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住所を特定されてしまう

「…………調べてみる…………」


 瑠莉奈はスマホを取りだしチェックしていく。

 ツイッターでも検索しているのだろう。


「…………ん~…………」


 菜々美は画面をスクロールして、ツイートを確認しているようだ。


「…………菜々美ちゃんについては、なぜか好意的なつぶやきが多い……でも……おにぃについてはネガティブなつぶやきが多い…………」


 十分に想像できる事態だ。

 怖くて見る気になれない。


 そこで神寄さんは仮面を外しながら、口を開く。

 再び表情は貼りつけたような笑顔になっていた。


「しゅーくんさんの住所がファンから特定されるのは時間の問題ですね~? 身の安全のためにも、わたしたちと一緒にいるほうがいいと思いますよ~? 菜々美ちゃんのファンは熱烈というか狂信的な方もいらっしゃいますし~」

「……おにぃ……うちの住所が特定されてる……」


 うわあ、もうか。

 信者の方々恐ろしい。


「そういうわけで~、とりあえずわたしと一緒にきてください~。悪いようにはいたしませんので~。ほらほら、菜々美ちゃんも~」


 ここは神寄さんに従うのが賢明な選択なのかもしれない。

 今日は幸い土曜日。学校がない。

 ついでにタイミングよく学校の創立記念日が月曜なので三連休だ。


「ううう……でもでもでもぉー! しゅーくんとせっかく再会できたのにーーー!」

「ワガママ言わないでください~……これ以上駄々をこねるなら~……わたしもスーパー修羅モードに突入しますよ~?」


 神寄さんは、カバンからロウソクを取り出した。

 俺の部屋でなにをする気だ!?


「ひぃい!? ロウソクはやだぁ!?」


 菜々美にとってトラウマらしい。


「……アイドルって不健全……」


 瑠莉奈が冷たい瞳でつぶやく。


「わたしは健全だよ! 清純派アイドルだもん!」

「……清純派暴走爆発炎上アイドルってつぶやかれてる……」

「もうわたしの人生に悔いはないよ! あいあむじゆうーーー!」


 昔は割と引っこみ思案な性格だった気がするのだが、すっかり菜々美は変わり果ててしまった。

 まさかこんなエキセントリックになってしまうとは……。


「……菜々美ちゃんの暴走キャラがファンを爆発的に増やした理由なので事務所としても悩ましいところだったんですよね~……」


 神寄さんが笑顔のまま遠い目をしている……。

 これまでの苦労がしのばれる……。


「しゅーくん、なに神寄さんにシンパシー感じているみたいな表情になってるのー! ひどい! わたしたち永遠の愛を誓いあった仲でしょー!? わたしを支持してよー!」


 そこまで誓いあった記憶はない。

 というか、子どもの頃の「結婚をする」というのは普通はノーカウントだろう。


「しかし、菜々美、そんな昔のことを……」

「昔のこと!? まさかしゅーくん、わたしとの約束なかったことにするの!?」

「い、いや、そういうわけでは……」


 ……ないのだが。

 でも、アイドルになってしまった菜々美と結婚だなんて非現実的すぎる。


 そもそも俺たちは十一年ぶりに再会したのだ。

 急に結婚しようと言われて即答してたら、それはそれでおかしいのでは?

 理性的にそう考える俺だが、菜々美の表情は悲しげにゆがんでいく。


「う、うう……しゅーくん、ひどい、ひどよぅぅー……」


 みるみるうちに涙ぐんでいく。

 って、俺が悪者になっているだと……?


「……おにぃ……無責任……」


 瑠莉奈からも冷たい視線を向けられてしまう。


「すけこましですか~。クズですね~」


 神寄さんからもナチュラルにディスられる。


 って、なんで俺の評価がここまで落ちねばならないんだ。

 そんな幼稚園時代の俺に責任を負わせないでくれ!


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