

ッツゥーッツゥー。


メモリーって…。デジタルの世界かよ。

距離がわからないどころか、距離の概念を無視しやがった。

後、メリー縛り緩くなってませんかね?


 四度目の電話が鳴る。


「仏の顔も三度まで」


「………あたし、メリーさん。今メリーポピンズにいるの」

ッツゥーッツゥー。


アイツ、こちらのボケを無視しやがった。

メリーポピンズは1960年代の映画。

内容は話のネダバレになるから言えないね。

以下ネタバレの可能性あり。

って、ネタバレってなんだよバカタレ。

そしてメモリーの伏線なのこれ? 映画の世界にいる、これまた概念系かよ。


 五度目の電話が鳴る。


「これいつまで続くの? 」


「後二回。あたし、メリーさん。今メリーバッドエンドにいるの」

ッツゥーッツゥー。


後二回なんだ。

映画終わったのね。

メリーバッドエンドかなぁ?まぁメリーさん的には思うところがあったみたい。


 六度目の電話が鳴る。


「あたし、メリーさん。今メリーチョコレートにいるの」


!?

驚いたのは、縁のある言葉だったからだ。

メリーチョコレート。高級チョコレート会社だ。

その本社は、東京都大田区にある。

俺のいる場所に近い。もっと言えば、帰り道の途中を横切るし、もう横切った。

メリーさんは確実に近づいて来ている。


 七度目。最後だという電話が鳴る。

付き合ってられるかっ!!

電話を無視して帰りを優先する。

しかしその抵抗は、児戯だと嘲笑うが如く、次の言葉が発せられた。


「あたし、メリーさん。今、12月25日にいるの」


背筋が凍った。冬だからではない。今日が12月25日ということで、彼女がこちら側に来てしまったのだとわかったからだ。

いる。うしろにナニカがいる。

恐怖で凍って動けない。

近づいてくるナニカに恐怖するしかなかった。

耳元に近づいたのを感じる。もう目を瞑る他なかった。


「メリークリスマス」


メリーさんの声だった。それっきり緊張感は無くなった。

うしろを振り向いても誰もいなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ