少女期 第二十四話
劉備と張角の挨拶を見た案内人の男は目の前の光景が信じられない、といった様子で瞬きを繰り返す。
その一方で張宝の方はめったに見ない兄の姿を目の当たりにしたことで、兄にこんな反応をさせる劉備に興味を持ったらしく目を細めて劉備を眺めていった。
そんな張宝に、劉備が目を向けながら挨拶をしていく。
「あなたが張宝様ですね? お初にお目に掛かります、劉備玄徳と申します。改めまして、どうかよろしくお願いいたします」
「これはこれはご丁寧に。それがしは張宝、こちらにいる兄、張角の弟になります。どうかよろしくお願いします」
お互いに自己紹介をしながら丁寧に頭を下げていく劉備と張宝。
そんな一同の様子を見ていた案内人の男は、自分が場違いな存在だと判断して、退室の挨拶を行った。
「……あの、皆様、自分はここにいてはいけない雰囲気を感じましたので、これで失礼させていただきたいと思います。よろしいでしょうか?」
「うん? ああ、そうだな。ご苦労だった、下がってよいぞ」
「ありがとうございます。それでは……」
そう言って立ち去ろうとした案内人の男に、劉備が悪戯っぽい笑顔を浮かべながら声を掛けていく。
「あ、待ってください。ひとつだけよろしいですか?」
「……へ? あ、はい、構いませんが……」
「ふふ、それではひとつだけ。これで私は処刑されることはなくなりましたかね?」
「……え? ……あ……そ、そうですね……あれは……本当に申し訳ありませんでした…」
「あはは、気にしないでください、冗談ですから。それよりも案内役の方、ここまでの案内、ありがとうございました。おかげで大賢良師様と再会することができました」
「そ、それは良かったです」
「ええ、本当に」
「そうですか……わかりました。ではこれで失礼させていただきます」
「うむ、それではな」
「はっ!」
張角の声掛けに反応したあとで部屋を出ていった案内役の男を見送ったすぐあと、張角が劉備に話し掛けていった。
「……さて劉備よ、そなたどうしてここに来た? そなた自身は怪我もしておらず病気にもなっていないと言っておったが?」
「はい、私はどこも悪くなっていません。ですが他の方はそうではありません」
「……ということはわしに用があるのはそなたと一緒に来た連中になるのか?」
「いえ、彼らも元気です」
「む? そうなるとますますわからん。劉備よ、そなたはどうしてここに来たのだ?」
劉備の返答を聞いて完全に混乱した張角は、首を傾げながらもう一度劉備に尋ねていく。
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