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幸運のアイドル

「……というわけで。俺もそっちの長机に移動します」


 せっかくの試験放送を中断するようなかたちになってしまったが。

 俺も最初に出演していろいろと説明するのが、わかりやすくていいだろう。


「しゅーくん、ありがとう! 心強いよー!」

「……さすが、おにぃ……なんだかんだで頼りになる……」

「修人、見直したよっ!」


 三人から歓迎の言葉をかけられて、俺も覚悟が決まった。

 やはり、当事者である俺が出演するべきだ。


 改めて、机に並ぶ配置が変わった。

 左から瑠理香、俺、菜々美、二三香の順だ。


「それじゃ、神寄さん。もう一度、お願いします。すみません」

「はい、了解です~。それでは、撮影スタッフのみなさん、お願いします~」


 再び試験放送が始まった。

 まずは、菜々美が口を開く。


「えっと……玉瀞菜々美ですっ! このたびはわたしの暴走で多くの人に迷惑をかけてしまいたいへん申し訳ありませんでしたー!」


 ここで今回は俺があとを継ぐ。


「越草修人です。その……菜々美とは子供の頃、幼稚園が一緒で……そのときに結婚の約束はしたんですが……まさか、菜々美がそこまで本気で今も思い続けていたとは思ってなくて……急転直下、マネージャーをやることになったんですが……とにかく、今は菜々美の仕事を支えたいと思ってます……」


 俺は今思っていることを、そのまま伝えた。

 続いて……。


「……瑠莉奈は、越草修人の妹……瑠莉奈も、急転直下、なぜかここにいる……菜々美ちゃんがネットでの活動をすると聞いて……それを支えられたらと思って、今回結成されるグループのメンバーに加わることにした……」


 瑠莉奈も、先ほどとは違う挨拶をした。

 そして、最後は二三香。


「あたしは修人と同じ学校に通うクラスメイトで菜々美ちゃんのファンですっ! ずっと菜々美ちゃんのアイドル活動を応援してましたっ! 少しでも菜々美ちゃんたちの力になりたいと思って、今、ここにいますっ!」


 二三香の思いがストレートに伝わってくる。


 菜々美は、少し涙ぐんだようだった。

 そして、再び口を開く。


「わたしって、すっごいバカなんです! あとさき考えず突っ走っちゃって、自重って言葉を知らないで。地上波から追放されるようなことしちゃって! なんだかんだでみんなを巻きこんじゃって! でも、わたしの周りのみんなは本当にいい人なので、応援してあげてくださいー!」


 涙ぐみながら、菜々美は叫ぶように言う。

 強い思いが、ダイレクトに伝わってきた。


「はい、ここで一旦、切りますよ~……うん、いいんじゃないでしょうか~……普通の謝罪会見とかやるより、よほどいいと思います~……話題になるとかアクセス数とかそういうものは抜きにして~……気持ちがちゃんと伝わってくるいい放送だと思います~」


 神寄さんから率直な感想が述べられた。

 確かに、堅苦しい言葉だけが並ぶよりいいだろう。


 瑠莉奈と二三香にとっては、こういうデビューの仕方はどうだろうという賛否はあるかもしれないが……でも、逆にこれでいいという気がしてくる。


 二三香は菜々美の熱烈なファンだし、瑠莉奈だって菜々美のことを影ながら応援していたことを知っている。いつも俺の横で菜々美が出演しているテレビを見ていたからな……。

 それに瑠莉奈も幼い頃は、かなり菜々美に懐いていた。


 そういう意味で、この三人はこれ以上ないメンバーだと思う。

 そして、その三人を支えられるのは俺しかいないとも思える。


「やっぱり菜々美ちゃんは芸能の神に祝福されているんだと思いますよ~♪ ピンチを一転してチャンスに変えてしまうんですから~♪」


 神寄さんの言葉がすべてを物語っている気がする。

 やっぱり菜々美はこの上ない運を持っている。


瑠莉奈「……面白かったら、評価してほしい……」

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