善は急げ
「グループっていうのは難しいですからね~。そういう意味で菜々美ちゃんのことをよく知っているみなさんにチームを組んでもらえるのは一番だと思います~♪ 最強の布陣ですよ~♪」
確かにグループは人間関係とかが大変そうではある。
そう考えると、菜々美の熱烈なファンである二三香、菜々美のことを知っている瑠莉奈、そして、三人のことをよく知る俺がマネージャーというのはバランスがいいかもしれない。
「ピンでわたしは頂点に登り詰めたからねー! 今度はグループで頂点を目指しちゃうよー! 落ちていたモチベーションが上がってきたぁー!」
この半年ぐらいテレビで見ていてもかつてのような勢いが感じられなかった気がしていたが、やはりモチベーションは落ちていたらしい。
「菜々美ちゃん復活は芸能界にとってかなりプラスなことです~♪ 我が社としても新たな分野に挑戦していけることは大いにプラスですし~♪」
しかし、まぁ……急転直下でいろいろと決まりすぎだろう。
菜々美の『結婚するー!』暴走発言から、まだ二日なのに……。
「うちは『善は急げ』が社訓ですしね~。スピードが大事ですよ、この業界~。流行はすぐに終わってしまいますしね~♪」
そう言われてみると、ブームって確かにすぐに終わってしまうもんだよな。
いつの間にか始めって、気づいたら終わってる。アイドルに限らずサブカルチャーやグルメとかもそうだが。
「スピードとタイミングはなによりも大事ですからね~♪ 特に今は菜々美ちゃんへの注目度がマックスになってますから~♪ ここでサプライズ的に動画配信とグループ結成を発表すれば人気は鰻昇りです~♪」
神寄さんのメガネの奥の瞳がギラギラと輝いている。
これは巨額のマネーを見ている瞳だ。
瞳の中に円や$を幻視してしまうレベル。
「これが資本主義か……」
大人の世界怖い。
でも、いずれは行かねばならない世界だしな……。
「しゅーくんさんにもマネージャーとしての英才教育を施してあげますから楽しみにしていてくださいね~♪ アイドルの励まし方、宥め方、やる気の出させ方、慰め方、尻の叩き方、いろいろ手練手管ありますので~♪」
あまり教わりたくことばかりだ。
まぁ、菜々美の扱いだけなら、ただイチャラブしてればいいのだから簡単だが……。
「それじゃあ事務所に連絡して、動画配信のためのカメラとかマイクとか照明とかさっそく手配しますので~。機材がきたら配信の練習をしましょう~♪」
さっそく俺たちの活動は始まりそうだった。
なんという急展開。




