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新訳三國志演義  作者: 篠原2
少女期

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少女期 第六十一話

頭を抱える劉備の姿を見た村長達は、劉備と大工が別れる前に交わしていた約束を完全に忘れていたことに気付いて肩を落としながら溜め息を吐いていく。

そんな村長達の姿を見ていた大工が劉備の肩を叩いて、早く立ち直るように声を掛けていった。


「……はあ……お主達、忘れておったな……?」


「……」


「……劉備よ、そろそろ顔を上げて立ち直ってはもらえないか? 一人では村長達の相手をするのに大苦戦するだろうから……」


「……はい……」


大工の呼び掛けに応じて頭を抱えることを止め、顔を上げていった劉備。

そんな劉備と大工に村長達は本当に約束を忘れていたのかを問い詰めていった。


「……劉備よ、一つ確認なのだが、そなたは本当に忘れていたのか?」


「……はい、本当に忘れていました……」


「……ふむぅ……そなたもすっかり忘れていたのか?」


「……申し訳ありません……」


「なぜだ? 普段のそなた達からは想像もできない姿なのだが?」


「……馬車が形になり始めて、それでまだ土台が完成しただけの状態でありながらも思っていたよりも普通に動いてくれた馬車に興奮してしまいまして……」


村長達の取り調べに対して劉備と大工は項垂れながらそう答えていく。

すると劉備達のここまでの返答を聞いた村長達が、それなら自分達もその馬車に乗ってみたいと口にした。

その言葉を聞いた劉備と大工はお互いにお互いの顔を見合わせると、村長達にそれなら試し乗りをしてみますか? と問い掛ける。


「……ほう、馬車に興奮した、と……ほうほう」


「……あら? 興味があるのですか……?」


「それは当然だろう。そなたが考案し、形にしようとしている物品に興味がないわけはなかろう」


「……そうですか……それなら一度試しに乗ってみますか……?」


「む? 馬車にか?」


「はい。ただし早く戻らないと村長さん達も道作りの現場に残してきた皆さんに怒られる可能性がありますが……」


「……ふむ、まあ確かに。しかし試しに馬車へ乗ってみたいという思いも強くある」


「……では?」


「……そうだな、一度馬車に乗って道作りの現場まで戻る。そこでそなたと大工に道作りの状況を確かめてもらう。そのあとはまたここの馬車作りの現場にそなたと大工が馬車に乗って帰ってくる。これでどうだ?」


自身の提案に対してこのように返答してきた村長に劉備は少し考えて、軽く頷きながら返答をしていった。


「……そうですねぇ……でもそれだと道作りをしている村人全員が馬車に乗ってみたいと言ってきて、収拾がつかなくなりませんか……?」


「……ふむ、まあその可能性もあるか、ふむぅ……」


劉備の返答を聞いた村長は、劉備に説明された状況を想像しながら考え込んでいく。

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