幼少期 第百六十二話
村人達に麦踏みの説明を行った劉備は、すぐに村人達に実践してもらって頭で覚えると同時に体でも覚えてもらうために麦畑に向かうことにした。
「……ということで、麦踏みの説明はここまでになります」
「ふむぅ、なるほど。しかし実際にやってみないとすぐに忘れてしまいそうだな……」
「そう言われるだろうと思って、皆さんには今から麦踏みを行ってもらおうと考えています。大丈夫ですよね、村長さん?」
「うむ、大丈夫だ。それでは皆、行くぞ。ついてきてくれ」
劉備の言葉に賛成する発言を行った村長が、村人達の先頭に立って麦畑に向かっていく。
これに劉備や李良達、そして村人達も続いていき、全員が麦畑に到着したところで、今回の参加者全員での麦踏みが始まった。
この麦踏みは日暮れまで行われ、日暮れになったところで村長が参加者全員に作業の終了と、明日も同様の作業を行うことを告げていく。
「よし、今日の作業はここまで! 皆良く頑張ってくれた! また明日も今日の続きを行いたいから、今日集まった時と同じ頃にここに集まってほしい! 皆良いか!」
「おー!」
「よし、それでは解散! また明日な!」
「はい!」
村長の言葉で各々の家に帰っていく村人達を見ながら、劉備も家に帰ろうとしたところで、村長が劉備を引き留めた。
「皆さん帰っていきましたね。それでは私も帰りますね。村長さん、お疲れ様でした」
「む、劉備よ、少し待て」
「え? なんでしょうか?」
「うむ、少し話がある。長くなるかもしれないから家で話そう」
「長くなるんですか? 母上にどう説明しようか……」
「それなら心配無い。帰る時間になったら家まで送り届け、その時に説明するからな」
「そうですか? それならわかりました。お邪魔させてもらいます」
「うむ」
こうして村長の言葉を聞き入れた劉備が村長の家に向かい、劉備と共に家に戻っていった村長は、自室で劉備と向き合うと早速話を始める。
「さて劉備よ、そなたにはこれまでに様々な知識や技術を教えてもらった。そしてこれからも教えてもらうことになるだろう」
「あ、ありがとうございます。でもその知識や技術は天の国のものであって……」
「うむ、それもわかっておる」
「それでは……」
「しかし天の国におるそなたの兄の言葉を聞くことができるのはそなただけだ。ならばそれはそなたの知識であり、技術であると言っても過言ではないだろう」
「村長さん……」
「そこでだ、劉備よ。これまでの礼と、これからの礼も兼ねてそなたに贈り物をしたい。なにかほしいものはないか、劉備よ?」
村長はそう言って劉備の顔を覗き込んできた。
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