少女期 第三十話
劉備と張角がお互いに納得して頷くなか、張宝は呆れた表情を見せながら、本当にそんなことをしてもいいのかと劉備に尋ねてくる。
これに劉備はなんともいえない表情で、張宝を納得させるにはこれしかないだろうから、と言って答えていった。
「……二人はさっきの話で納得しているようだが、劉備よ、本当にそんな方法を実行に移して良いのか?」
「私だって本当はこんなことをしたくはないですよ。でもこんな方法でもやらないと張宝殿が納得されないじゃないですか? ですから仕方なくやるんですよ」
「……そういう方法を選ぶことをこちらの所為にされるのはなぁ……まあ心当たりがないではないんだが……」
劉備の返答を聞いた張宝は複雑な表情でその感想を話していく。
そんな張宝に兄、張角がそろそろ劉備の言葉を受け入れるように、と声を掛けていった。
「……なあ宝よ、少しいいか?」
「む? 兄者? どうかしたのか?」
「いや、別に大したことではないんだがな、そろそろ劉備の言葉を信じろ、とまでは言わんが、もう少し肯定的な意見を口にしてもいいのではないか?」
「……むぅ……いや、しかしなぁ……」
「とりあえずわしは理由が話した条件を受け入れたいと思っている。このことは宝にもわかってもらいたい」
「……はああぁぁぁ、仕方がない……わかりましたよ、兄者……」
「む? ということは?」
「認めますよ。仕方がないのでね。不本意ですが……ね」
「おお、そうか! ようやく認めてくれたか! うれしいぞ、宝よ!」
劉備の説明に続いて行われた張角の説得で、ついに張宝が嫌々ながらも張角の出発を認める形になる。
この張宝の決定に張角はとても喜び、張宝の肩をバシバシと叩いていく。
これを張宝は嫌そうな顔をしながら払い除けていき、張角に行くと決まったんだから早く行って早く帰ってこい、と声を掛けていった。
「……あまり叩くな、兄者よ。さすがに痛い」
「うん? おお、そうか。それはすまんかった。謝るよ」
「……謝るのはどうでも良いんだよ。それよりも兄者、行くと決まったんだからもうさっさと行って治療の終わらせ、それでさっさと戻ってきてくれ。良いな?」
「それはわかっているが、やけに念を押してくるじゃないか。どういう理由でそこまで念を押すことになったのか、その理由を聞かせてほしいものだな」
張宝が心変わりをした理由を知りたい、こう語っていく張角に、張宝は肩を竦めながら答えていく。
「それはもちろん兄者が捕まらないかが心配だからだ。兄者以外に本格的な治療をできるものはいないから、兄者が捕まってしまうとこの拠点の存在する意味がなくなってしまう。だからだ」
この張宝の答えを聞いた劉備と張角はなんとも言えない表情で顔を見合わせ、苦笑いをしていった。




