幼少期 第百六十九話
頭を下げてくる村長に対して劉備は、元々自分が始めたことだから、そう言って村長の頭を上げさせた。
「村長さん、頭を上げてください」
「むぅ、劉備……しかし…」
「発火器も濾過装置も、塩水選も麦踏みも、すべて天の国の知識と技術を教えてもらった私が好きで行っていることです。やり方を知っている者は私一人、それなら私がやらなければいけないのは当然のことです」
「しかしそれでは……」
「わかっています。私が倒れた時にどうするか、ですね?」
「う、うむぅ……」
劉備の言葉を聞いた村長が図星を突かれたように狼狽える。
しかし劉備はそんな村長の様子を気付かないふりをして話を続けていく。
「できる限り倒れないように体を鍛えていますが、それでも倒れた時は絶対に無理をしないで休むようにしますから」
「……そうか……」
「それに万が一倒れてしまった時は、休みながらでも指示だけはしますから。ですから心配しないでください」
「いや、そうなった時はなにもせずに休んでくれ。頼む」
劉備の発言を聞いていた村長が、倒れた状態でもなにかをしようと考えている劉備に対して倒れた時ぐらいはなにもしないで休むようにと懇願する。
この村長の懇願に劉備が笑いながら返答していった。
「あはは、わかっていますよ、村長さん。わかっているから無理はしませんよ」
「……本当だな? 本当に無理はしないな? 本当に大丈夫だな?」
「そんなに念入りに確認しなくても大丈夫ですよ、村長さん。無理はしません。ですから……」
「うん? なんだ?」
劉備の返答を聞いた村長が複数回確認し、その村長の確認作業に対して劉備が心配するなと言いながら、あるところでふと言葉を止めたことで村長が不安そうに劉備を見つめる。
そんな村長に劉備が明るく次の言葉を話していく。
「ですからもう帰りますね。これ以上遅くなってしまったら母も心配するでしょうし」
「ああ、そういうことか。確かにそうだ、そろそろ帰らせてやらなければいかんな」
「ええ。そういうわけで村長さん、今日はお疲れ様でした。さようなら」
「うん? 今日は送っていかなくても大丈夫なのか?」
心配する村長に対して、これ以上遅くならないように帰ろうと思っていると説明して安心させようとした劉備に対し、村長は送らないで大丈夫かと問い掛ける。
この村長の問いに劉備は笑顔で返答していく。
「昨日送ってもらったのに今日もまた送ってもらったら私が母に叱られてしまいます。ですから大丈夫です。心配しないでください」
こう話して劉備は頭を下げる。
閲覧、感想、評価ポイント、ブックマーク登録、いいねありがとうございます!




