幼少期 第二百話
村を出た劉備達は、道中でなにも危険な目にあうこともなく、無事に太守の元に辿り着く。
そこで兵士達に、約束通り娘を連れてきたので太守に会わせてほしいと頼んでいく。
これに対して兵士達は、太守様に確認してくるので少し待っていてほしいと劉備達に告げると、兵士ひとりをこの場に残して太守に確認をしに向かっていった。
そうして劉備達が待つこと約十分、太守に確認を終わらせた兵士達が戻ってきた。
「おう、待たせたな」
「いえ、大丈夫です。それでどうでしたか?」
「ああ、待っているからすぐにきてほしいとのことだ。案内するからついてきてくれ」
「わかりました、よろしくお願いします」
「ああ。さぁ、こっちだ」
こうして劉備達を太守の元に案内し始めた兵士達のあとを、劉備達はついていく。
そうして太守の元に到着し、太守からの褒美を受け取るための会談が始まる。
「よく来てくれた。そなたが村長が話していた娘だな?」
「はい、太守様」
(……ふむ? ずいぶん幼い娘だと感じたが、なかなかしっかりしているようだな……)
「うむ、そうだぞ……えぇと、そなたの名は……」
「姓を劉、名を備、字を玄徳と申します、太守様」
(ほう! まだ幼いのにこれ程礼儀正しい名乗りができるとは! これはこの娘、劉備と言ったか、子供だと思って甘く見ない方が良さそうだ)
「ふむ、劉備玄徳か、よくわかった。それで話は村長から聞いているだろう。単刀直入に聞く。そなたはなにを褒美に望む?」
会談を始めた辺りではまだ劉備のことをそこらの子供達とそれほど変わらない相手だと考えていた太守は、劉備本人とのやり取りで油断できない相手だと考えを改めた。
その上で望みの褒美を尋ねた太守に、劉備が望みの褒美を話す前に太守に質問を行う。
「それなのですが太守様、私の褒美を答える前に、太守様にひとつだけお尋ねしたいことがございます」
「なに、尋ねたいこと? それはなんだ?」
「ここには釜茹での刑を行なうのに使っていた釜はございますでしょうか?」
「釜茹での……釜? なぜそのような物を……まさか?」
「おそらくはそのまさかでございます、太守様。私が望む褒美は釜茹での刑に使う釜でございます」
劉備が、自身の望む褒美を話した瞬間、太守や兵士達は非常に困惑した表情で互いの顔を見合わせる。
そんな太守達に、劉備がさらに追い討ちを仕掛けていく。
「あ、その釜なのですが、できればここにある釜すべてを褒美としていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」
これに太守達はなにも言わずに困惑の表情を深めていった。
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