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フレー

Re:remember

作者: 日浦海里

忘れられないから忘れたい

満たされ続けたいから覚えてられない

思い出してみて


幼い日のこと


もう何を責められたのか

そのことは記憶になくても

ただ一人で泣いていた

そんな記憶は残ってる


おとなの身勝手な感情を

理解することなんて出来なくて

ただひたすらに泣いたこともある

でもそれだって

子供の身勝手な感情だったかも知れない

今とはなっては分からないけど


ほんの少し大きくなって


賢くなった気がしてて

何でもできる気がしてて

気持ちばかりが大きくなって

慮ることのできなかった日々


知らず知らずに傷つけて

そんなこと知らずに傷ついて

自分ばかりが傷ついてると

悲劇の主人公ぶっていた頃


人の心を知るようになって


人と向き合うことが怖くなって

人と触れ合うことが怖くなって

ぶつかり合うこともなく

薄っぺらい言葉ばかりで


本音は全部網の中

井戸に言葉を投げ捨ててれば

誰も聞いてないはずだけど

誰かが拾ってくれるかも

そんな淡い期待だけは

一丁前に残ってて


何もないまま流されて

何もないままここにいて


自分は何をやってきたのか

自分の中には何があるのか

自分は一体何者なのか

何者にもなれなかったのか


そんな過去しか出てこないんだね



思い出してみて


幼い日のこと


初めて降った雪を見て

厚手の服と手袋に

黄色い長靴を履かせてもらって

真っ白い雪に足跡をつける


たったそれだけの事なのに

理解する必要がないぐらい

ただひたすらに喜びがあった

でもそれだって

子供の勝手な行動だけでは得られない

今なら少しは分かるでしょ


ほんの少し大きくなって


賢くなった気がしたのも

何でもできる気がしたのも

記憶を積み重ねてきたからで

憂いを知らないですんだ日々


知らず知らずに支えられて

そんなこと知らずに自由に生きて

自分一人で大きくなったと

未来の英雄気取りでいられた


人の心を知るようになって


塞ぎこむことが多くなって

一人部屋に籠もることもあって

それでも生きてこれたんじゃないの?

ぶつかり合わなかったとしても


言葉は全部網の中

網目から漏れた感情からでも

心に寄添おうとしてくれてたり

見知らぬふりしてただ側にいたり

当たり前すぎる関係だから

気づかないふりをしてきてて


何もないなんて格好つけて

ここにいることが「何か」の証なんだって

意地汚くても思えばいいのに

生きてるだけで何かを残し続けてるんだよ

良いことだって

悪いことだって



何かを為さなきゃ無価値じゃないでしょ

良いも悪いももらってきたでしょ

何者であるかは誰かが決めるよ

もう一度思い出してみてごらんよ


幼い日に描いてたもの

子供の頃に願ってたもの

心を知って叶えたかったもの

ぐるっとまとめて今ここにあるもの


それでもわからないかもしれない

自分のことも

やりたいことも


それでもわからなかったかもしれない

もらってきたもの

自分のもつもの


でも、君がここにいること

それは間違いなく

君が「何か」である証


生きてる限り

君は「何か」で

君は君だよ


だから、また、いつか

思い出してみて

苦労なく得られたものの記憶は残らない

でも、苦労なく得られたものが

当たり前だと思ってるから

何もないなんて言える


思い出してみて


何もないと言える自分が

なぜ今ここにいるのかを


思い出してみて

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― 新着の感想 ―
[一言]  嫌だったことはエピソードとしてはっきりと。  幸せだったことは感情だけ残ってることが多いのかな、と。  なのですぐに思い出せない。  そう、返信を見て思いました。  これはこちらに書…
[一言]  前者の想いもわかるから、後者の想いもわかって。  だから後者の気持ちを人には言えるけど、なかなか自分自身には言えないなぁ、と。  迷走したのであとは自粛しますが。  そう伝えてくれる相…
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