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締めの感想タイム


「はい、それでは次のコーナーですよ~♪」


 もはや神寄さんが司会みたいになっているが、それがいいかもな。

 菜々美は暴走脱線癖があるし、瑠莉奈と二三香は新人なんだし。


 テレビではありえない自由な進行だろうが、これはネット動画なんだ。

 面白ければ、なんでもありだろう。


 無軌道な暴走アイドルである菜々美は、形式にとらわれないほうが魅力を引き出せる気がする。

 現に、ちょっと前にテレビ番組に出ていたときより菜々美は生き生きとしているのだ。


「えーっと、次のコーナーはー……って、最後の締めだよぉーー! もう終わりって寂しいーーー! 菜々美ちゃん、まだまだ何時間でもしゃべってられるよぉーーー!」


 しかし、菜々美の元気は本当に無尽蔵だな……。

 ただ見てツッコミを入れているだけの俺ですら消耗が激しいのに……。


「……瑠莉奈も疲労が……菜々美ちゃんにエナジーを吸いとられている……」

「確かに部活を全力でがんばったぐらい疲労してるかもっ!」


 菜々美のテンションについていくだけでかなり大変そうだもんな……。

 ほとんどぶっつけ本番なのに、ふたりともよくやっているといえるだろう。


「それじゃ、今日の動画配信を振り返って、感想タイムだよー! まずは菜々美ちゃんからーー! とにかく楽しかったよーーー! こんなに楽しくて充実していた放送って初めてだよーーー!」


 ブンブン両手を振る菜々美。

 今日どれだけこのブンブンをしたのだろうか。


 すごい筋トレ効果がありそうだ。

 というか、明日絶対に筋肉痛になってそう。


「ちょっと前まで芸能界引退も考えたけど、このかたちのネット活動ならいくらでもやれそうだよぉーー! みんなーーー! これからも菜々美ちゃんの新たな活動をよろしくねぇーーーー! 菜々美ちゃん心機一転これからもがんばるからねぇーーーーー!」


 なんだかんだで菜々美にとっては、よいスタートを切れたのかもしれない。


「続いて、瑠莉奈ちゃん! 感想どーぞ!」


 菜々美は両手を瑠莉奈のほうにズビシッと向けて、促す。


「……ん……今日は……とても楽しかった……とても疲れた……とても感情を動かされた……これまでの人生で、こんなに充実した日はなかった……だから、これからもこの動画配信を続けていきたいと思った……」


 たどたどしいが、瑠莉奈の感情はしっかりと伝わってくる。


 ふだんは口数が少なく感情を露わにしない瑠莉奈なのに、今日はいろいろな表情と感情を見ることができたしな。


 兄としても新鮮だった。

 いいものだな……。妹が輝いている姿を見るというものは。


 これまで俺以外にほとんど瑠莉奈はコミュニケーションをとっていなかった。

 それなのに、こうして菜々美たちとちゃんと動画配信を滞りなくできた。


 妹の成長を見ているようで、兄としても嬉しいものがある。


「瑠莉奈ちゃん、これからもよろしくねーー! 十一年の歳月を越えて再会できて本当に嬉しかったよーーー! これからもしゅーくんの黒歴史とかいろいろ教えてねーーー!」


 いや、黒歴史について訊くのはやめてほしいが……。


「そして、次は二三香ちゃんの感想ーーー!」

「は、はいっ!」


 二三香は緊張気味に声をあげた。


「あ、あのっ! ずっと菜々美ちゃんのファンだったので、こうして一緒に動画配信をすることができて本当に嬉しいですっ! 夢のようですっ! これからも何卒よろしくお願いいたしますっ!


 完全に体育会系モードになって頭をしっかり下げる二三香。


「あはは、そんなに固くならなくても大丈夫だよーー! でも、わたしのファンに支えてもらえる日がくるなんて本当に嬉しいよーーー! わたしこそこれからもよろしくね二三香ちゃんーーー! ぎゅーーーーっ♪」


 菜々美は両手を広げると、二三香に思いっきり抱きついた。


「はわわっ!」

「ファンサービス、ファンサービスーーー♪ って、もう二三香ちゃんはファンじゃなくてアイドルの卵かぁー! 一緒にがんばっていこうねーーー!」


 ますます菜々美は抱擁を強めていった。


「わわわっ! 菜々美ちゃんにこんなに抱きついてもらえるなんてっ!」


 なんだか背景に百合の花が咲いているような気がする。


「……瑠莉奈も混ざる……」


 そして、瑠莉奈は立ち上がると、二三香を抱擁中の菜々美の背中に抱きついた。

 なんなんだこの状況は。無駄に百合の花が咲き乱れている。


「ふふふ~♪ 三人の関係性というのもなかなか面白いものがありますね~♪ これまでにないコンセプトのアイドルグループになりそうです~♪」


 まあ、確かに例はないかもしれない。

 トップアイドルと、そのファンと、アイドルがテレビで愛を叫んだ相手(俺)の妹というトリオは。


「ふうぅ~! かわいい女の子に抱きついたり抱きつかれたりして栄養補給できたよーーー! 百合だけに元気百倍ーーー!」


 誰が上手いことを言えと。

 このあたりはさすがのアドリブ能力かもしれない。


 というか、やっぱり菜々美に台本はいらない。

 菜々美の思うようにやらせるのが一番楽しくなるし面白くなるのではないかと思う。


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