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収録開始~最初はフリートーク~

※ ※ ※


 そして、翌日――。


「さあ、みなさん~♪ いよいよ収録の日ですよ~♪」


 昼の二時になり動画収録の時間となった。


 本来なら台本的なものが用意されるべきだと思うが、素人感を出すべきだという神寄さんの意見によって、ぶっつけ本番になった。


 素人感を出すというか、瑠莉奈と二三香はもろに素人なんだけどな……。

 そんな状態でぶっつけ本番というのは無謀な気もするのだが……。


「わたしがいるから大丈夫だよー! テンションが高ければなんでもできるー! テンションこそ正義ーー! モチベーションが大事ーーー!」


 菜々美は両手をグルグル回しながら場の雰囲気を盛り上げる。


「……頼みにしている……」

「よ、よろしくお願いしますっ!」


 さすがにふたりとも緊張の色を隠せないが、がんばってもらうしかない。

 なお、俺の位置は昨日と同じくカメラの左。神寄さんが右だ。


「しゅーくんさんも、適宜、三人にアドバイスをしてあげてくださいね~。この画用紙とペンで~」


 神寄さんから俺は画用紙とマジックペンを渡されていた。

 放送中は声を出して指示できないので、紙で書いて伝えるというかたちをとるのだ。


 まあ、俺だって素人だしなにもわからないのだから、アドバイスをする機会はないと思うが……。


「それじゃ、みんな、がんばろー! よろしくお願いしますーー!」


 菜々美の声にあわせて、撮影スタッフたちも構える。


「それでは、撮影、5秒前~…………3,2,1……!」


 神寄さんが秒読みをして、最後の0は手を菜々美のほうに向けて合図した。


「みんな、こんにちはーー! 玉瀞菜々美ちゃんだよぉーー! 今日から新しい仲間と動画配信するからみんな見てねーーー!」


 菜々美は両手を胸の前に持ってきて忙しなく振る。


「……越草瑠莉奈……よろしくお願いする……」


 瑠莉奈は無表情ながらも、しっかりとカメラを見ながら挨拶をする。


「戸川二三香ですっ! よろしくお願いしますっ!」


 二三香は声を上擦らせつつ挨拶した。

 なんかふたりとも昨日の放送よりもだいぶ緊張してるな……。


 まあ、無理もないか。

 とにかく見守ろう。


「まずは、近況からーー! わたし、最近、ホテルで軟禁生活されてるから大変なんだよー! 毎日ストレス! 暴れたい! 元気がありあまってるーーー!」


 菜々美は両手をグルグル回してストレスが溜まっている自分を表現している。

 というか、腕をグルグル回してばかりだな。そんなに腕を回すのが好きなのか。


「というわけで、瑠莉奈ちゃん、二三香ー! ストレス解消したいってときは、なにしてるー!?」


 ここで瑠莉奈と二三香に振ってきた!?


「……おにぃを、いぢめる……」


 急に振られたにもかかわらず、瑠莉奈ちゃんと対応していた。

 って、俺を話題に出すのか。いじめるじゃなくていぢめるなのか。


「むぅう! しゅーくんをいぢめちゃだめだよぉ! しゅーくんをいぢめていいのはわたしだけなんだからーー!」


 というか、こんな内容を放送したらコメント欄は大荒れなのでは……。

 ハラハラする俺だが、こんなことで進行をとめるわけにはいかない。


「……おにぃをいぢめるのは妹の特権…………おにぃはいぢめがいがある……」


 瑠莉奈は恍惚の表情を浮かべていた。

 ……やっぱり妹って鬼畜外道だよな……。

 兄のことをオモチャとしか思っていない。


「……おにぃをいぢるのが瑠莉奈の生きがい……」

「わたしもいぢめたいー! ひーひー言わせたいー!」


 いきなりなんなんだこの放送事故は……。


「二三香ちゃんのストレス解消方法はー!?」


 脱線しまくるのかと思ったが、そこはさすがプロ(?)。

 菜々美は二三香へ振る。


「えっ!? えっとっ! 筋トレとかしますっ! 腹筋とか腕立てとかっ!」


 さすが体育会系。

 でも、一応、この中では一番の常識人ではあるんだよな。


「筋トレー! とってもマッスルだねー! でもでも、筋力では負けてもしゅーくんへの愛なら負けないもんーー!」


 いや、これ、放送していいものではないのでは?

 コメント欄が荒れるどころか、俺に対して殺害予告とかされるのでは?

 これじゃ菜々美は自らのアイドル生命を全力で投げ捨てていくスタイルなのでは?


 そう疑問に思う俺だが……神寄さんにとめる気配はない。


菜々美「みんなーー! 応援よろしくねーーー!」

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