表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

69/85

∞(むげんだい)

※ ※ ※


「しゅーくん! お帰りーーー!」


 ホテルの部屋に戻ると、菜々美は両手をブンブン羽のように振りながら出迎えてくれた。

 菜々美はテンションの高さを維持したままなのか……。


「今日のわたしは空も飛べる気がするー! パタパタパターーー!」


 さらに両手の腕を忙しなく動かす菜々美。


「……これからずっと菜々美ちゃんのテンションについていくとなると……かなり大変そう……」


 ……瑠莉奈、今さらながら気がついたか。

 菜々美が芸能界で友達がいなかった理由が、今ならよくわかる。


 あと、ネットで「共演者殺し」と呼ばれていた理由も。

 テンションの高い菜々美が目立ちすぎて、話題をかっさらっていってしまうのだ。


「しゅーくん! 黒歴史見せて! 黒歴史ーーー!」

「黒歴史言うな」


 まあ、黒歴史だけど。


「……ちょっと待ってほしい……今……ノートパソコンを立ち上げる……」


 瑠莉奈は俺のリュックから、さっそくノートパソコンを取り出した。

 机の上に置き、電源を入れ、繋げたマウスを操作してファイルを開く。


「……おにぃの書いた黒歴史小説……タイトルは『宇宙最強の俺のハーレムは∞(むげんだい)』……』」


 なにそれひどい。

 タイトルからして自決するレベル。


「ま、待てっ! 俺そんな酷いタイトルの小説書いていたか!?」


「……間違いない……ご丁寧に著者名も書いてある……しかも、本名……」


 昔の俺には恥という概念は存在しないのか……。


「……ちなみに執筆は今から7年前……おにぃが小学生の頃の作品……」

「わーーー! 小学生時代のしゅーくんの小説読みたいーーー! 読ませて読ませて読ませてーーー!」


 菜々美はピョンピョンジャンプしながらノートパソコンを覗きこむ。


「……うぇるかむ、とぅ……ぶらっく、ひすとりー、のべる……」


 瑠莉奈は椅子を横にずらして、菜々美が小説を読めるように移動した。


「ちょ、ま、待ってくれ! まずは俺に読ませてくれっ!」


 どんなヤヴァイ内容なのか不安すぎる。

 まずは作者である俺が事前チェックしたい。

 だが、しかし――。


「……もう作品は作者の手から離れている……読者の評価にゆだねられるべき……」


 瑠莉奈はもっともらしいことを言って、俺の願いを却下した。


 妹はいつだって横暴だ。

 兄に人権などないのだ……。

 でも、その意見は正論でもある。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ