幼少期 第一話
今更ながらこれはTS物になるのだろうか…?
翌朝、前日の夜更かしのせいで普段よりも起きるのが遅くなってしまった劉備は目を覚ますとすぐに母親の姿を探し始めた。
少し家の中を見て回った劉備は台所で無事に母親の姿を見つけたのである。
「おはようございます、母上!」
「ああ、おはよう、玄徳。今日は珍しく遅かったわね」
「申し訳ありません、母上」
「ふふ、別に気にしなくても良いのよ?それよりちょっと待っててね。すぐに朝ごはん作っちゃうから」
「あ、それじゃあ手伝います、母上!」
元気に宣言した劉備に母は穏やかに微笑みながら語り掛けた。
「うふふ、ありがとう。でも玄徳はまだ起きたばっかりでしょう?それにもうすぐ出来るからたまにはゆっくり待っていてほしいかな?」
「…わかりました。それじゃあ今日は待っています、母上」
「ええ、待っていてね、玄徳」
こうして劉備は台所を後にして食卓に向かい椅子に座ると今日これからの行動について考え始めた。
(ご飯の最中に切り出すかな…?それとも食べ終わってからにしようかな…?食べてる最中だと食事どころじゃなくなりそうだしなぁ…。ただ食べ終わった後だと話を切り出すタイミングが難しいよね…。やっぱり食べてる最中、それも最終盤かな…)
「お待たせ、玄徳」
「あ、母上!」
劉備の考えが一段落したところでタイミングを見計らったかのように母親が朝食を作り終えて食卓に運んできたのである。
母親の手で次々に食卓に並べられる朝食の数々。
そうして全ての料理が食卓に並んだところで母親も椅子に座り両手を合わせた。
それに劉備も続いて両手を合わせたところで、
「「いただきます」」
と、挨拶をして食事を始めたのだった。
そしていつものように今日何をするか、何か手伝う事は無いか等の話をしながら朝食を食べ、料理の品数が残り僅かになったところで劉備が切り出した。
「母上、一つ聞いてほしい事があるのですが」
「うん?何かしら?」
「昨日夢に変な男の子が出てきたんです」
「変?変ってどんなふうに?」
「私の方はこれまで会った事も見た事も無いのに男の子の方は私の事を全部知ってる感じだったんです」
「怖い夢ね…」
「はい…。でもその人、自分の分まで母上を助けてあげてほしい、楽な暮らしをさせてあげてほしいって私に言ってきたんです。だからちょっと気になって…」
「…自分の…分まで?……まさか…」
「…母上?」
この時劉備は心の中で、
(母さん…気付いたかな?)
と、呟いた。
そして母の口から劉備が望んだ言葉が出るのだった。
「ねぇ玄徳。その男の子なんだけど…うーん…なんというか…長くなかったかしら…?」
「…?どういう事ですか?」
母が何を言いたいのかを理解していながら全ての説明を母に行わせるべくわからないふりをした劉備。
そんな劉備の思惑に全く気付かない母は必死に考えて前の質問よりもわかりやすい質問を劉備に行ったのである。
「ええっと……あぁ、そうだ!ねぇ玄徳、その男の子なんだけど他の人達よりも耳が長くなかったかしら?」
この質問に待ってました!と言わんばかりに目を輝かせた劉備はそれを母に気付かれないように静かに、しかし目の前の獲物に襲い掛かる肉食獣のように飛び掛かっていったのである。