少女期 第二十三話
謎の訪問者の言動に若干困惑した張角であったが、すぐに笑い声をあげる。
その様子を不思議そうに見つめる弟と、外で不安そうに待っている男がともに張角が笑い終わるのを待ってからなぜ笑うのかを尋ねていった。
「……兄者、なぜ笑うのだ?」
「ははは、それはお前、面白いからだ」
「……なにが面白いんだ? まったくわからんのだが?」
「ふふ、これだけ毎日治療をしているのだ、ちょっとやそっとの怪我人や病人なら片っ端から忘れていってしまう。それはわかるな?」
「それはまあ、そうだろうな」
「だろう? だが今わしを尋ねてきたものはわしが必ず覚えていると確信してやってきておる。きっと相当酷い怪我人だったか重病人だったはずだ。それがまたわしに会いに来た。どのような用件か気になるし、なにより面白いではないか?」
「……そういうことか……相変わらずだな、兄者は……」
「ははは、まあそう言うな。それよりもわしの考えがわかったのなら、その人物とやらをここに呼びたいのだが、呼んでも良いか?」
「……まあずっと待たせておくこともできんだろうしな。仕方ない、呼んでも良いぞ、兄者」
「すまん、助かる。おーい! その人物、入ってもらって構わんぞ!」
張角はそう言って外で待っている男に声を掛けていく。
これを受けて男は劉備を連れて張角の待つ部屋に入っていった。
「わかりました。それでは失礼させていただきます。ほら、お前も入れ」
「はい」
劉備を連れて張角のいる部屋に入っていった男は、すぐに張角と弟に頭を下げて挨拶をしていく。
それに対して張角は挨拶への返事はそこそこにして、すぐに連れてきた人物を紹介してくれと声を掛ける。
「失礼いたします、大賢良師様、張宝様。この度は……」
「ああ、いや、そういう堅苦しいのは良いから、早くその人物を紹介してはくれんか?」
「あ、はい、わかりました。ほれ、大賢良師様に挨拶をせんか」
「……はい」
男に押し出される形で張角達の前に出た劉備が、張角達に挨拶をしていく。
これに張角は驚愕しながら劉備のことを出迎えていった。
「張角殿はご無沙汰しています。それから張宝様ははじめまして……私のことを、覚えておいでですか? 張角殿?」
「む! むむっ!! そなたは、劉備! 劉備ではないか⁉ なぜここに来た⁉ どこかを悪くしたのか⁉」
「ふふ、いえいえ、私はどこも悪くしていませんよ。それよりも張角殿、改めて、ご無沙汰しています。劉備玄徳です」
驚愕する張角に、劉備は穏やかに二度目の挨拶をしていく。
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