少女期 第五十二話
太守の言動に喜ぶ劉備の姿を、兵士達や文官達は複雑な表情で眺めていく。
そんな部下達の様子に気付いた太守が兵士達や文官達の元に向かい、彼らの耳元で様々なことを呟き始める。
「……どうした？ そんなに複雑な表情で劉備を見て？」
「た、太守様……それは……」
「ふふ、わかっているぞ？ お前達は子供の意見に従うことに抵抗があるのだろう？」
「うぐっ⁉」
「隠さずとも良い。恐らく誰もがそうだろうからな」
「……それは、太守様もですか？」
「当然であろう。相手は子供だぞ？」
「……それでは、なぜ……？」
「ふふふ、それはな、利益になるとわかったからよ」
「り、利益になる……？」
「うむ。あの子供の意見に従った村は税収が増えた。それにこれまでよりも気軽に風呂に入れるようになった。それに今まで食べたことのない麺料理も食べることができた」
「……う……」
「どうだ？ 下手に腹を立ててあの子供の邪魔をするより、その言葉に従って動いた方が我々の利益になると思わんか？」
「た、確かに……」
「太守様の仰る通りかと……」
太守の囁きを聞いた部下達はその大半が太守の囁きを受け入れ、劉備を見る表情を改めていく。
しかしそんななかでも劉備に対する表情が変わらない部下達がいた。
そんな部下達に太守は更なる説得を行う。
「……」
「……む？ そなた達はまだ不満か？」
「……太守様には申し訳ないのですが……」
「ふむ、そうか……ではこのように言ってみようか？」
「え？」
「おっと、その前に尋ねてみるが、そなた達は劉備の提案が今回の馬車で終わると思うか？」
「……それは……思いません。終わらないと思っています」
「だろうな。ということはだ、これからも劉備が提案してくる物品を許可していけば、その利益を我々が受け取ることができるのだぞ？ 良い話だと思わぬか？」
「……それはまあ……思いますが……」
「そうであろう。そして将来そうなるとわかっているのなら、ここは少し我慢して劉備の言葉に従って動いた方が良い、そう思ってはくれないか？」
「……」
「……わかりました」
「おお、そうか！ わかってくれるか！」
自身の説得を受け入れて劉備の意見を我慢して聞き入れる、そう答えた部下達を見た太守が嬉しそうに声をあげるなか、ここまでの様子を遠くから黙って見守っていた劉備が声を掛けていく。
「……あの、太守様！ お話は終わりましたか⁉」
「……む？ 劉備か。うむ、終わったぞ！」
「そうですか！ それでどうなりましたか⁉」
「うむ！ 問題なくまとまった！ なにも心配することはないぞ、劉備よ！」
劉備の質問に太守は、笑顔で返答していった。
閲覧、感想、評価ポイント、ブックマーク登録、いいねありがとうございます！
