少女期 第四十四話
劉備の発言を聞いた太守は、その時の劉備の反応からなにか言い出しにくい内容の話だと察し、劉備が話しやすくなるように軽い調子で聞き返していった。
「ほう、頼みたいことか。今度はなんだ? またなにか漢の役に立つものを思い付いたのかな?」
「漢の役に立つもの……まあ役に立つものだとは思うのですが、なんとなく使われなくなっているような感じがしていますので、私の話を聞いても太守様は喜ばないかもしれません」
「……うん? 使われなくなっているような感じがしている? ということは、以前は使われていたが、現在は使われている可能性がないかもしれない、そういう技術だということか?」
「……はい、そうです……」
太守の問い掛けに対して、相変わらず話しにくそうに答えていく劉備。
そんな劉備の反応に、太守はなにを提案してきても絶対に怒らないから、と言って劉備に頼み事を話すようにと伝えていく。
「……ふむう、そうか……まあよい、わかった」
「……太守様?」
「劉備の言葉だ、どのような頼み事であっても絶対に怒らないとここに誓おう。これでどうだ、話してくれるか?」
「……失礼を承知でお尋ねするのですが、その誓いは信じてもよいものなのでしょうか?」
「ぬ? ……わっはっは! それはもちろん、当然の話だ! もし嘘だった時は来年そなたの暮らす村の税を免除してやろう!」
「本当ですか? 太守様と私の二人だけしか知らない話だと言って、なかったことにされることはないですよね?」
「慎重なやつじゃのう。わかった、そこまで言うなら、おーい、劉備の護衛達よ! 少し部屋に入ってきてくれ!」
「え?」
あまりにも頼み事を話さない劉備に痺れを切らした太守が、税の免除の話を聞いた証人を増やすため、部屋の外で待っていた村人達を部屋に招き入れる。
それに劉備が驚いているなか、太守に呼ばれた村人達が部屋に入ってきた。
「え? あっ、はい、わかりました」
「失礼いたします、太守様」
「それでどのようなご用件でしょうか?」
「うむ、実は劉備がな、頼み事があると言うのだが、その頼み事を言わんのだ。それで先ほど、絶対に怒らん、怒ったら来年の村の税を免除すると言ったのだがな」
「ええ⁉ 税を免除⁉」
「うむ。しかし劉備はな、この話を聞いたものが二人だけではこの話をなかったことにされるのでは? と警戒していてな」
「ええ……」
「うむ。それでそなた達にも証人になってもらおうと部屋に入ってきてもらったのだよ」
太守の話を聞いた護衛の村人達は、凄い表情で劉備に目を向けていく。
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