幼少期 第百六十三話
村長に尋ねられた劉備は、少し考えたあとでこう答えた。
「……そうですねぇ……あるにはありますけど、ちょっと難しいお願いかもしれませんよ?」
「構わんよ、叶えられる願いなら叶えてやりたいぐらいには思っているからな」
「そうですか……それなら空き家でいいですから家を一軒と、え~っと……」
「……家を……一軒? それに……どうした? 辺りを見回して……?」
村長に自身のほしい物を伝え始めた劉備であったが、突然辺りを気にし始めたために、村長は家が一軒ほしいと言われて狼狽え気味だったところを無理に立て直すと、劉備になぜ辺りを見回すのかを尋ねていく。
これに劉備は辺りを警戒しながら答える。
「いえ、ちょっと他の人にはあまり聞かれたくない物をおねだりすることになるので……」
そう言うと劉備は村長に耳打ちを始めた。
こうして始まった劉備からのおねだりの全てを聞いた村長は、こいつは一体なにを言っているんだという表情で劉備に話し掛ける。
「……劉備よ、お前はなにを言っているんだ?」
「そういう反応をされるってわかっているから辺りを気にして話したんですよ……」
「むう、そうか……しかしそんな物を欲しがるとはなぁ……」
「私も最初にそれを聞いた時はなんでそんな物を集めないといけないのかと兄上に尋ねましたよ」
「……答えは聞けたのか?」
「はい、聞けました」
「ということは、その答えを聞いたから先ほどの品物を要求した、そういうことか……」
「そうなります」
村長とのやり取りで自身が要求した品物が天の国の知識と技術であることを明かした劉備に、村長が納得したように頷く。
そんな村長に劉備は、先ほど要求した品物を用意してもらえるのかどうかを尋ねる。
「それで村長さん、先ほどの品物は用意してもらえるのでしょうか?」
「……まあ……叶えられる願いなら叶えてやりたいと言ったからなぁ……しかし……う~む……」
「駄目でしょうか?」
「……いや、先ほどもそうだが、叶えられる願いなら叶えてやりたいと言ったからな。わかった、用意しよう」
「用意してくれるんですね! ありがとうございます!」
「ただ少し時間が掛かるかもしれん、ということは理解しておいてほしい」
「大丈夫です、それはなんとなく理解できていますから」
「そうか、それは助かる。それではこの話はここまでで良いかな?」
「そうですね、終わりにしてもらって大丈夫です」
「そうか、それではそろそろ送っていこう。行こうか、劉備」
「はい、村長さん」
そう言うと二人は立ち上がり、劉備の家に向けて出発した。
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