幼少期 第百七十二話
劉備と簡雍の長話が終わったところで、マラソンを再開させた劉備は、この日も順調に走り終えると次の麦踏みの時期になるまでの間、午前中はマラソンと筋トレを、午後からは勉強メニューの組み立てに使うことにしていく。
そして子供達には自分がいなくなる午後からのマラソンと筋トレは簡雍に監督を行うように説明し、そのお願いに嫌そうな顔を見せた簡雍には、
「子供達の面倒をしっかりと見てくれたら、勉強の時に簡単な問題ばかりにするから」
そう言って餌をちらつかせてどうにか承諾の言葉を引き出した。
その状態にして二度目の麦踏みの時期を向かえた劉備達は、二度目の麦踏みも問題なく終わらせると予定通りにマラソンと筋トレの身体能力向上のメニューに加えて、文字の読み書きを始めていく。
「ねぇ玄ちゃん、この山って文字、これはなんて読むの?」
「これは「やま」って読むのよ」
「ねぇ玄ちゃん、この川って文字は?」
「そっちは「かわ」ね」
「この線を十回書いていけば良いんだな? 簡単だぜ!」
「線じゃなくて文字だからね? それは間違えないようにしようね?」
賑やかな声が響く劉備達の勉強会場。
ちなみに紙や筆といった筆記用具がまったくないために青空教室で地面に木の枝などで書いていく、この方法で文字の読み書きを教えている。
そうしている内に子供達の声を聞き付けた大人達が一体なにをやっているのかと、興味を持って見学しにやってきた。
劉備はそんな大人達にも文字の読み書きを勉強してみないかと声を掛ける。
「よぉ玄ちゃん、それに子供達も。賑やかだな」
「みんなしてなにをやっているんだ?」
「あぁ、李良さん達ですか、こんにちは。今私達は文字の読み書きの勉強をしているんですよ」
「文字の読み書きの勉強? 玄ちゃんは文字の読み書きができるのか?」
「はい、できますよ」
「……どうして?」
「天の国の兄上から教えてもらいました」
「ほう、なるほどな。そう聞くとますます便利に感じるな、天の国の知識や技術を教えてもらえるっていうのは」
「そうでしょう?」
「ああ。それにしてもこれが文字か、色々あるんだな。見たことのない文字もあるし」
「……うん? もしかして李良さん達も文字の読み書きができないのですか?」
「え? いや、だいたいそうだろ?」
「……そうなんですか?」
「ああ。この村でまともに文字の読み書きができる人っていったら村長さんぐらいじゃないか?」
「……そうだったんですね。それなら李良さん達も文字の読み書きを勉強してみますか?」
この提案に李良達は無言で互いの顔を見つめて考えていった。
閲覧、感想、評価ポイント、ブックマーク登録、いいねありがとうございます!




