食レポ!~埼玉古墳インスパイア饅頭~
「それじゃー、次ー! 今度は食レポだよぉー! 腹が立ったら、お腹を満たすー!」
ブンブンと両手を振り回しながら、菜々美は強引に進行する。
「はい、というわけでー! 二三香ちゃん! お願いーー!」
「あ、はいっ! 今持ってきますので、ちょっと待っててくださいっ!」
二三香は立ち上がって離席すると紙袋を持ってくる。
「友達が和菓子屋さんなので試供品をもらってきてますっ!」
そう言って、二三香は長机の上に三人分のお菓子を並べた。
この緑色の物体は……和菓子? 饅頭? 見たことのないものだが……。
「えっとっ! これは新開発の『埼玉古墳インスパイア饅頭』だそうです!」
その名称のとおり前方後円墳を彷彿とさせるかたちの饅頭だった。
パッと見、緑色の苔が生えているようにしか見えない。
「これは新開発したもので、これから売り出して人気商品にしたいそうですっ!」
なるほど。だから、見たことがなかったのか。
まあ、あまりにも知名度の高い埼玉銘菓よりはいいかもしれない。
いろいろと許可も必要になるだろうし。
「わーー! すごい! 古墳だよ、古墳ー! 埼玉古墳ー! 稲荷山古墳だよ、これー!」
菜々美は両手をブンブン振って興奮していた。
「……これは再現度が高い……むうう……」
瑠莉奈もミニ埼玉古墳を前にして唸っている。
というか、またしてもマニアックになっている気がするが大丈夫なのだろうか。
……まあ、解説テロップを流せばいいか。完全に埼玉ご当地ローカルアイドル路線である。
「試食ー! 試食するーーー!」
菜々美の両手ブンブンがさらに激しさを増していた。
興奮を測るバロメーターと化している。
「……ぜひ、食べたい……じゅるり……」
はたして、どんな味がするのか……?
見ている俺も気になる。
「それじゃ、前方後円墳の丸の部分から食べちゃうよーーー!」
和菓子を買ったときについている小さなフォークを使って、菜々美は試食を開始した。
「もぐもぐもぐ! ……うぐっ!?」
菜々美は両手で口を抑えた。
なんだ? まずかったのか?
「うぐぐ、うまいかもしれないし、うまくないかもしれない微妙なラインのうまさだよーーー!」
正直すぎる。
普通、食レポは基本的に褒めるものではないだろうか?
これは放送事故なのでは?
チラリと神寄さんのほうに視線を送るが、動かず。
その間にも、瑠莉奈の試食タイムになる
「……あえて丸くない部分を食べる……」
瑠莉奈はミニフォークで後方部分を刺して口に運んだ。
「……もぐもぐ…………うっ……!」
瑠莉奈の表情が驚愕したようなものに変わって固まった。
あの常に無表情な瑠莉奈の表情が変わっただと……!?
「…………う、ぐ、う…………この世のものとは思えない名状しがたい味がする……」
瑠莉奈は驚愕の表情を維持したまま、どうにかといった感じで感想を口にしていた。
いったい、どんな味がするのか? 逆に気になる。
「そんなに変なお菓子だったんですかっ!? ご、ごめんなさいっ!」
二三香は慌てて頭を下げたが。
「ううん、大丈夫だよー! インパクトがありすぎたけど、慣れると美味しいかもー!」
菜々美はミニフォークで残りの部分も口に放りこんだ。
「じゃ、じゃあ、あたしも食べてみますっ!」
二三香もミニフォークを手にとると、おそるおそるといった感じで『埼玉古墳インスパイア饅頭』をそのまま口に運んだ。
「もぐもぐ、ぐぇっ!?」
二三香の口から悲鳴と苦悶のあわさった声が出た。
「……これ、なに?」
シリアスな表情になって、二三香は疑問を投げかける。
いや、こっちが訊きたい。
「でしょー!? 謎の味だよねー!?」
「……あえていうなら……古墳の味がする……」
「土? 草?」
というか、アイドルになんてものを食べさせているんだろうか。
いいのか、そんなもの食べさせて。
そんな俺の心の声に応えるように……。
「……面白いからいいんじゃないでしょうか~♪ はい、一旦、休憩入りますよ~♪」
神寄さんは楽しそうに感想を口にしつつ、番組進行を一旦とめた。
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