少女期 第五十四話
太守の言葉を受けた劉備と護衛の村人達は、太守にこの日最後となる感謝の言葉を伝えていく。
「太守様、今日は本当にありがとうございました」
「ありがとうございました!」
「いや、よいよい。それよりも早く村に帰るようにしたらどうだ? ……まあ時間があるようなら、ここでこのままゆっくりしてから帰る、ということをしても問題はないのだが」
「……太守様、大変ありがたいお言葉なのですが、いつまでも太守様のお言葉に甘えることはできません」
「……それでは?」
「はい。我々はこれで村に帰らせていただこうと思います」
「うむ、そうか。気を付けて帰るのだぞ?」
「はい!」
「うむうむ。護衛の村人達も、しっかり役目を果たしながら気を付けて帰るのだぞ?」
「はい!」
「うむ。それでは行くが良い」
「はい!」
「はい!」
太守から掛けられた声に答えていった劉備達は、すぐにこの場を離れて村に帰る準備を始める。
そうしてすべての準備を終わらせた劉備達は、見送りに来てくれた兵士達に手を振って応じながら村に帰っていった。
「……ふぅ、これでようやく帰れますね」
「ああ、そうだな」
「最初は緊張したけど、最初だけだったな」
「それは皆さんだけでしょう? 私は最初から最後まで緊張していましたよ?」
「本当か……? あの様子を見ていたら全然そうは思わなかったけどなぁ……?」
「そう見えていただけですよ。心のなかはぶるぶる震えていましたよ?」
「……そうか? まあ、それならそれでいいんだが……」
「……あ、そういえば玄ちゃん」
「え? なんですか?」
「用意していた嘘の話、太守様に話さなくてよかったな」
「ああ、あれですか。あれは万が一の時のためですからね。話さなくて良いならそれに越したことはないですよ」
「そういうものか……」
「ええ」
帰りの道中でこのような雑談をしながら村への道を急いでいた劉備達。
こうして家路を急ぐ劉備達は、遂に村の近くまで戻ってくる。
そんな劉備達の目に、村長を中心にした村人達が道をきれいにする工事を行う様子が映っていく。
「……おお、ようやく村が見えてきましたね……」
「ああ、そうだな……おや? あれは……?」
「村長さん? それに村の人達もいますね?」
「皆してなにやってんだ?」
「多分道の工事ですね。出発前に頼んでいましたから」
「……ああ、そういえばそうだったな……」
道路工事をしている村人達に不審な目を向けていた護衛の村人達は、劉備の説明を聞いて納得した表情や、そのやり取りを思い出した表情になっていった。
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