表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

78/85

熱唱! 埼玉ソング

「はい、じゃあ、次のコーナー! 菜々美ちゃんが歌っちゃうよぉーーー!」


 そんなコーナーがあるって聞いてないんだが!?


「間を持たせるためには歌うのが一番! 菜々美ちゃんの歌唱力を見せてやるーーー!」


「……菜々美ちゃんの歌……楽しみ……」

「菜々美ちゃんの生歌が聴けるなんてっ!」


 ふたりとも普通に受け入れてるよ!


「いいんじゃないでしょうか~♪」


 いいのか。神寄さんも完全に放任だな……。


「それじゃ、歌うよ~! 曲名は~! 『埼玉の埼玉による埼玉の埼玉!』」


 なんだその曲は! これまで菜々美がリリースしたCDにはない!


「これまで菜々美ちゃんが密かに作詞作曲練習していた埼玉ソングだよーーー! ついにお披露目のときがきたーーーー!」


 やっぱり菜々美の埼玉愛はすごいな。

 もうこれ、埼玉ローカルアイドルになったほうが菜々美のためにもなるのでは。


「埼玉埼玉埼玉ーーーー! 埼玉、埼玉、埼玉ぁーーーー♪」


 そして、菜々美の埼玉愛を叫びまくりの電波ソングが始まった。

 名状しがたい埼玉感だ。

 あまりにも埼玉埼玉連呼しすぎてゲシュタルト崩壊している。


 でも、上手い、上手すぎる。

 圧倒的な歌唱力。というか、歌唱力の無駄遣い。


「埼玉ぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー♪」


 最後に埼玉愛を絶叫(シャウト)して、菜々美の歌唱は終わった。


「……素晴らしい……感動した……なんという埼玉……」


 瑠莉奈はパチパチと手を叩いて、菜々美を讃える。


「感動しましたっ! 菜々美ちゃんの歌ってすごい元気になるっ! 菜々美ちゃんのファンでよかったっ! 埼玉県民でよかったっ!」


 二三香は熱烈な一ファンかつ埼玉県民に戻って、絶賛していた。

 もちろんすごい拍手っぷりである。


「やっぱり素晴らしいですね~♪ これだけの歌唱力があるんですから、菜々美ちゃんの将来は心配してませんよ~」


 神寄さんもニコニコしながら拍手する。


「ありがとうーー! で、しゅーくん、どうだった!? わたしの埼玉ソングどうだったーー!?」


 菜々美はブンブンと両手を振りながら訊ねてくる。

 なんだか犬が尻尾を振ってるみたいだな……。


「……ああ、とてもよかったぞ。やっぱり菜々美は歌が上手い、上手すぎる。最高のアイドルだ」


「わぁーーーーーーーーーー♪ しゅーくんに褒められたぁーーーー! これであと十億年は戦えるぅーーーーーーー♪」


 菜々美は歓喜のあまり手が振りきれんばかりにブンブンしていた。残像が見えるレベル。

 あと、これまで見てきた中で一番の笑顔だ。


「やっぱり菜々美ちゃんは笑顔なのが一番ですね~♪ ちょっとあまりにも仕事を入れすぎていたと事務所としても反省する面はあったんですよ~。ですから~、しばらく菜々美ちゃんはマイペースでネット活動をするのがいいかもしれません~」


 神寄さんは率直な感想を述べていた。

 一応、そういう認識はあったんだ……。


「大好きなしゅーくんと一緒だからわたしは笑顔になれるんだよーーー! しゅーくん! これからもよろしくねーーー!」


 こんなラブラブっぷりを世界中に公開して、はたしてファンはついてきてくれるんだろうか。

 しかし、もうこの路線でいくしかない。


「ああ、菜々美のことを支える」


 とりあえず今の俺は菜々美の思いに応えるだけだ。

 これまでずいぶんと待たせてしまったわけだしな。


 十一年の歳月。

 それは、菜々美にとって俺以上に長い年月だったと思う。


 アイドル活動を始めてからは、毎日が戦場みたいなものだったろうからな。

 待たせたぶん、俺はそれに応えてやらないとと思う。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ