幼少期 第百九十九話
劉備の母をもう一押しで説得できると考えた村長は、気合いを入れ直して最後の説得を始める。
「これまでの話でかなりの不安が解消されたとは思う。そこで最後、劉備がどのような褒美を求めるのかだが、これは今までに劉備がこの村になにをやってきたかを考えればおのずと答えを導き出せよう?」
「……もしかして……この村のみんなが快適に暮らせるようになる、そのような褒美を望む。村長さんはそのように考えているのですか?」
「うむ、そうだ。そうではないかな、劉備よ?」
劉備の母を説得している最中、突然劉備本人に話を振った村長だったが、話を振られた劉備はまったく慌てずに村長の質問に答えていく。
「はい、その通りです、村長さん」
「うむ。ちなみにどのようなものか、一足先に教えてもらえることはできるかな?」
「ええ、大丈夫ですよ。なによりも母上の説得に大きな役割を果たしてくれるでしょうから、喜んで説明させていただきます」
「おお、そうか。それではよろしく頼むぞ、劉備よ?」
「はい。それではいきます」
そう話して呼吸を整えた劉備は、村長と母にどのような褒美をもらおうとしているのか、そのもらった褒美でなにをしようとしているのかを事細かに話していった。
その全貌を聞いた村長と母は、自分達がその新たな技術を使っているところを想像し、恍惚の表情を浮かべる。
「……ほう、それはまた……面白い技術を教えてもらったな」
「ええ、本当に……でもそんなことが本当にできるの、玄徳?」
「一応先ほど話したことがすべてできれば、という話になりますけど。それでもたぶん不可能ではないと思いますよ」
「おお、そうか! それならばすぐに褒美をもらい受けに行こうではないか!」
「……そうですね。不安がすべてなくなったかと聞かれればいいえと答えてしまいますが、わかりました。玄徳、太守様に失礼のないようにね?」
「大丈夫です、母上。私ひとりで太守様の前に出るわけではないんですから。そうですよね、村長さん?」
「ああ、そうだ。だから心配することはない。安心して劉備が帰ってくるのを待っていてくれ」
「……わかりました。村長さん、玄徳のことを、どうかよろしくお願いします」
「うむ、任せておいてくれ」
「これで明日の朝に出発ですね。村長さん、よろしくお願いいたします」
「ああ。こちらもよろしく頼んだぞ、劉備よ?」
「はい!」
こうして劉備、劉備の母、村長の三人による話し合いは終わり、三人は明日に備えてこの日は早めに眠りに就いた。
そうして夜が明け、劉備達は褒美をもらうために太守の元に向かうのだった。
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