少女期 第五十三話
太守が笑顔で行ってきた返答を聞いた劉備が、太守に対して同じように笑顔で感謝の言葉を伝えていった。
「そうですか! ありがとうございます、太守さま!」
「はは、礼には及ばぬ。我々にも利益のある話だからな」
「うふふ、そうですか……それでは太守様、早速になりますが、馬車を作るための部品を用意してはいただけないでしょうか?」
「うむ、わかっている。すぐに準備して村に届けるようにしよう。よいな?」
劉備のお願いを聞いた太守はすぐに返事をすると、部下の文官達に馬車を作るための部品を用意するようにめいじていく。
これに文官達が黙って頷いていく光景を確認した太守は馬車のことについては劉備になにも心配することはない、そう伝えていった。
「……」
「……」
「うむ、頼むぞ、皆よ……劉備よ、見ての通りだ。馬車のことに関してはなんの心配もいらんぞ」
「ありがとうございます、太守様! ……それでは私達はこれで失礼させていただいてもよろしいのでしょうか?」
「そうだな……そなた達に他の話がなければ、帰ってもらっても大丈夫だぞ」
「そうですか……今の私達には馬車のお願い以外に話せるような話題がありませんから……」
馬車の話題以外に今日太守と話すような話題がない、そう答えてきた劉備に太守は残念そうな表情を見せていく。
それでも太守はすぐに表情を引き締めると、劉備や護衛の村人達に別れの挨拶をし始めてきた。
「ふむ、そうか……では今日はこれでお別れ、ということになりそうだな、劉備よ」
「そうですね……それでは太守様」
「うむ」
「今日はありがとうございました!」
「うむ、今日も楽しかったぞ、劉備よ。ではまたな」
「はい、太守様」
「護衛の村人達もご苦労であった。帰ったらゆっくりと休むのがよかろう」
「ありがたいお言葉にございます、太守様……」
「うむうむ……おお、そうだ劉備よ」
「……? なんでしょうか、太守様?」
「馬車の部品はすべてが集まり次第村に送り届けようと思っている。少し時間が掛かるかもしれんが、焦らず待っていてくれ、劉備よ」
「わかりました。太守様のお心遣い、大変嬉しく思います」
太守の言葉を聞いた劉備達は、全員が深く頭を下げて感謝の意を表していく。
そんな劉備達を見た太守は、大きく頷きながら劉備達に楽にするようにと声を掛けていき、続けてそんなことはいいから、早く村に帰って劉備達の帰りを待っている村人達を安心させるようにと、そのように伝えてきたのであった。
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