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尊(とうと)い

「菜々美……まずは落ち着こう。多くの人に迷惑がかかってるんだろう? とにかくまずは騒動を収拾したほうがいいだろう」

「しゅーくんまで大人みたいなことを言う!」


 というか、菜々美が子どもすぎるのだ。

 精神年齢いくつだ。


「ともかくわたしはせめてしゅーくんから愛してるって言ってもらわないと落ち着けないよー! しゅーくん、聞かせて! わたしのこと好き? 大好き? 世界で一番愛してる!?」


 菜々美は自分のことを指さしながら訊ねてきた。


 ……正直、十一年ぶりにリアルで会ったばかりで、そういう明確な感情があると断言できるかというと自信がない。


 けど、でも、まぁ。

 十一年前は明確に好きだった。


 そして、菜々美がアイドルデビューしてからは、できる限りテレビ番組も見ていたし写真集もCDも買っていた。


 もう住む世界が違うテレビの向こうの存在だと思っていたので、恋愛感情的なものは(いだ)かないようにしていたのだが――。


 俺は、あらためて菜々美の顔を真正面から見つめる。


 ……うん。すさまじく、かわいい。

 実際、世界で一番かわいいかもしれない。


 テレビやネットで芸能人などをいろいろと見るが、菜々美を超える美少女を見たことがない。

 まさに人類の至宝。


 ただあまりにもかわいすぎて、菜々美を好きだとか愛してるかというとどうだろう。


 ……この感情を適確に表現する言葉というと――。


(とうと)い」


「えっ?」


 俺の発した言葉に菜々美は首をかしげる。


「いや、なんだ……なんというか菜々美は存在自体が尊いと思ってな。だって、すさまじい美少女だろ? リアル二次元美少女だろ? なんでそんなにかわいいんだ。ありえない。かわいすぎる」


 俺は思ったことをありのまま口にする。


「え、えへへ~っ♪ そ、そんなに、わたし、かわいくないよぉー♪」


 菜々美は照れながらニコニコしていた。

 すごく嬉しそうだ。


 笑顔になることで美少女度がさらにパワーアップしていた。

 まぶしい。後光が差しているレベル。


「尊い、尊すぎる」


 俺は思わず「ありがたや、ありがたや……」とつぶやきつつ手をあわせて拝んでしまう。


「って、わたし、仏像じゃないんだけど!?」

「似たようなものじゃないか」


 アイドルとは偶像。つまり、偶像崇拝。

 ファンも「信者」だなんて言われたりするしな。

 アイドルというのは突き詰めていくと宗教みたいなものじゃないのか。


「……おにぃ……きもい……」

「まあ、わたしたちにとって菜々美ちゃんはどんな寺社仏閣の仏像や神様よりも御利益(ごりやく)ありますけどね~」


 そうだよな。

 菜々美がすごい利益をあげていることは、テレビの前の視聴者である俺ですらわかる。


菜々美「面白かったらブックマークや評価してね!」

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